今はなき作家マーシャル・フランスに惹かれ、その評伝を書きたいと思った高校の英語教師のトーマス・アビイ。彼は父親が著名な映画俳優スティーブン・アビイで、反発と同時に劣等感に悩んでいた。学校をやめ、ともにフランスに惹かれて恋人となったサクソニーとフランスが晩年を過ごした町ゲイレンにむかう。このあとはネタバレになるので詳しくは書かないけれど、ゲイレンの町の住民は一部を除いてゲイレンが書き残したゲイレンの町の未来の歴史に書かれる創作上の人物であることがわかる。トーマスの評伝が書き進まれるのに呼応するかのように、すでに書かれている歴史に乱れが生じていく。
まあ、非合理なのもダーク・ファンタジーなんだからいいんだけれど、リアリティと交錯するフランスの書いた未来の歴史のつながりが、だんだん読めなくなって、結末もかなり唐突に進んでいく。