
う~ん、面白い!
宮部作品は情報量が多く、読み進めていくスピードをなかなか
上げられないのですが、人を描かせると、特に人のあさましい、嫌な弱い部分を
描かせると天下一品なのでファンが多いのでしょう。
院長も宮部作品と向き合う時にはある程度の覚悟と気合をもって臨むのですが
この「おそろし」は珍しくサクサク読みやすい。
江戸の袋物屋三島屋の主人伊兵衛があるとき酔狂で屋敷のとある間に
客人を招き、江戸の町に数多ある奇妙な話を集めることにした。
そこかしこから、奇妙な話を持った客人がこの間を訪れ、聞き手である
女中見習いのおちかに話をして聞かせる。
おちかも心に闇を持ったわけありな娘で、伊兵衛がこの奇妙な百物語の
聞き手におちかを選んだのもその事と関係があるようだが・・・
その話はタイトルのような「おそろしい」と言うほどの内容ではないのですが
これが宮部マジックなのか、不思議なくらいグイグイと引き込まれる。
作品としては最後のくだりがちょっとファンタジーな感じに
なりすぎていたのが少し残念に思いますが、人の心の嫌な部分がジワーー
っと伝わってくる傑作だと思います.
自分にもこういう面があるかもな~、いや、それはないか、あ、でも・・
たまには自分を見つめなおしてみては?