HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

H&Mでは勝負にならない。

2011-08-02 12:30:24 | Weblog
 福岡地所が進めてきたキャナルシティ博多の増床プロジェクト、同イーストビルが9月30日にオープンする。昨年11月の概要発表で、福岡地所側はイメージを「ファストファッションスタジアム構想」として打ち出した。
 その代表格で“九州初上陸”となるH&Mを目玉に、日本で実績をもつ外資系ザラ、国内勝ち組のコレクトポイント、ユニクロをミキシングして、安さとトレンドを武器に天神や博多駅に対抗しようという試みだ。
 もちろん、これだけではバリエーションを欠くため、インテリアショップのフランフランを施設内移動させ、LAセレクトのキットソンを天神からリーシングするなど、何とかテナントの顔ぶれを整えた形だが、 果たして勝算はあるのか。
 結論から言うと、これで天神や博多駅に対抗できると考えるのは、大きな間違えと言わざるをえない。振り返ると90年代、平成不況下、福岡は全国一元気な街を言われるほど、商業施設の開業ラッシュに沸いた。その時のギミックワードが「九州初上陸」「福岡初出店」だった。
 あれから15年以上経った現在、これらの言葉がどれほど消費者を引きつけるというのか。ファッションに敏感な消費者ならそれ以前にチェックし、すでにショッピング済みだ。初上陸だの、初出店だの、だからどうした、である。こんなもん、ファッション業界ではとうの昔に意味をなさなくなっている。そんなことも知らないのは、バカな地場マスコミだけだ。
 この間も博多シティ開業のプレス発表会で、毎日新聞の女性記者が堂々とハカタシスターズの担当者にこの手の質問していたが、天下の大新聞とてファッションビジネスについての認識はこの程度なのかと、正直呆れ返ってしまった。
 当のH&Mはバブルが崩壊した後の90年代半ば、正式名称の「ヘニーズ&マーリッツ」ととして、日本市場でその進出が待望されていた。にも関わらず、日本上陸は遅れ、2008年秋までずれ込んだ。
 ただ、この間、ファッションマーケットがすっかり成熟してしまった日本において、ブランド力を浸透させ一定のシェアと売上げを確保するには、短期の多店舗・ドミナント展開(1年10店から20店)が欠かせない。
 ところが、H&Mは08年から現在までの出店は、東京で銀座、原宿、渋谷などの都心部と郊外、大阪が戎橋と甲子園といたってスローペース。この間、売上げ減少に歯止めがかからない百貨店各社からの出店依頼は引く手あまただったようだが、出店のスピードは遅々として上がらなかった。
 確かに、08年、銀座店や原宿店は日本初お目見えやコムデギャルソンとのコラボも手伝って、坪効率は月間100万円以上と高効率を誇った。しかし、翌9年第4四半期(9月~11月)は、店舗数6店で同75万円と25%以上下落。さらに11年第1四半期(12月~1月)は、10店で同25万円と急降下している。
 つまり、スロー出店で全国的な知名度をあげられないどころか、売上げも取れなくなってしまったのである。これでは逆に多店舗化が進むはずがない。
 売上げ減の理由は、その商品力にある。確かにトレンドを安く提供するのは魅力だが、ファッション感度やクオリティ、価格対価値などを相対的にみると、それほど高いレベルとは言えない。
 それ以上に日本の消費者の熱しやすく冷めやすいのは、筋金入りだ。メディアが煽ると飛びつくが、商品をじっくり見て頭をクールにすると、それほどの商品じゃないとすぐに気づいてしまう。まして、市場を牽引するヤングウィメンズからすれば、たいして面白みのある商品ではないだろう。
 実際、H&Mはショッピングセンターであるキャナルシティ博多には、大型店として進出する。そのため、メンズ、ウィメンズ、キッズのフルアイテムが並び、ファミリーをターゲットとしてMDになると思われる。だとすれば、ファッションに敏感なヤングが好むエッジの利いた商品がそれほどフェイスに並ぶとは思いにくい。並んだとしてもVMD的には薄まっていくと思われる。
 前出の坪効率が何よりの証拠である。すでに日本市場で外資系のファストファッションが幅を利かす状況ではなくってしまったのだ。福岡地所がそれさえ気づかず、未だに「ファストファッションスタジアム構想」なんて言っているのであれば、ファッション音痴も甚だしい。こんなことを真顔で言っているようでは他社からそっぽを向かれ、今後のテナントリーシングにも禍根を残すのではないだろうか。
 H&Mがファッションウォーズの武器にならないとすれば、他はどうか。これらにしても既存店があるので、H&M以上に新鮮さはない。ユニクロでさえ、一度撤退したキャナルシティ博多に再出店するのだから、勝算は未知数だ。ジル・サンダーとのデザイン契約は終了したし、アンダーカバーとのデザインコラボは銀座店からと、キャナルシティ店には目玉がない。
 ファッションマーケットを読み誤った戦略、時代遅れの武器で、列強の天神、博多駅に戦いを挑んでも伍して戦えるはずはないのである。
 
コメント
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