星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

猫は生きている

2008-08-09 | ネコの本
大学時代、「猫は生きている」という映画の上映会を手伝った。
(監督:島田開、人形製作・操演:人形劇団京芸、1975年)

        

主人公は、東京大空襲の中を、仔猫をつれて逃げる猫の「稲妻」
赤い炎の人形劇だった。
途中から息が止まったような状態でみることになる映画だ。
心の中で「走ってー、走ってー、逃げるのよー」と必死で叫んでしまう。

映画を観た後、この原作本を買った。
「猫は生きている」早乙女勝元作、田島征三絵(理論社、1973刊)

  
              
でも、映画を観た後、すぐには読めなかった。
表紙の絵が、昌男くんで、どんなシーンなのか知ってしまっていたから、
なかなか本を開くことができなかったのだ。
何日か経って、勇気を出して、開いてみた。
稲妻母さんと、ひい吉、ふう吉、みい吉、よう吉がいた。
                       

田島さんの迫力の絵に、本だけど、途中からまた叫んでいる。
「走ってー、走ってー、逃げるのよー」と。
でも、逃げる所はない。

昌男くんのお母さんは、閉ざされた鉄のシャッターの前で、
洪水の日、仔猫を口にくわえた稲妻が、あらん限りの力をだして泳いでいた姿を思い出し、炎の熱さに耐える。

『写真版 東京大空襲の記録』(新潮社)に、学徒兵として東京大空襲時の遺体の処理作業を行った須田卓雄さんの体験記~「花があったら」~が載っている。
「猫は生きている」の昌男くんのお母さんは、ここから生まれた。

「猫は生きている」は、東京大空襲の日、必死に生きようとしたお母さんと子ども達を描いた本だ。
平和な時代に生きる私達に、今の生活のすべての前提が「この国が戦争をしていない」ということであることに、気付かせてくれる本だ。

1945年3月10日、8月6日、8月9日…その後に続く今

ジョー・オダネルさんが長崎で撮った写真「焼き場に立つ少年」を忘れることはないだろう。
大人が始めた戦争から子供達は逃れることができない。

     ~CD「にんげんをかえせ」

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2 コメント

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Unknown (shibako)
2008-08-12 18:56:54
友人滞在中により少しお久しぶりです。
友達とはいえ、誰かもうひとり家のなかにいるって
結構落ち着かないものですね。

>平和な時代に生きる私達に、今の生活のすべての前
>提が「この国が戦争をしていない」ということであ
>ることに、気付かせてくれる本だ。

こっちにきて初めて、母国が戦争をしてる人に
たくさん会いました。
日本が好きだとか嫌いだとかぶちぶち言えるのは
幸せな証拠だなあと。平和なだけで素晴らしい。

こういう催し、これから私も行ってみたいです。
被害者としての日本と加害者としての日本
両方ちゃんと見定めたいです。

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shibakoさん (ラミーチョコ)
2008-08-14 03:02:54
>母国が戦争をしてる人にたくさん会いました。
今オリンピックの真っ最中ですが、オリンピックのたびに、選手一人一人の力だけでなく、その背景のお国事情について、考えてしまいます。
shibakoさんの日常は、オリンピックの選手村のようなものかもしれないですね。

>こういう催し、これから私も行ってみたいです。
様々な対立する社会の問題に、自分がどちら側に立つのかを、いつも考えていなければいけないと、学生時代は思っていました。そのために学ぶのだと。
しかし、その後の妥協の日々…
…エアコンをガンガンかけて原発反対、卒業式には君が代斉唱
希望ある未来像を提示できない大人にいつのまにかなっている自分を、反省しています。
いくつになっても、新しい出会いの度に、学習しなければと。
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