正志はF刑務所で刑に服している。一審は裁判員裁判で行われた。検察側は強い殺意を抱き、ナイフを用意するなど計画的な犯行であり、極めて悪質と主張した。求刑は20年。佐世子は夫の遺族であり、殺人犯の母という複雑な立場だったが、正志の将来を考え、軽い刑であってはならないという思いがあった。しかし、目の前で現実に懲役20年と聞かされると気持ちが沈んだ。20年後、正志は42歳。人生で最も輝く時期を正志は刑務所で過ごすのかと思うと、改めて正志の愚行を止められなかった後悔の刃に襲われるようだった。
それに対して被告人の弁護側は「結果責任は重い」としながらも、正志の罪は殺人ではなく過失致死であり、林田恵理に対する殺人未遂であると主張した。弁護側によると正志は孝の浮気相手の恵理に殺意を抱き、ナイフで刺し殺そうとした。しかし、孝が恵理の前に立ち塞がり、彼が身代わりとなって死んだ。それは恵理も認めている。
また弁護側は孝が病院へ運ばれる途中、彼が虫の息の中「犯人の罪を軽くしてやってください」と最後の力を振り絞るように言葉にしたのを聞いたという救急隊員にも証言させた。そして、事件を起こしたその日のうちに自首したことや、平穏に暮らしてきた家族を壊された憤りなどを挙げ、情状酌量を訴えた。
そして判決は下った。懲役12年。求刑20年に対して大幅に刑が軽くなったのは、殺人か過失致死かという議論と同時に、裁判員が正志に対して情状酌量の余地があると判断したのが大きかったようだ。孝と恵理が不倫関係にあったことが被害者側への同情を薄れさせ、殺意を持っていた恵理には傷一つ負わせられず、殺意を抱いていなかった人間、それも父親を殺してしまった被告のショックも決して小さなものではないとの思いが、裁判員の意見として多数を占めたようだ。
被告である正志側は控訴せず、懲役12年の刑が確定した。
それに対して被告人の弁護側は「結果責任は重い」としながらも、正志の罪は殺人ではなく過失致死であり、林田恵理に対する殺人未遂であると主張した。弁護側によると正志は孝の浮気相手の恵理に殺意を抱き、ナイフで刺し殺そうとした。しかし、孝が恵理の前に立ち塞がり、彼が身代わりとなって死んだ。それは恵理も認めている。
また弁護側は孝が病院へ運ばれる途中、彼が虫の息の中「犯人の罪を軽くしてやってください」と最後の力を振り絞るように言葉にしたのを聞いたという救急隊員にも証言させた。そして、事件を起こしたその日のうちに自首したことや、平穏に暮らしてきた家族を壊された憤りなどを挙げ、情状酌量を訴えた。
そして判決は下った。懲役12年。求刑20年に対して大幅に刑が軽くなったのは、殺人か過失致死かという議論と同時に、裁判員が正志に対して情状酌量の余地があると判断したのが大きかったようだ。孝と恵理が不倫関係にあったことが被害者側への同情を薄れさせ、殺意を持っていた恵理には傷一つ負わせられず、殺意を抱いていなかった人間、それも父親を殺してしまった被告のショックも決して小さなものではないとの思いが、裁判員の意見として多数を占めたようだ。
被告である正志側は控訴せず、懲役12年の刑が確定した。