詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

こころは存在するか(26)

2024-03-19 22:44:10 | こころは存在するか

 時間は存在する。
 しかし、過去を考えるとき、時間は存在しない。「過去」という時間は存在しないというか、「過去」を考えるとき、時間のなかで「過去」「現在」「未来」という区別はなくなる。
 言い換えよう。
 過去の行為がいつまでも苦痛であるのは、時間とともに「過去」が過ぎ去らないからである。いつも「現在」として、私のそばにある。私を取り囲んでいる。
 時間は人間の意思、感情を無視して、人間のなかで「時制」を破壊して存在し続ける。物理や数学のときにつかっている時間、人間の意思や感情とは関係のない時間について考えても、意味はない。
 時間は存在しない、とはそういう意味である。

 和辻は、カントは「有るものと、単に考えられるにすぎないものを区別する」というようなことを書いている。
 単に考えられるにすぎぬもの、とは何か。
 数学的、物理学的な時間も、それだろう。
 また、精神、こころとは、考えられるにすぎぬものではないのか。それは、ほんとうは存在しない。
 一方、ことばはどうか。ことばは声(音)であり、文字である。それは、たしかに存在する。その存在を、私という「肉体」は受け止めることができる。耳で、目で。そして、それをつくりだすこともできる。声(喉)で、手で。
 ことばのなかには、「精神」とか「こころ」とか、人間が名付けたものがあるが、それは、やはり「ことば」であって、それが「精神」あるいは「こころ」かどうかは、わからない。だいたい、「ことば」はほんとうのことを語るだけではなく、うそをも語ることができる。「うその精神」「うそのこころ」。それを存在させてしまう力。ことば自身がもっている力。
 ことばは生きていて、ことばをつかう人間と戦っている。

 

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1 コメント

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こころは存在するか(26) (大井川賢治)
2024-03-19 23:02:30
谷内さんの興味深い評論の一言。/ことばは生きていて、ことばを使う人間と戦っている/。

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