深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

2024年春アニメの感想と評価 1

2024-07-01 11:46:19 | 趣味人的レビュー

2024年春アニメについての、ネタバレなしの感想と評価。今期は全部で16本の作品を見て、途中切りはなし。この「1」は、その中で6月までに放送が終了したものについて。

ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。

以下、並びは50音順で、評価はA~E。

『Unnamed Memory』1期

子孫が残せなくなる、という魔女の呪いを受けたファルサス王国の皇太子、オスカーと、その呪いを解くためにオスカーに招かれた「青き月の魔女」、ティナーシャ。この2人の出会いは“魔女の時代”に変革をもたらしていくことになる。
ラノベ原作の、よくある異世界もので、大体2話で1つのエピソードが語られる。各エピソードとも物語が比較的しっかりしているので、1つのエピソードに費やす話数を増やせば、もっと盛り上がっただろうにと思う。スカスカの物語を派手なビジュアルで誤魔化すような作品も少なくない中、逆に語るべき物語が多すぎてしっかり見せられずに終わってしまった印象。ただ最終話を見ると、どうしてもここまでやりたかったのね、ということは分かった。
ちなみに、外見は少女ながら実は自ら成長を止め、数百年の時を生きている魔女、という設定のティナーシャを演じる種田敦美は、『葬送のフリーレン』でもそれとよく似た設定のフリーレンを演じていたが、ティナーシャの声とフルーレンの声はちゃんと聞き分けられるほど違っていて、さすがと言わざるを得ない。
評価はB-~B。2025年冬期に2期が放送予定。

『WIND BREAKER』1期

髪と目の色が左右で違う外見によって、ずっと周囲から弾かれ差別されてきた桜遥(さくら はるか)は、社会に対して強い疎外感を抱え、ケンカで勝つことでしか自分の存在価値を感じられない。そんな彼がケンカで“てっぺん”を取るために入ったのが「偏差値最低、喧嘩最強」の風鈴高校。だかそこは今、街を守る“ボウフウリン(Wind Breaker)”と呼ばれる存在になっていた…。
いわゆる「不良もの」の1本で、CloverWorksが制作しているだけに、冬期にMAPPAが制作した『ぶっちぎり?!』同様、ケンカのシーンの作画は素晴らしいの一言。それでも『ぶっちぎり?!』を3話切りしてしまった私が、『WIND BREAKER』を最後まで見たのは、作品として「これがやりたい」ということが明確で、それがしっかり描けていたからだ。
ただ、桜が幼い頃から外見で周囲に気持ち悪がられ、その疎外感からケンカに走るようになった、という物語の核になる部分は私にはちょっと納得いかない。あの程度の外見で周りからキモいとハブられてしまうものだろうか?(むしろ、あの髪などはブラックジャックみたいでカッケーと思うけどなぁ。)
ところで、主要キャラの声優の配役がまるで『呪術廻戦』をなぞったようになっていたのは偶然か、わざとか?
評価はC+~B-。2期が2025年に放送予定。

『怪異と乙女と神隠し』

かつては将来を嘱望されながら今は書けなくなってしまった、作家崩れの書店員、緒川菫子(すみれこ)。そんな彼女に、同じ書店で働く化野蓮(あだしの れん)がファンだといって言い寄ってくる。実は彼は妹の乙(おと)を救うため怪異現象を必要としていて、菫子をそこに引きずり込んでいく。
タイトル通り怪異ものだが、いわゆるホラーではない。テイストとしては西尾維新の〈物語〉シリーズと『裏世界ピクニック』を合わせたような感じで、怪異とは人の心の歪みが形をなしたものであり、それを解くことが即ち怪異を祓うということになる、というのが基本コンセプト。語られるエピソードはそれぞれしっかりと面白くて、1クールで終わってしまうのが惜しいくらい。また1クールでありながら、クライマックスからラストはこの物語が目指すところがちゃんと描けていた。『怪異と乙女と神隠し』の中で『怪異と乙女と神隠し』が書かれるところも『ドグラ・マグラ』っぽくて、個人的にポイントが高い。
ところで〈物語〉シリーズで猫の怪異だった堀江由衣と蟹の怪異だった斎藤千和が、この『こと神』ではそれぞれ牛の怪異、猫の怪異を担当しているが、斎藤千和の猫の演技がどこか〈物語〉シリーズの堀江由衣の猫に寄ってないか?
評価は各エピソードの面白さと作品全体としてのまとまりのよさによりB~B+。

『怪獣8号』1期

放送が始まる1年(以上?)前からPVを出すなど、かなりプロモーションに力を入れていて、覇権狙いか?と思われた作品だったが、いざ始まってみると何だか微妙…。私はこの作品について何も知らなかったので、第2話まで見た後、ネットで調べてみたら、「面白いのは最初だけ」といった話が多く、どうも原作はあまり評判がよくないようだ(ちなみに原作は「少年ジャンプ+」で連載中)。
怪獣が日常的に現れる日本で、幼いころに住む町が破壊された主人公の日比野カフカは、幼馴染の亜白ミナとともに「怪獣を全滅させよう」と約束していた。そして時は流れて、ミナは約束通り怪獣と戦う日本防衛隊の第3部隊長となったが、カフカは夢敗れて、今は怪獣の死体の解体業をしている(日本防衛隊へは、ずっと入隊試験を受けているが不合格のまま、今年で入隊年齢制限を迎える)。そんな折、カフカはある怪獣の死体処理作業中に別の怪獣に襲われ、ミナ率いる部隊に救出されるも負傷して同僚とともに入院。その病院で怪獣に寄生されたカフカは、自らが怪獣(怪獣8号)となってしまう。
とにかく過去のヒット作を相当研究したようで、物語設定にもストーリー展開にも『寄生獣』や『進撃の巨人』のパク…いや、オマージュが至る所に感じられる。原作者の研究の賜物か、『怪獣8号』は物語としてしっかり面白い。だが『寄生獣』も『進撃』も、「自分はなぜこの作品を描くのか」、「この作品によって何を訴えたいのか」という作者の強い思いや哲学があったが、今のところ『怪獣8号』にはそういうものが感じられない。あるのは、過去のヒット作の構成要素を上手に貼り合わせるとヒット作が作れる、ということだけだ(まさか「訴えたいのは『友情・努力・勝利』だ」なんて言わないよね)。
『怪獣8号』で私が一番もったないと思うのは、怪獣の死体処理業というカフカの当初の職業設定である。こんなおいしい設定を思いついたのなら、金太郎飴みたいな「ジャンプ」的バトルマンガではなく、そういう職業に従事する人間の日常や喜怒哀楽、人間模様を徹底して描く方向もあったはずだ。実際、第1話ではそうしたことが描かれていて面白く、そっちの方がいい作品になった気がする。
評価はB~B+。『鬼滅の刃』と同様、見るとテンションの下がる寒いギャグが邪魔で、それがなければ、もう一段階高い評価でもよかったと思う。なお続編の制作が決まっている。

『鬼滅の刃 柱稽古編』

前回の「刀鍛冶の里編」からの続き。
初回は1時間スペシャル。冒頭シーンにアニメ・オリジナルを入れてきたけれど、全体を通じてみると半分くらいがこれまでの振り返りを兼ねたスベりまくりの寒いギャグで、ムダに尺稼ぎしてるのが見え見え。それでも「遊廓編」や「刀鍛冶の里編」に比べて、今期は鬼との激しいバトルシーンもないのにちゃんと見られる作品になってるな、と思っていたら、何と冒頭だけじゃなくかなりの部分がアニオリだったことが判明! そのせいか、本来この「柱稽古編」は、物語の最後となる「無限城編」の前の“箸休め”的な部分なのだが、思っていたよりよかった。
評価はB-~B。あのどうにもならないギャグと余計な変な尺伸ばしがなければ、B+くらいつけてもよかったのだが。
続く「無限城編」は劇場版3部作になる。原作組からは「あの長大な原作を3部作で描ききれるのか?」という声が上がっているが、原作を知らない私は今回の「柱稽古編」を見て、「無限城編」も原作は「原案」に留め、ufotableが大幅に──というか根本的に──改変してくれた方がいいのではないか、と思っている。

『黒執事』寄宿学校編

13歳ながらもファントムハイヴ家当主にして“女王の番犬”としてイギリスの裏社会の汚れ仕事を請け負う、シエル・ファントムハイヴと、“あくまで”彼の執事であるセバスチャン・ミカエリス。今回このコンビが挑むのは、イギリス屈指の名門パブリック・スクールで起きた(と思われる)生徒失踪事件。女王の命を受けて件(くだん)のパブリック・スクールに生徒と教師として潜入するシエルとセバスチャンが目にしたものとは…?
イギリスの伝統的なパブリック・スクールの仕組みと、それを逆手に取った事件の真相とが上手くマッチしている(ただ、ギャグがちょっと強すぎの感も)。これ、実は劇場公開された「豪華客船編」の続編でもあるのだが、「豪華客船編」を見ていなくても特に支障はない(ただ『黒執事』という物語について、ある程度の知識は要求される)。
評価はC+~B-。

『時光代理人-LINK CLICK-Ⅱ』

中華アニメ『時光代理人-LINK CLICK-』の2期。写真の中に“ダイブ”して当時の撮影者の精神に乗り移る能力を持つ程小時と、写真の中で12時間以内に起きた出来事を把握する能力を持つ陸光が、写真館を経営する裏で、持ち込まれた写真についてのさまざまな依頼を受ける。1期は基本一話完結で2人が人助けをする話だったが、1期の終わりで2人は以前(というのは第1話)に受けた依頼にまつわる件に再び関わり、そこで絶体絶命のピンチを迎える。そしてこのⅡは、まさにそこから始まる。
正直、1期の各話はどれもどこか中途半端で、それほど魅力的な作品には感じられなかったのが、最後に前の話とリンクした続き物になってから急に物語が輝き出した。この作品の脚本兼監督、Haolin(リ・ハオリン)は、一話完結の短編ではなく中・長編でこそ力を発揮する人のようだ。
Ⅱの作りで特徴的なのは、毎回時間を少し戻して前の週の物語を、今度は別の視点から描く点で、それによって単に前回の振り返りをするのではなく、視聴者が週をまたいで、その出来事をより立体的に把握できる仕組みだ(それをもっと大規模にやっていたのが『デュラララ!!』)。
評価はA。一応最終話となるはずの第12話には「終」マークがなく、公式に続編の発表はないものの、まだ続きがあるのではないかと思っている。

『終末トレインどこへ行く?』

(一部の)アニメ・ファンから強烈な支持を得た、アニメ制作会社が舞台の『SHIROBAKO』や、『ガールズ&パンツァー』の監督を務めた水島努によるオリジナル・アニメ。
現在は5Gの通信エリア拡大が進められているが、物語は日本が世界に先駆けて7Gの運用を始めようとしていた近未来。だが7Gのスイッチを入れた途端、人知を超えた大異変が起こり、世界は一気に得体の知れないものへと変貌してしまう。それから2年が経ち、千倉静留たち女子高生4人と犬1匹は7G事件で行方不明になった中富葉香を探して、埼玉県にある吾野(あがの)駅から西武線で池袋を目指すことに(ちなみにこのアニメ、西武鉄道が協力している)。
この『終末~』は今、多くの(特に若い)人たちが抱く「何もかも全部壊れてしまえ!」という破壊願望みたいなものをすくい取ろうとしたのかもしれないが、本当に「一体どこへいく?」と言いたくなるような、まとまりのない意味不明な作品になってしまった。
評価はD+~C-。

『となりの妖怪さん』

今期のダークホース。
人と妖怪が当たり前のように隣り合って暮らす世界が舞台ということだったので、『うる星やつら』のように「今日も今日とて、妖怪と人間が上へ下への大騒動」みたいなショボい話だったら即切るつもりだった。けれど、それは杞憂で、それぞれの喜びや悩みを胸に生きる、妖怪や人間の日常を描く作品。
「生きること」、「死ぬこと」、「自分が自分であること」といった哲学的なテーマが物語の中にごく自然に織り込まれている。それでいて単に「いい話」ではなく、黒い部分や毒もあって、見終わった後に不思議な余韻──暖かさ、懐かしさ、悲しみ/哀しみ──が胸に残る。放送時間が深夜2時だが、これは本来、そんな深夜にやるようなアニメではない。よくある「子供だまし」の「子ども向けアニメ」ではなく、「本当に子供たちに見てほしい」という意味で、『となりの妖怪さん』は「子ども向けアニメ」である。こういう作品こそ子供たちにも見られるように、もっと早い時間に放送すべきだと思う。テレ朝さん、もっとよく考えてくれ。
評価はA-~A。

『バーテンダー 神のグラス』

ホテル・カーディナルの営業企画部は、ホテルに新たに開くカウンター・バーを任せられるバーテンを探していた。ホテルのオーナーから下された条件は、「神のグラス」が作れるバーテン。だがそんなバーテンダーは見つからず、探しあぐねた来島美和と樋口由香利は突然の雨に、たまたまあった銀座の小さなバーに飛び込むのだが、そこで2人はバーテンダー、佐々倉溜(りゅう)が作るカクテルに驚愕する。その佐々倉こそ、客一人ひとりの魂を救う1杯、「神のグラス」が作れるバーテンだった!
マンガ原作で、アニメとしてはリメイクのようだが、旧アニメは設定だけ借りて、中身は別物らしい。酒をテーマとしたマンガには、究極のワインを追い求める『神の雫』という作品があるが、この『バーテンダー』はそれに対抗して(あるいはインスパイアされて)書かれたのかもしれない。『神の雫』が長編なのに対して、『バーテンダー』は全体を貫くストーリーらしきものはあるものの、基本一話完結のヒューマンストーリー。こういう一話完結形式の作品は回によって出来不出来が出てしまうものだが、これは各話ともストーリーと、それにリンクする酒にまつわる蘊蓄が上手にかみ合っていて、深みは感じないものの見終わると満足感がある。
評価はB-~B。

『響け!ユーフォニアム3』

「響け!ユーフォニアム」シリーズはTVシリーズに劇場版に特別編まであって分かりづらくなっているが、3年生になった黄前(おうまえ)久美子たち吹奏楽部の面々が全国大会金賞目指して奮闘するこの「3」が完結編となる。
基本的に高校が舞台の「部活もの」だが、久美子たちが1年の時、2年の時、そして3年になった今回と、それぞれに固有の物語があって、そうした出来事を通じて視聴者である我々も、久美子たちと一緒に成長していくような体験ができる作りになっている。
そして今回、部に新たな風をもたらすのが、3年になって吹奏楽の強豪、清良女子高校から北宇治高校に転校してきた黒江真由だ。真由は久美子と同じユーフォ奏者で、実力もありながら物腰の柔らかい優しいキャラで、イベントでは率先して部員みんなの写真を撮る役を買って出るが、なぜか彼女の写った写真は1枚もない。まるで自らの存在を消したがっているようだ。
そんな真由の存在とは別に、部の方針に不満を募らせた後輩たちが大量退部か?という事態にも直面し、部長になった久美子は悩みまくる。今年は大会ごとに出場メンバをオーディションで決めることになり、そのオーディションの行方も相まって物語は緊迫の度を増し、一瞬たりとも目が離せない。ちなみに第12話のオーディションでは、私は2番目を選んだ。
京アニはこれとは別に、高校の弓道部を舞台にした『ツルネ』という作品も制作しているが、この『響け!』と『ツルネ』は同じ「部活もの」ながら、作品の構成要素が真逆で、比較すると面白い。
評価はA~A+。


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