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しとぎの話

2013-03-24 | 青森の味
菅江真澄の著作の中に、下北地方を歩いていて一夜の宿を借りた家で「何も食べるものが無くて」と言われながらもヒエしとぎを出されて食べたというくだりがあります。
以前に読んだものなので、ヒエだったのかアワだったのかの記憶がおぼろげですが、雑穀で作るしとぎもあるのかと、驚きとともに今でも思い出します。
青森県南部地方でしとぎといえば豆しとぎが一般的です。
固めにゆでた青豆を砕いて米粉と混ぜて小判形にまとめた、ほんのり甘いお菓子のような存在で、スーパーでも売られています。
東北地方と九州にもみられるしとぎは、現代では米粉を使って作られていますが、農民が米を食べる機会の少ない時代においては、菅江真澄の見た「ヒエしとぎ」のように雑穀を材料として作られていたと考えられます。

よく似た食べ物に「たんぽやき」「たんぱやき」があって、秋田名物のきりたんぽは有名ですし、岩手県北では小麦粉の生地を南部せんべいの焼型で焼いた「たんぱやき」もあります。
穀類をつぶし成型して加熱する、または加熱した穀類をつぶして成型した後に加熱という調理手順が、同じ文化内の食習慣であるように感じます。

以前、縄文クッキーが話題になっていた時期がありました。
縄文遺跡から出土した、クリやドングリをつぶし成型して加熱したもので、その中から動物性の脂肪が検出されたとの発表から「クッキー」と命名されたと記憶しています。その後、動物性脂肪については異論もあり、現在は植物性の材料だけで作られたのではないかとの認識に変わっています。
動物性脂肪が使われていないのなら、クッキーというよりも「しとぎ」に近い食べ物のように思いますし、なにより現在も東北地方で縄文時代と同じ食習慣を保ち続けているなら、それは壮大な歴史ロマンを感じます。
縄文時代の食べ物が、今もスーパーに並んでいると思うと、急に豆しとぎを食べたくなってしまうのです。


しとぎばなし
「シトギ」から「すとんぎ」へ


最近は写真を撮っていない事に気が付きました。
文章とは何の関係もない今日の写真は、昨年撮ったキクザキイチゲです。
青森県では、まだ開花期ではないのですが、春の花が待ち遠しい季節なので。


津軽三十一番観音 居土普賢堂

2013-03-16 | 青森

昨年春に見学した居土(いづち)普賢堂。
巨木の多い神社で、青森県農林水産部林政課発行の『青森県 里山の巨樹・古木マップ』
にも三本の木が載せられています。
一番最初の鳥居から山道のような参道を登ると、二の鳥居前にニリンソウが咲いています。
青森ではニリンソウは食用で、毎年ニリンソウとトリカブトを間違える食中毒のニュースを見ると、青森県だけに限っているわけではないけれども、青森に住み始めた頃は美しい花を食用にする事に軽い衝撃を受けたものでした。
カタクリやイチゲなどより、ほんの少し遅れて咲き出すニリンソウも、山野草好きにはファンの多い白い花です。

この所の暖かさで雪も急激に融けてきて、そろそろ春の花を観たくなる頃は、今までの写真を眺めたりしています。
写真を参考に、この春はどこへ何の花を見に行くか考えるのも毎春の恒例です。







個性の魅力

2013-03-09 | 思うこと
自分と同じ服を着た人と街で出会って不快感を感じる経験があります。
あれは何故に湧きあがる感覚なのか、いまだにはっきりとした原因は理解できないけれど、その時来ていた服は二度と着ることが無かった。
売られている洋服を買うのが当然であれば、同じロットから生まれるであろう服の数だけ、そんな体験の可能性があるわけで、仕方ないといえば仕方ない話です。

個人的におしゃれだなと感じる人は、たいてい強烈な個性を発散しながら奇抜とまでは行かない微妙な線の上にいて、そんな人のように着こなそうと思ってもなかなか真似のできないような、そんな人です。
値段の高いものを着ているわけでもなく、古い服を上手に組み合わせているだけなのですが、全体としてその人なりの個性が出来上がっているような。
ああいう感性はどこから出てくるのか考えた事がありますが、好き嫌いがはっきりしているとか、流行に流されないとか、色彩感覚が優れているとか、そんな理由しか思い浮かびませんでした。
なかでも自分の好きな物だけを着ているのが大きい理由のように思います。
好みは独自の個性そのものを表現しているのでしょうね。

強烈な個性といえば、各種セミナーやワークショップなどで非常に個性的で、今までどこにも無かったような尖った魅力的なアイデアが出る事があります。これを全体で話し合っていると、最終的にアクを抜かれて平凡で当たり障りのない案になってしまう場面を何度か目にしています。
みんなで話し合えばいい案が出てくる場合もあるのですが、際立って個性的なものに関しては当てはまらないようにも思います。





色彩感覚

2013-03-05 | 手仕事
冬の間は編み物に熱中しています。
Ravelry という海外のニット・ファンの集まるSNSに登録して、世界中のニット作品を眺めていますが、海外の作品は思いもよらない美しい色使いの物が多くて勉強になります。
このSNSには日本の方も登録していて、なぜか作品を見ていると「これは日本の方の作品だ」という事が分かります。
日本国内での流行のデザインであること以外に、色使いに特色があるように感じます。
私も日本人ですから、なにがどのように違うのかを説明できないのです。

日本の伝統色―色の小辞典
のような本を眺めていると、油絵具に使われる色とは全く違う色彩が並んでいて、全体に微妙な中間色の世界です。
今では日本も色に溢れているものの、色の組み合わせの好みは伝統色の方向に近いと思うのですが、どうなのでしょう。