詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

エマニュエル・フィンケル監督「あなたはまだ帰ってこない」(★)

2019-05-27 19:53:40 | 映画
エマニュエル・フィンケル監督「あなたはまだ帰ってこない」(★)

監督 エマニュエル・フィンケル 出演 メラニー・ティエリー、ブノワ・マジメル

 マルグリット・デュラスの小説「苦悩」は読んでいないが、デュラスの小説が原作、予告編の「君が必要としているのは苦悩か、夫か」というシーンを見たいのと、ブノワ・マジメル(「人生は長く静かな河」では、子役だった!)が出るので見に行ったのだが。
 駄作。
 小説を読んだ方が絶対におもしろいと思う。映画になっていない。大事なところはナレーションになっていて、そこに風景とメラニー・ティエリーが映っているだけ。ナレーションなしで、そのときのマルグリットの「思想」と「感情」が伝わってくるのならいいけれど、ナレーションなしでは「描写」がわからない。
 小説は「ことば」だから、風景(描写)と思想、感情は「地続き」になる。だから、どんな風に書いても(とはいえないかもしれないが)、「一体感」が生まれる。渾然とした感じが、読者を引きつける。
 でも、映画では、映像とことばが分離してしまう。映像と無関係なことばなら、まだ刺戟があるが、映像をなぞっていてはだめ。あ、ことばを映像がなぞっているのかもしれないけれど。
 唯一の見せ場は、予告編にあった「君が必要としているのは苦悩か、夫か」と友人がマルグリットに問いかけるシーン。マルグリットは友人を平手打ちするが、ここの「作家」の宿命のようなものが凝縮していて、そこだけが光っている。「苦悩」が作家を育てる。作家のことばを豊かにする。言い換えると、マルグリットが小説を書けるのは、苦悩があるからだ。その苦悩が、「夫が帰って来ない」というものであっても、作家は「苦悩」を必要とする。問題を図星されて、マルグリットは、反射的に、ヒステリーを起こす。ヒステリーの中へ逃げ込むことで、自分自身を「解放」する。
 でも、まあ、こんなシーンは、「物書き」に興味がなければ、どうでもいいシーンだろうけれどね。私は「作家」にもデュラスにも関心があるので、なるほどなあ、と思って見たのであった。
 もうひとつ、見たいと思っていたブノワ・マジメル。
 うーむ。フランスの「美男子俳優」のはずだったが。いや、いまでも「美男子」なのかもしれないが、まるでジェラール・ドパルデューを見るみたい。ぶくぶくに太ってしまった。最初に登場するとき、上着を脱いでいてカッターシャツ姿なのでビール腹がそのまま目に飛び込んでくる。役どころにあわせて太ったというのではなく、単に不摂生で太ったというところ。「人生は長く静かな河」から見ているから、この変化には、あきれかえった。フランスでは、太っているかどうかは、もてる、もてないとは関係がないということがわかり、中年太りの人には「朗報」かもしれないけれどね。
 中年太りといえば、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に出るディカプリオもスーツを着ていても太っていることがあからさまにわかるくらい太っていたなあ。目の感じがチャールズ・ダーニングに似ていると思っていたが、体型も似てきてしまった。(身長は違うけれど。)
 という具合に、見た映画からどんどん感想が離れていってしまう作品。
 (KBCシネマ1、2019年05月27日)
人生は長く静かな河(字幕スーパー版) [VHS]
ダニエル・ジュラン
EMIミュージック・ジャパン

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 嵯峨信之『土地の名-人間の... | トップ | トランプ報道を読む(2) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画」カテゴリの最新記事