ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 148ページ目 第四話 人型ソムリエロボットの実力は? 

2012-07-25 22:11:06 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【148ページ】


「直観力、想像力、創造力、連想力、ファジーさ、これらの人間の持つ特徴が改善のヒントになるのでは?」

「和さん、ありがとう! いいヒントになったよ!」


しばらく談笑した後、深川博士は和音を玄関まで見送った。

そして部屋に戻ってくると、専属ソムリエの味川に話かけた。


「我々のトリックが見破られたと思って、ヒヤヒヤしたよ! アジミーの改善の指摘はさすがだったが、

今回のテイスティング対決については、我々の勝ちだ!」

「そうでしょうか?」

「3本目のワインに対して、アジミーはワイン名がシャトー・ジスクールで、ヴィンテイージは1980年と答えた。

それに対しして和さんも正解だと答えた。」

「私もそう思っていました。」


味川は、少し残念そうな表情を浮かべた。


「深川博士が、和音さんを見送っている間、彼の言葉を思い出していたのです。

和音さんは、アジミーの答えが正解だと答えているのです。私達は1979年ラベルを1980年に張り替え、

アジミーに1980年のシャトー・ジスクールだと教えました。

和音さんは、アジミーの答えは正解だが、実は誤っていると言いたかったのでは?」

「どうしてそう思う?」

「データを信じ過ぎると、誤る判断をすると言ってませんでしたか?

誤るは『あやまる』で、やまるは80です。 だから80は誤りとさりげなく言っていたのでは?」

「うーん、確かに! 和音さんは、テイスティング対決では、相手を徹底的に打ちのめさない。

そのファジーな勝ち方が神秘性を生み出すのだ。」


二人の会話を見ながら、アジミーが「直観力、想像力、創造力、連想力、ファジーさ」と声には出さず、

繰り返していた。