アパレル・雑貨メーカーのアドヴェンチャーグループが高校のデザイン学科で学ぶ学生のアイデアを商品化し、販売するという。
メーカーとして“プロダクトアウト”で商品を企画・生産するだけでなく、買う側の視点、いわゆる“マーケットイン”の発想でも商品提案を行なおうということだ。
すでに参加する高校にはグループ企業のデザイナーが赴き、実際のアパレルの仕事内容やマーケティングリサーチなどを講義しているというから、授業料ばかり取ってプロさえ育成できない専門学校より、よっぽど中身の濃い教育ができているのかもしれない。
高校生にとっても、早い段階からアパレル企業が実際にどのようなフローで仕事をやっているかを学ぶのは、決して無駄ではないと思う。よく専門学校関係者は「プロの現実を教えようとすると、学生の夢を壊してはいけない」とおっしゃるが、そんな方々に限って学生に卒業後の進路や就職のビジョンを示せない方が多い。
つまり、授業料だけ納めて問題なく卒業してくれれば、あとは「頑張りなさい。あなただったらできるわよ」で、「ハイ、さよなら」なのである。学生集めの目安となる「就職率」や「企業データ」は、数字のマジックやフリーのOB紹介でどうとでもなるからだ。
では、アドヴェンチャーグループがなぜここまでやるのか。企画のマンネリ化やスタッフのアイデア枯渇から、より顧客目線に近い感性がほしいという多少の卑しさはあるだろう。ただ、それらを差し引いても若いクリエーター育成に取り組むのは、他社に先駆けて新しいことに取り組む同グループのポリシーに他ならない。
日本のアパレル産業はバーチカル構造のもと、紡績からテキスタイル、企画デザイン、縫製、卸し、小売りまでの国内分業で成り立ってきた。メーカーのビジネスモデルは春夏、秋冬の年2回の展示会による長射程や大ロット生産と、別注企画や売れ筋追加によるフォロー生産。しかし、それらはトレンドの激変や価格競争の激化、業態のバリエーション化で、次第に体を成さなくなってしまった。
特に、バブル崩壊以前からマーケットでは価格帯が底に広がってきており、量販系や百貨店の平場、あるいは専門店チェーンでも、コスト競争力をもつアパレルが求められていた。つまり、原価率が高くて上質な商品を低価格で提案してくれるメーカーが市場をリードする時代がくるのは、明らかだったのだ。
こうした構造変化を予見し、いち早く海外生産・調達に打ってでたのが、同グループの夏秋克好社長ご本人。自らインドや中国に赴き、一から積極的に現地の素材メーカーやアパレル工場を開拓。今では当たり前になった海外生産に先鞭をつけたのである。
高校生がデザインしたのは、バッグやペンケース、靴下、タオル、エプロンなどの約80パターン。生産はグループ企業のグロリアが受け持って中国とインドで行い、「量は少ないもので初回1000点以上」とか。商品は取引先への卸しの他に直営店の「地球文化屋」や「流行雑貨屋」でも販売するそうだ。
筆者は過去、同グループの夏秋社長、地球文化屋の秋田泰史社長には、業界紙誌の企画で何度もお世話になった。しかし、仕事が終わる度に「また、いろいろ教えてください」と、こちらに意見を求められる低姿勢には、ずいぶん恐縮したものだ。
今回の企画もグループのネットーワーク力を生かし、開発・発信型で商品づくりを進めるもの。さらにテストマーケティングによる修正を行いながら、販売していくのは間違いないだろう。
限られたお小遣いの中で、高校生がどんな商品を購入していくか。また、価格帯はいくらぐらいが妥当か。直接商品を販売する地球文化屋や流行雑貨屋は、絶好のマーケティング・スポットになりうるはずだ。
技術力も完成度も低く「これを売るの!」と言いたくなる商品や、適当に作った古着のリメイクなんかを大名あたりのレンタルスペースで販売する専門学校の授業企画とは、雲泥の差。自分が好きなものとお客さんが買うものはどこが違うのか。高校生は突き詰めて考え、企業が改めて見直す意義は大きい。先を見据えて教育していかないと、人は育たないし、業界の発展もないということである。
メーカーとして“プロダクトアウト”で商品を企画・生産するだけでなく、買う側の視点、いわゆる“マーケットイン”の発想でも商品提案を行なおうということだ。
すでに参加する高校にはグループ企業のデザイナーが赴き、実際のアパレルの仕事内容やマーケティングリサーチなどを講義しているというから、授業料ばかり取ってプロさえ育成できない専門学校より、よっぽど中身の濃い教育ができているのかもしれない。
高校生にとっても、早い段階からアパレル企業が実際にどのようなフローで仕事をやっているかを学ぶのは、決して無駄ではないと思う。よく専門学校関係者は「プロの現実を教えようとすると、学生の夢を壊してはいけない」とおっしゃるが、そんな方々に限って学生に卒業後の進路や就職のビジョンを示せない方が多い。
つまり、授業料だけ納めて問題なく卒業してくれれば、あとは「頑張りなさい。あなただったらできるわよ」で、「ハイ、さよなら」なのである。学生集めの目安となる「就職率」や「企業データ」は、数字のマジックやフリーのOB紹介でどうとでもなるからだ。
では、アドヴェンチャーグループがなぜここまでやるのか。企画のマンネリ化やスタッフのアイデア枯渇から、より顧客目線に近い感性がほしいという多少の卑しさはあるだろう。ただ、それらを差し引いても若いクリエーター育成に取り組むのは、他社に先駆けて新しいことに取り組む同グループのポリシーに他ならない。
日本のアパレル産業はバーチカル構造のもと、紡績からテキスタイル、企画デザイン、縫製、卸し、小売りまでの国内分業で成り立ってきた。メーカーのビジネスモデルは春夏、秋冬の年2回の展示会による長射程や大ロット生産と、別注企画や売れ筋追加によるフォロー生産。しかし、それらはトレンドの激変や価格競争の激化、業態のバリエーション化で、次第に体を成さなくなってしまった。
特に、バブル崩壊以前からマーケットでは価格帯が底に広がってきており、量販系や百貨店の平場、あるいは専門店チェーンでも、コスト競争力をもつアパレルが求められていた。つまり、原価率が高くて上質な商品を低価格で提案してくれるメーカーが市場をリードする時代がくるのは、明らかだったのだ。
こうした構造変化を予見し、いち早く海外生産・調達に打ってでたのが、同グループの夏秋克好社長ご本人。自らインドや中国に赴き、一から積極的に現地の素材メーカーやアパレル工場を開拓。今では当たり前になった海外生産に先鞭をつけたのである。
高校生がデザインしたのは、バッグやペンケース、靴下、タオル、エプロンなどの約80パターン。生産はグループ企業のグロリアが受け持って中国とインドで行い、「量は少ないもので初回1000点以上」とか。商品は取引先への卸しの他に直営店の「地球文化屋」や「流行雑貨屋」でも販売するそうだ。
筆者は過去、同グループの夏秋社長、地球文化屋の秋田泰史社長には、業界紙誌の企画で何度もお世話になった。しかし、仕事が終わる度に「また、いろいろ教えてください」と、こちらに意見を求められる低姿勢には、ずいぶん恐縮したものだ。
今回の企画もグループのネットーワーク力を生かし、開発・発信型で商品づくりを進めるもの。さらにテストマーケティングによる修正を行いながら、販売していくのは間違いないだろう。
限られたお小遣いの中で、高校生がどんな商品を購入していくか。また、価格帯はいくらぐらいが妥当か。直接商品を販売する地球文化屋や流行雑貨屋は、絶好のマーケティング・スポットになりうるはずだ。
技術力も完成度も低く「これを売るの!」と言いたくなる商品や、適当に作った古着のリメイクなんかを大名あたりのレンタルスペースで販売する専門学校の授業企画とは、雲泥の差。自分が好きなものとお客さんが買うものはどこが違うのか。高校生は突き詰めて考え、企業が改めて見直す意義は大きい。先を見据えて教育していかないと、人は育たないし、業界の発展もないということである。