前回の記事で、キャンディーズの『微笑みがえし』について触れたの
ですが、この歌詞をあらためて吟味してみたら、シングル曲のタイトル
がいくつも折り込まれているというのに今ごろになって気付いて、
ちょっと感動しています。というか、大学生の時代にリアルタイムに
この曲を聴き、その後も何度も聴く機会があったのに、この事実に
気付かなかった私の鈍感力の大きさにあきれてしまっています。
なにはともあれ、この曲の動画を見てみることにしましょう。
前回の記事でアップしたのは、彼女らが初めて歌ったときの動画だった
ので、音も振り付けもいまいちでした。別のものでみてみましょう。
こちらの動画は歌詞がしっかり出ているのでちょうどよいですね。
1977年7月17日、キャンディーズは突然の解散宣言をします。
「普通の女の子に戻りたい」という言葉が流行語になりました。
実際に解散をするのは1978年の4月4日ということになるのですが、
キャンディーズの事実上のラストシングルとして『微笑みがえし』
がリリースされるのは、1978年の2月25日のことです。
すでに解散ということが確定していて、解散に向けての準備が
着々と進んでいました。作詞を担当するのは、阿木陽子さんです。
この歌詞は、表面上は一緒に暮らしていた男女の別離という
ストーリーがあるのですが、同時にキャンディーズの解散宣言
にもなっているという多層構造の作品になっています。
歌い出しは、こんな感じです。
春一番が掃除したてのサッシの窓に
ほこりの渦を踊らせてます
机 本棚 運び出された荷物のあとは
畳の色がそこだけ若いわ
いきなり出てくる『春一番』というフレーズは、1976年の3月に
リリースされたキャンディーズの9枚目のシングル曲のタイトル。
いちおうこちらがその動画です。
この曲でこの年の紅白歌合戦に出るという記念すべき歌です。
お引っ越しのお祝い返しも
済まないうちにまたですね
二人で住んでいたアパートを引っ越します。サッシの窓に畳の部屋。
今ではちょっと古くさい情景ですが、昔はそういうのが普通でした。
引っ越し祝いをもらっていたというのですから、親か友人から祝福
される関係だったのでしょうか。若いのに「お祝い返し」のマナー
をわきまえているのは感心です。「お祝い返しも済まないうちに」
というのはまだ二三ヶ月ということなんでしょうか?あるいは、
もっと時間が経過していて、そういえばお祝い返しをしてなかった
というのを思い出したということなんでしょうか?いずれにしても
思い返してみるとあっという間のできごとだったということなので
しょう。
そんな短い時間なのに、家具が置かれていた場所の畳の色がそこだ
け若いというのは、どういうことでしょう。おそらく、これはそんな
にも時間が経ったということではなく、この短い期間にいろんなこと
があったということの象徴なのでしょう。二人は別れることに決める
わけですから、それ相当の修羅場があったはずです。それを畳に残っ
た後が象徴しているのでしょう。
罠にかかったうさぎみたい
イヤだわあなたすすだらけ
おかしくって涙が出そう
この歌詞の頭の『罠』(わな)、これは1977年12月にリリース
された16枚目のシングルですね。動画はこちら。
かなり大人っぽい雰囲気の歌になっています。この曲も解散確定後
の曲です。『微笑みがえし』に戻って「イヤだわあなた」という
歌詞に注目。「あなた」というのは夫婦関係を連想させます。
同棲をしている場合は、「あなた」という呼び方は一般にしない
でしょう。ということは主人公の二人は結婚をしていたのでしょ
うか?謎が深まります。
これは後でわかりますが、相手の男性は年下です。どこまで掃除を
していたんでしょう。すすだらけになるほど一生懸命彼氏は掃除
をしてくれました。それを「うさぎみたい」と言うのですから、
彼氏は可愛いタイプの男の子だったのでしょう。別れの時にこの
明るさが気丈でよいですね。
123あの三叉路で
123軽く手を振り
わたしたちお別れなんですよ
二人の別れのことなんですが、キャンディーズの三人のお別れと
いう意味が強く出てきます。三叉路を一人一人が別々の道を
歩んで行くという宣言にもなっています。
深刻な別れを明るく振る舞っているところがいいですね。
タンスの陰で心細げに迷い子になった
ハートのエースが出てきましたよ
おかしなものね忘れた頃に見つかるなんて
まるで青春の思い出そのもの
ハートのエースは、1975年11月にリリースされた8枚目の
シングル『ハートのエースが出てこない』ですね。動画です。
あの時なかなか出てこなかったハートのエースが、こんな
タンスの陰から出て来るというのは感動です。引退という
状況になって初めて、今まで忘れていた大切なものに
気がついたということなのかもしれません。
何年たっても年下の人
いやだわシャツで顔拭いて
おかしくって涙が出そう
ここに出てくる年下の人というのは、もちろん、1975年2月
リリースの5枚目のシングル『年下の男の子』の関連です。
こちらが動画です。
「シャツで顔拭いて」と言っていますが、タオルとか、
ティッシュとかなかったのでしょうか?My Wifeだったら
ここでは必ずウェット・ティッシュを差し出すはずです。
この時代だとそういうのはまだなかったかもしれませんが。
やさしい悪魔と住み慣れた部屋
それでは鍵がさかさまよ
1977年3月にリリースされた13枚目のシングル『やさしい悪魔』
の登場です。動画はこちら。
「やさしい悪魔」と言われる年下の彼氏ですので、いろいろと複雑な
問題もあったのでしょう。やさしいんだけど、逆にそれが残酷でも
あったということなんでしょうか?明るく装っていても、結構傷つい
ているんですよね、きっと。鍵が逆さまというのは、彼氏のほうは
ちょっと別れという現場で動揺しているんでしょうか。
あるいはキャンディーズにとってみれば、「やさしい悪魔」とは
芸能プロダクションの関係者のことなんでしょうか?住み慣れた部屋
というのは、住み慣れた芸能界ということなんでしょうか?彼女らも
きついスケジュールを入れられて辛い思いをしたのでしょうね。
そして最後は『アンドゥトロワ』、これは1977年9月にリリースされる
15枚目のシングルです。『やさしい悪魔』とこの『アンドゥトロワ』は
何と吉田拓郎さんが作曲をしています。動画はこちら。
最初は「ワンツースリー」と言っていたところが、最後に「アンドゥ
トロワ」になるという展開が見事です。一人一人がそれぞれの道を
歩いていくという表明なのですが、アンドゥトロワというフランス語に
なることにより、ステップはより軽やかに、エレガントになります。
一つの曲の中によくぞこれだけ過去の名作を折り込んだと感心します。
キャンディーズの最後を飾る(実際にはつばさという曲がありますが)
名曲ですね。この時代、私はもろ大学生だったので、すごく懐かしい
です。
よろしければ、こちらもついでによろしくお願いします。
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