南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

5億円の五輪招致ビデオの制作費は妥当だったのか

2010-05-26 01:48:14 | オリンピック

5月24日、2016年夏季五輪の招致活動を検証するため、都議会
特別委員会が、招致経費149億円のうち67億円を受託したD社
の幹部や日本オリンピック委員会(JOC)会長ら計3人を参考人
として招き、意見聴取したというニュースがありました。

国際オリンピック委員会(IOC)総会用の約10分間の映像制作
費が5億円かかった問題について、D社の前スポーツ事業局長は
「制作費は品質によって大きく異なり、長さで論じられない。
IOC委員や海外メディアからも高く評価された」と妥当性を強調
したというのです。さらに「7カ国で40時間にわたって撮影した
ものを10分間に凝縮し、高品質な作品になった」と説明したの
だとか。

この件に関しては、かねてからオリンピック招致のプレゼンテー
ションに関して、いろいろコメントをしてきた私といたしましては、
このD社の人のコメントに関して是非一言、言わせていただきたい
と思い、今この記事を書きだしたわけでございます。

この問題の都議会特別委員会の模様がニュース映像の中にありまし
たので、ここにご紹介します。

いきなり「失敗した」という表現はちょっと可哀想な感じもするの
ですが、これは事実なので仕方ないでしょう。JOCの竹田会長が、
今後も日本でのオリンピック開催を目指すと力説し、「再度、
東京都でお考えいただくことだと思う」などと言っておられますが、
東京都民の皆さん本当にまだオリンピックやりたいと思ってらっ
しゃるのですか?もしそうだとしたら、それは何のために?

ところでこのD社の5億円と言われているビデオ映像。これ一本の
作品で5億円ということではなくて数本で5億円なんですよね。
一本で5億円だったらいかにも高い。でも一本一億円で5本だった
らまあありえない金額ではない。バブルの時代だったらあったで
しょうね。いまなら広告代理店からしたら夢のような予算額です。

一番上にアップした画像は、コペンハーゲンでの東京のプレゼンの
中で使われていたD社制作のビデオの中のワンカットですが、正直
金はかかっているかもしれないのですが、駄作だと思いました。
以前にもこのブログで批評しましたが、「高品質」とはいいがたい
作品だったと思います。画質は高品質かもしれませんが、映像作品
としては、まったく心動かされない、つまり過激な言い方をさせて
もらえば、どぶに金を捨てるような作品であったと思います。

この作品をYouTubeで探してみたのですが、見つかりませんでした。
おそらく組織の方がコントロールしたのでしょうか?それとも
誰もYouTubeにアップしようと思わないほどの作品だったという
ことなんでしょうか?しかし別の映像がありましたので、こちらを
アップしておきましょう。これIOCの総会で上映された数本のビデオ
の中に入っていたのかどうか定かではないですが。まずはこちら。



女性ばかりが登場しますが、国際的な視点からすると英語があまり
よくない。発音はなまっていてもよいのですが、英語を話すことに
慣れていないぎこちなさがありますし、見ていて何か変です。
残酷なことを言うようですが、国際レベルのプレゼンで勝ち残ろうと
思ったらもうちょっとがんばらなければダメです。後でご紹介します
が、リオやマドリードは、英語の発音はなまっていても、説得力が
あります。情熱があります。東京のものは残念ながらそれが一切
感じられませんでした。

滝川クリステルがフランス語で話すところも、フランスの人からする
とどこかの見知らぬレポーターがナレーション原稿を淡々と読んでい
ると感じるだけのような気がします。最後のミスユニバースの人も
あまり綺麗に撮れていない気がします。「夜でも安全」ということを
アピールするために夜の11時に撮影しているようなんですけど、
東京ってそんなに安全と言えるんでしょうか?通り魔事件なんて
ありません、地下鉄サリン事件なんてありません、痴漢なんていま
せん、ヤクザなんていません、犯罪なんてありません、と本当に
言えるんでしょうか?

この映像に関してもう少し言わせていただければ、東京の映像が
全く魅力的に見えません。カメラワークがひどい。お台場も全然
綺麗じゃないし、六本木だって全然お洒落な感じがしません。
この作品も5億円の一部になるのでしょうが、これだったらお金の
無駄と言われても仕方ないと思いますね。

こちらはまた別のビデオ映像。

東京は綺麗な街で、人々は礼儀正しいというのはわかるのですが、
静かすぎて、オリンピックを是非ここでやらなければという熱意
は伝わってきません。最初の都市の風景は、入れ物だけのコンク
リートの街という気がするし、祭りや寿司はいかにも唐突だし、
おじぎをする日本人の姿がなんか気持ち悪いんですね。なんだか
よくわからない映像です。これもお金の無駄のような気がします。

さてもう一つ別のもの。こちらは、会場設備とかをCGを使って
紹介した映像です。

すごいCGを使って金をかけているのですが、この安っぽさは何?
それと他の映像にも共通しているのですが、音楽がひどい。この
いかにも安っぽい企業紹介ビデオのようなのは手抜きとしか思え
ません。もうちょっとなんかできなかったんですかね、D社さん。

こちらはまた別のもの。

よくまあ同じような映像をいくつも作るもんだと感心します。
こんなに沢山のバージョンを作ったら億もかかるわなあと思って
しまいます。でも何かこの街、オリンピックを開催すべき都市
というイメージが弱いですね。こんなんじゃ勝てるわけない!

他にもまだ映像は作ったはずなんですが、これを見ればだいたいの
レベルはわかります。こんなんで5億円使ったのが妥当かと言われ
れば、私は妥当なはずないじゃないと答えます。ただし、それは
広告代理店の問題というよりは発注者である都の問題なんですけど
ね。我々広告代理店は予算が豊富にあればそれなりのお金は何とか
消化できるように工夫ができますからね。でもそんなお客さん
東京都くらいですよ。(他にもあるかもしれませんが)

ちょっとダメな映像ばかり見てきたので、どんな映像だったら本当
に効果的なのかという例をご覧意いれましょう。IOC総会でリオと
最終決戦となったマドリードの映像です。これは私のおすすめの
映像なんですが、これこそオリンピック誘致の映像作品です。
タイトルは「マドリード2017年」、オリンピックが開催される
2016年から1年が過ぎた2017年、人々はマドリードオリンピック
を終えて人生がどのように変ったのかを、いろんな人々の短い言葉
をつないで表現しています。

詳しくは後でご紹介しますが、私の過去のブログで紹介しています
のでそちらでご覧ください。

そしてもう一つの名作、リオの映像です。

これはメインの映像ではないですが、音楽と映像がめちゃくちゃ
いいです。日本の映像とはレベルが違います。

そして極めつけはこちら。リオのプレゼンを締めくくる最後の
ビデオ映像です。

いいですね。この盛り上がり、楽しさ、リオでオリンピックを
やったらこんなにも楽しいよということがよくわかります。
最後の空撮で、5輪の輪が見えてくるところ感動的です。

御参考までにこのブログ内でのオリンピックプレゼン関係の記事は
こちらです。ロンドンのプレゼンの時からあります。

ロンドンに学べ!(2006年8月24日)

2006年、オリンピックの最終選考がシンガポールで開催され、
ロンドンが選ばれました。そのプレゼンに関する記事です。

オリンピック誘致は参加することに意義がある?(2006年8月31日)

東京よ、過去のオリンピック開催地選考に学べ!(2006年9月1日)

東京オリンピック(2006年9月2日)

ここからはつい最近のコペンハーゲンでの選考会の記事です。

グッバイ、シカゴ、さよなら東京、アディオス、マドリッド(2009年10月3日)

東京は残念な結果に終わりました。

本当にこれでよかったの?東京のプレゼンテーション(2009年10月4日)

リオデジャネイロはプレゼンテーションも見事だった(2009年10月5日)

架空のオリンピック招致プレゼン・お笑いパロディ版(2009年10月6日)

これでいいのか、日本人の国際プレゼン能力!(2009年10月7日)

まぼろしのマドリード・オリンピック(2009年10月11日)

オリンピック招致における各国指導者の男の色気対決(2009年10月15日)

我ながらずいぶんいろいろとオリンピックのプレゼンのこと書いていますね。

よろしければ、こちらもついでによろしくお願いします。

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