「政治的背景と理念は違うがこれら暴言議論の主人公が有権者の支持を受けているのは長期的な景気低迷にともなう失業と中産層崩壊、これに伴う二極化の深化という共通点が作用した結果だ。 」
「憤怒した低所得・低学歴・白人有権者が移民者・少数系・女性をスケープゴートにしようとするトランプの扇動戦略に熱狂している」
アメリカ、イギリス、日本などの富裕層、多国籍企業、大手金融機関が徹底して行っている利益追求が新自由主義経済を基本として傍若無人のふるまいを行ってきました。また、現在もその横柄で、社会的な公平を欠く行動は徹底して追及されています。利益を出すために彼らが一番徹底したことが、人件費の削減です。そのために人件費の安い国家への製造拠点の移転を行いました。その結果、製造業の雇用は国内では著しく減少し、産業の空洞化が深刻な状態になっています。アメリカの自動車産業、鉄鋼などはその代表的な事例です。人件費の削減は正規労働を非正規労働、派遣労働へと進み、そのことが資本主義国で中産階級の没落、貧富の格差拡大の最大要因となりました。このことは工業化が遅れた資本主義国家でも同じです。その理由は、大量生産、大量消費型産業、経済はボーダレスになっているので一国だけが賃金体系を高く維持すれば、価格競争に負けてしまうからです。
負の連鎖を断ち切ることこそが政治が果たすべき課題です。そのためには先進工業国の政治が、このような低賃金労働、非正規労働を規制し、正規労働を労働の基本とするルールを再確立することです。そのうえで、富裕層、多国籍企業、大手金融機関の横暴を抑え、税負担において応分の負担を担わせることです。その財政を低所得者の生活保障、社会保障制度の拡充に充てることが必要です。
富裕層、多国籍企業、大手金融機関の横暴による社会的不公正、低所得、失業問題を暴言、他民族抑圧、排外主義に向ける政治を止めなければなりません。トランプ、フィリピン新大統領、日本における安倍、大阪維新橋下などのファッショ的政治、政治手法を批判し、孤立させなければなりません。
[中央SUNDAY]【社説】「憤怒の政治」防ぐ道、二極化解消とセーフティーネット
先週フィリピンの大統領に選出されたロドリゴ・ドゥテルテ氏は「フィリピンのトランプ」と呼ばれる。22年間ダバオ市長を務めた彼は「犯罪者の死体を物干しに干してやる」などの過激な発言をはばからない暴言問題の主役だ。米国では多くの暴言で世論の非難を受けているにもかかわらずドナルド・トランプ氏が有力候補を抜いて事実上共和党候補に確定した。ブラジルではハイチ難民に向かって「ごみがブラジルに入ってこようとしている」と述べて議論になったジャイル・ボルソナロ議員が有力な大統領選候補者に浮上している。
政治的背景と理念は違うがこれら暴言議論の主人公が有権者の支持を受けているのは長期的な景気低迷にともなう失業と中産層崩壊、これに伴う二極化の深化という共通点が作用した結果だ。
フィナンシャルタイムズはトランプ現象に対し「中産層没落にともなう二極化深化がトランプ症候群をあおっている」と報道した。実際にピューリサーチセンターが米国内229都市地域を対象に1999~2014年の資料を調査した結果、83%に達する地域で中産層の家計所得が減少したことがわかった。憤怒した低所得・低学歴・白人有権者が移民者・少数系・女性をスケープゴートにしようとするトランプの扇動戦略に熱狂しているのだ。
フィリピンも似ている。ニューヨークタイムズはドゥテルテ氏の当選を「コファンコ一族をはじめとする有力な40の一族がフィリピンの国内総生産(GDP)の76%を掌握する現実に有権者が幻滅を感じているため」と分析した。現在8600万人のフィリピンの人口のうち4分の1が貧困層だ。フィリピン大学のテレサ・タテム教授は「富豪はさらに裕福になるのに対し、普通の人たちは壊れた地下鉄に2時間乗って仕事場に行くことに挫折した。ドゥテルテ氏が実際に変化をもたらすという期待から支持するもの」と話した。
これだけでなくスペイン、オーストリア、ブラジルなど世界のあちこちで二極化に怒る有権者の感性を暴言で刺激し既成秩序をひっくり返そうとする「憤怒の政治」が広がっている。
二極化にともなう対立が激しくなる現象は韓国も例外でない。11日に統計庁が発表したところによると、先月の青年失業率は10.9%で前年同月比0.7ポイント上昇した。関連統計集計が始まった2000年以降で4月基準としては最も高い数値だ。15~29歳の青年失業率は2月から3カ月連続で同月基準最高値を記録しており深刻性が高まっている。
韓国的不平等の原因は財産の差も大きいが、これよりも賃金・雇用の格差から始まったというのが大体的分析だ。中小企業労働者の賃金は大企業の3分の1にすぎない。労働者の3人に1人は賃金が2人世帯の最低生計費にも満たないのが現実だ。中小企業では人がいないと騒ぐが青年失業率が過去最高を継続する矛盾がここで発生する。「雇用の4%しか作らない100大企業が利益の60%を持っていく勝者独占の構造を変えなければならない」(チャン・ハソン高麗大学教授)という主張も出ている。
問題は二極化が1日で作られたものでも、大統領が変わるからとすぐ解決されるものでもないという点だ。『21世紀の資本』を書いたトマ・ピケティ教授の指摘通り二極化深化は構造的な問題であるためだ。世界経済が低成長局面に入り込むほど受け継いだ富がさらに多くの富を生む状況はさらに確固としたものになり、不平等は歴史上最高水準に深刻化されるだろうというのがピケティ教授の憂鬱な結論だ。
貿易で生きる韓国がトランプのように保護主義を掲げることはできない。それならセーフティネットの強化を通じて中産層崩壊を防ぎ対立を減らしていくための政派・階層を超越した全国家的レベルの方法を模索しなければならない。福祉拡充のために金がかかるのは避けられないが、この財源をどのように調達するのかに対する議論も始めなければならない。全体の1%である大企業が法人税の80%以上を出す状況で大企業・高所得層の課税を強化するだけではこの問題を解決できない。
こうした面から開院を控えた第20代国会は最初の議題を二極化解消とセーフティネット強化に置くのが順序だ。当面する青年失業問題と中産層崩壊にともなう家族解体を防ぐ方策を与野党が額を突き合わせ真剣に議論しなければならないだろう。政界が中心となって青瓦台と政府・企業・労働者が参加する大討論会を開き社会的協約を引き出す産婆役になる姿を期待してみる。(中央SUNDAY第479号)