ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

あべのハルカズBAR 8ページ目 プロローグ 緑子が緑の羽に

2014-05-12 07:43:37 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【8ページ】



 突然草むらの方で、大きな悲鳴や喚き声があがった。


「助けてくれー!」

「は、離すんだ!」

「あ、足が動かない」

「無数の手が・・・・」


 晴数と緑子は、展望台から叫び声のする草むらに向かって見下ろした。


「彼らは、お金を返したい言っているようだ」


 緑子は頷く。


「ヴィトンを取りに、一緒に行こう」


 晴数は、左手を緑子の左肩にかけ、自分の方へぐっと引き寄せる。

緑子は緑の羽になって、晴数の左胸に張り付いた。

彼は、ゆっくり展望台の階段を下り、草むらに向かった。

そこでは、四人の若者達は、まるで死人の若者達のように顔の血の気

がなくなっていた。

晴数は、彼らの近くに落ちていたヴィトンの財布を拾い上げる。


「君達は、お金の返済に戻って来たのだね?」

「た、助けて・・・・・・」


 長身の若者が、助命を嘆願した。


 カア、カア、カアとカラスが木の枝に止まった。

そして2羽目のカラスも飛んできた。