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ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

若い罪(47)

2020-11-13 16:01:33 | 小説
佐世子も夕食づくりは持続しつつ、物流会社で荷造りのパートを週4回ほどしている。苗字こそ旧姓に戻したものの、接客業のように人前に出る仕事は気が向かない。というよりも、佐世子自身が10年以上、自らの外見を気にするあまり、外で仕事をする気持ちになれなかった。しかし佐世子は前向きになった。いや、前向きにならざるを得なかった。勿論、町田に甘えてばかりはいられないという思いはある。佐世子が頼んで無理に微々たる家賃を払っているが、町田はあまり気持ちよさそうではない。1円も受け取りたくないというのが彼女の本音のようだ。もし町田の再婚の意志がないという言葉が本音ならば、彩乃はともかく佐世子とはこの先何年でも、大げさに言えば、どちらかの命が尽きるまでぐらいに考えていても不思議ではない。しかし、佐世子は彩乃の受験の合否に関係なく、来春には母子2人住まいのアパートを借りるつもりでいた。

麻美は教師での復職を目指していたが、採用してくれる学校はついに見つからなかった。今は埼玉県に移り、アパートを借りて塾講師をしている。佐世子はそれを聞いて安堵した。学校も塾も生徒に勉強を教えるという点では変わりない。まだ麻美は教師への復帰を諦めていないと確信した。教師採用の面接で苦労するのは想像がつく。「どうして小学校の教師を辞められたんですか?」という面接官の問いに上手く答えられないのだろう。しかしいつの日か、事実を話しても受け入れてくれる学校が日本全国のどこかに存在すると佐世子は淡い希望を持っている。


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