9月16日、天神にバーニーズニューヨーク福岡店がオープンする。バーニーズと言えば、ニューヨークを代表するメンズ・ウィメンズの大型ファッション専門店。筆者が初めて訪れたのは80年だが、その時は今のようなMDではなかった。その後、89年に再訪した時、ようやく今のようなニューヨークのエグゼクティブを魅了するセレクティングの片鱗を感じたのだった。
93年秋、今度は新しい本店をそれまで“広告代理店通り”の異名をとっていたマディソンアヴェニューにオープン。同店はこれ以降、同アヴェニューに高級ブランド店が集まるきっかけを作ったのだった。
その年のクリスマス、ニューヨークを訪れた時に覗いてみたが、店づくりは圧巻だった。9フロア、面積2万平方メートル以上。特にウィメンズはダウンタウン店に比べると、倍ぐらいのスペースがあり、VMDの訴求力には目を見張った。
売場づくりは、ブランドの中からバイヤーがセレクトしたアイテムのみを展開するというもの。つまり、ヘルムート・ラングのドレスの横に、セルジオ・ロッシの靴がうまくコーディネートされて並べられているのだ。
しかも、ストアデザインはフロア全体がどこからでも見通せるような什器も含めたオープンなつくり。言うなれば、ブランドのハコを取っ払った“完全な平場展開”がバーニーズの真骨頂なのである。
差別化についても「バーニーズにしかないもの」というポリシーを貫き、有名デザイナーのバーニーズコレクションに加え、無名デザイナーでも才能有りと認めれば商品投入を厭わず、さらにバーニーズオリジナルのブライベートブランドなど、アパレルリテールをリードする政策が取られている。
89年の日本初出店でも、この「しかないもの」は踏襲され、日本人デザイナーのブランドも数多く見られた。96年、岩田屋はZ-SIDEの開業でバーニーズを真似たようだが、完全買い取りなど常識を破るシステムの割に、バイイング能力の低さ、根強い商慣習、販売力の乏しさから完全に失敗し、同社が凋落するきっかけとなった。言い換えればそれほど、バーニーズのノウハウは偉大だと言えるだろう。
新宿店に続き、横浜店を開店するまでは、MDは申し分なかった。特に東京コレクションのブランドはもちろん、そこまで行かないデザイナーの商品を“レップ”を通じてセレクションするポリシーは、ニューヨークスタイルが息づいてとても好感が持てたものだ。
ただ、06年、マスターライセンスをもつ伊勢丹が本業の不振から、住友商事と東京海上キャピタル系のファンドに株式を売却。以降、住友商事が運営にあたっているが、MDは商社のノウハウを生かした国内外のコレクションブランド中心になっており、実力デザイナーのブランド発掘という点では二の足を踏んでいるようだ。
そこで改めて福岡店はどうか。概要を見る限り、品揃えは高級ブランドを中心に服や靴、時計・ジュエリー、化粧品、ギフト用品(チェルシー・パッセージ)などとなっている。しかし、4層というフロア構成を見るかぎり、新宿店のような品揃えは期待できないだろう。
新宿店にはオンワード樫山出身でニューヨークコレクションにも参加している小川彰子氏の「アキコ オガワ」、フリーデザイナーとしてビームスやサザビーなどにアイテムデザインを提供した斎藤美保子氏の「ミホコ サイトウ」、福岡出身で伊勢丹のオリジナル企画を手がけ、トゥモローランドの商品ディレクションにも関わる森健氏の「オブジェスタンダール」など、パリコレとまでとは行かないが実力では決して引けを取らないブランドも並ぶ。これらが果たして福岡店にやってくるかは、効率面や売場面積からして懐疑的だ。
博多駅にお客を奪われた天神としても、バーニーズ開店による新たな集客やお客の揺り戻しには期待しているはずだ。ただ、バーニーズの商品は従来の天神、博多駅にない感度、グレードではあるものの、品揃えに奥行きがなく、客層も限られる。
新幹線による広域集客で一部のブランドマニアは引きつけるかもしれないが、4層という売場構成を見る限り、幅広いブランドラインナップについては、期待薄と言わざるを得ない。
93年秋、今度は新しい本店をそれまで“広告代理店通り”の異名をとっていたマディソンアヴェニューにオープン。同店はこれ以降、同アヴェニューに高級ブランド店が集まるきっかけを作ったのだった。
その年のクリスマス、ニューヨークを訪れた時に覗いてみたが、店づくりは圧巻だった。9フロア、面積2万平方メートル以上。特にウィメンズはダウンタウン店に比べると、倍ぐらいのスペースがあり、VMDの訴求力には目を見張った。
売場づくりは、ブランドの中からバイヤーがセレクトしたアイテムのみを展開するというもの。つまり、ヘルムート・ラングのドレスの横に、セルジオ・ロッシの靴がうまくコーディネートされて並べられているのだ。
しかも、ストアデザインはフロア全体がどこからでも見通せるような什器も含めたオープンなつくり。言うなれば、ブランドのハコを取っ払った“完全な平場展開”がバーニーズの真骨頂なのである。
差別化についても「バーニーズにしかないもの」というポリシーを貫き、有名デザイナーのバーニーズコレクションに加え、無名デザイナーでも才能有りと認めれば商品投入を厭わず、さらにバーニーズオリジナルのブライベートブランドなど、アパレルリテールをリードする政策が取られている。
89年の日本初出店でも、この「しかないもの」は踏襲され、日本人デザイナーのブランドも数多く見られた。96年、岩田屋はZ-SIDEの開業でバーニーズを真似たようだが、完全買い取りなど常識を破るシステムの割に、バイイング能力の低さ、根強い商慣習、販売力の乏しさから完全に失敗し、同社が凋落するきっかけとなった。言い換えればそれほど、バーニーズのノウハウは偉大だと言えるだろう。
新宿店に続き、横浜店を開店するまでは、MDは申し分なかった。特に東京コレクションのブランドはもちろん、そこまで行かないデザイナーの商品を“レップ”を通じてセレクションするポリシーは、ニューヨークスタイルが息づいてとても好感が持てたものだ。
ただ、06年、マスターライセンスをもつ伊勢丹が本業の不振から、住友商事と東京海上キャピタル系のファンドに株式を売却。以降、住友商事が運営にあたっているが、MDは商社のノウハウを生かした国内外のコレクションブランド中心になっており、実力デザイナーのブランド発掘という点では二の足を踏んでいるようだ。
そこで改めて福岡店はどうか。概要を見る限り、品揃えは高級ブランドを中心に服や靴、時計・ジュエリー、化粧品、ギフト用品(チェルシー・パッセージ)などとなっている。しかし、4層というフロア構成を見るかぎり、新宿店のような品揃えは期待できないだろう。
新宿店にはオンワード樫山出身でニューヨークコレクションにも参加している小川彰子氏の「アキコ オガワ」、フリーデザイナーとしてビームスやサザビーなどにアイテムデザインを提供した斎藤美保子氏の「ミホコ サイトウ」、福岡出身で伊勢丹のオリジナル企画を手がけ、トゥモローランドの商品ディレクションにも関わる森健氏の「オブジェスタンダール」など、パリコレとまでとは行かないが実力では決して引けを取らないブランドも並ぶ。これらが果たして福岡店にやってくるかは、効率面や売場面積からして懐疑的だ。
博多駅にお客を奪われた天神としても、バーニーズ開店による新たな集客やお客の揺り戻しには期待しているはずだ。ただ、バーニーズの商品は従来の天神、博多駅にない感度、グレードではあるものの、品揃えに奥行きがなく、客層も限られる。
新幹線による広域集客で一部のブランドマニアは引きつけるかもしれないが、4層という売場構成を見る限り、幅広いブランドラインナップについては、期待薄と言わざるを得ない。