詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

詩はどこにあるか(20)

2005-03-09 01:17:15 | 詩集
森鴎外「電車の窓」(岩波書店「鴎外選集」第2巻)

 亘の長い目で、瞳が黒い星のやうに輝いた。
 この目がこんな事を言ふのである。「あなたも千万人の男といふものの中のお一人でございますね。(略)」
(略)
 鏡花の女は矢張鼠のコオトの袖を柿を掻き合せて、俯向加減になつてゐる。
 その姿勢がこんな事を言ふのである。「まあ、なんといふ詰まらない身の上だらう。(略)」

 「目」や「姿勢」はもちろん何も言わない。言っているかのように「感じる」(感じられる)。そして、その「感じる」(感じられる)を省略したとき、対象がくっきたと浮かび上がる。対象が明確な存在となる。
 その瞬間が「詩」である。 
 そして、その「詩」を成立させている語が「言ふ」である。
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