South Is. Alps
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Coromandel
Coromandel, NZ
Square Kauri
Square Kauri, NZ
Lake Griffin
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豚三枚肉の中華風炒めもの、酸辣湯、焼きそら豆

豚三枚肉の中華風炒めもの:三枚肉焼肉用を紹興酒としばらく絡めておく。ごま油で三枚肉と白ネギ斜め切り+グリーンアスパラガスを炒め、花椒辣醤+塩コショウ+オイスターソースで味をつけて溶き片栗粉でとろみを付ける
酸辣湯:わかめと溶き卵
焼きそら豆

2021-03-07 20:45:19 | 夕食・自宅 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


『パンデミック新時代:人類の進化とウイルスの謎に迫る』

 2012年に翻訳出版(原著は2011年)された本書は、現代社会がパンデミックのリスクの高い状況にあるという警告の書であった。ここで指摘されてきたことをないがしろにしてきた様々な利害関係者(ステークホルダー)の危機感のなさがコロナ禍を助長したと言えるだろう。2000年代に入ってからも、今回のCOVID-19(SARS Cov-2)のパンデミック以前にも、SARS(SARS Cov-1)やN1H1インフルエンザのパンデミックがあり、各国は対策に追われたはずだ。しかし、喉元すぎれば熱さ忘れるのとおり、根本的な問題、パンデミックを引き起こすモニタリングシステムの構築が蔑ろにされて、当面の解決で収束してきたことが、今回のような結果を生んだと言える。そして、今回もまた同様の結果となる可能性が高いのではないだろうか。

本書では様々な事例が引かれてたいへん参考になる。最終章にリスク・リテラシーという言葉が挙げられているが、まさに、だれもがこのリスクに対するリテラシーを向上していかなければならないとおもう。また、世界的な感染症モニタリングシステムの構築など、対策として様々な提言が記されている。たとえば、携帯電話の普及を前提としたテキストメッセージをつかった危機報告システムの提言などだが、これは、SARSの経験を生かした台湾ぐらいだったようで、我が国のSARS以来の諸施策屋COVID−19に対する対策をみると、Cocoaはその典型であろうとおもうが、本書でふれられるようなことは考えられたとは思えないことがわかる。さらにいえば、我が国のみならず各国も濃淡はあるものの事前に対応してきたことは、おそらく不十分であったかと思われる。

本書が優れているところは、専門的な用語を最小限にして誰にもわかるように描かれているということだろう。まさに、リスク・リテラシーの必要を踏まえて政策立案者・制作実行者のみならず、我々一般の人々にも理解が進むように描かれているといえよう。ロックダウン下のイギリスでは、ネットでブームに火が付いたことを理由に、2020年になって日本でも復刊され、多くの人が読んだことは、まさに、ホットなトピックであったことが知れる。しかし、「緊急復刊」されること自体、まさに、本書で述べられていることが実践されておらず、さらにはリスク・リテラシーの向上が見られなかったことの証左であると思われる。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000203.000018219.html

本書では、ウィルスが生命であるかどうかの議論をおいて細菌やウィルス(遺伝子を持つが他の生物の細胞内で自己複製をする)、プリオン(タンパク質の一種で遺伝子をもたない)もふくみ、感染症を引き起こす存在全てが、取り上げる対象となる。人間はややもすると、自身が自律的に生きる生物であると思いがちだが、腸内菌叢を例に上げるまでもなく、一人では生きてはいけないこと(物質的にも、精神的にも)を忘れがちである。同様の意味で感染症の原因となる細菌やウィルスやプリオンもまた、他の生物との関係の中で存在していると位置づける。

ウィルスは他の生物の細胞に侵入して初めて次世代を残すので、いかにして細胞内に入り込むかが、彼らの次世代の再生産にかかわる。そのために、細胞の受容体(レセプター)と適合する部位(スパイク)を持つことがキーポイントとなる。レセプターを鍵穴、スパイクを鍵と考えたらわかりゃすい。細胞の持つ免疫反応は、異物の侵入に対して同様の機序をもち、単純化して言えば、レセプターを作り変えることによって、異物の細胞への侵入をふせぐ、あるいは、異物を排除する特別な細胞(たとえば、キラーT細胞)があえて、異物とレセプターを通じて結合して排除する(分解する)といった一連反応が免疫反応といえるだろう。しかし、ウィルスは遺伝子の変異性を利用して、再侵入をこころみる。ウィルスが再生産されるとき、スパイクの形状が様々な形を持つ多様な変異をもつ次世代が誕生する。昨今、COVID-19の変異型の感染が新たな感染の波を引き起こしていることがまさにその典型といえる。

次に本書で取り上げられるのは、人類の進化史の問題である。人類は霊長類の一員であるが、最も近い親類である霊長類はチンパンジーとボノボだが、彼らが熱帯の密林を生息域としているのに対して乾燥したサバンナに生息域を移したのが我々の祖先である。密林はいわば、感染症の巣窟(感染源が多様に存在するということ)であるのに対して、乾燥しているサバンナは感染源は相対的に少ない。乾燥した地域に出たことが、感染源に接触することを減少させ、免疫反応によって多様な感染源に対応する機会を減らせることになった。チンパンジーとボノボ、そして人類は他の動物を狩猟する雑食性のどうぶつである。他の動物の血液や体液と接触することになる狩猟は、他種の病原体からの感染のリスクも大きい。人類は、乾燥地帯に出たあと火を使うことを知った。加熱は食物に付着する微生物を殺すので、さらに、感染の機会を減らした。また、環境変化による人口のボトルネックをへて、人類は遺伝的多様性を減らした。

そうした人類が、定住をはじめ、家畜を飼い始めた。ボノボやチンパンジーと分岐して依頼歩んできた道とは逆方向に向かい始める。低順による集住は感染蔓延の機会を増やす。家畜を飼うことによって動物からの感染症の機会を増やす。いわば、人類は、せっかくの感染の機会の現象をわざわざ増やす道へと戻っていったのだ。

著者は、モニタリングのリソースとして、世界のハンターたちの感染状況をつかっているという。そのことを通じて、いち早く、新たな感染症の発生を完治し、対処法を見出すだけでなく、世界に警告を発するそうしたシステムを構築することが願いだという。

しかし、世界各国の政府は、そうした立場に立たない。むしろ、場当たり的な対応をとってしまう。コストとリスクの帳尻を考えるからだろうか。また、政府の科学的なリテラシーも不足しているし、とうぜん、一般の人々のリスク・リテラシーも不足している。コロナ禍は起こるべくして起こったとしか言いようがないかもしれない。

今からでも遅くはないとおもう。本書を読んでリスク・リテラシーをたかめ、政府の施策を変えさせなければならない。

2021-03-07 14:58:29 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )