「 金持ちでつくられた政権は国家経済や庶民経済に対し平民政権よりもはるかに関心が低い。資本主義と民主主義の歴史であらわれた「金持ち政治の逆説」だ。民主政権が平民的(国民的)であるほど国家経済と国民経済をさらに発展させた理由だ。」
この解説は、隣国韓国の総選挙結果を分析するものです。しかし、アメリカ、イギリス、日本、フランス、ドイツなど先進工業国でおきている政治支配の矛盾と問題点を正確に言い当てているように思います。日本は、自民党議員の世襲、政治資金問題、政権党と大手企業などの癒着も顕著になっています。法人税率の引き下げとセットの消費税率の引き上げ、大手企業に対する研究開発費援助、富裕層への所得税率引き下げなどはまさに、政治における「金持ち政治」の実態そのものです。
[中央日報]韓国の保守はなぜこれほど無能なのか
韓国には1つの神話が存在する。「保守は有能で、進歩は無能だ」という神話だ。本当に韓国の保守は有能で、進歩は無能なのだろうか。国家運営能力を判別する核心基準は安保と経済だ。経済に限って民主化以降の保守と進歩政権の成果を客観的に比較しよう。
そうすると無能なのは進歩ではなく保守だ。無能といっても相当な無能だ。個別の政権を比較しようが保守政権の2つ〔金泳三(キム・ヨンサム)・李明博(イ・ミョンバク)〕と進歩政権の2つ〔金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)〕の平均を比較しようが、保守が上回った指標はない。進歩が有利な民生・福祉・平等指標ではなく、保守が注力する成長・輸出・外国為替・株価部門でさえ進歩政権のほうがはるかに有能だ。通貨危機も保守政権の時だった。保守が執権する時は世界経済の環境が悪かったのだと答えるならば、その問題は別に議論しなければならない。
まず保守の金科玉条である経済成長率は保守政権の平均5.15%に対し進歩政権は6.01%だ(以下、金泳三・金大中政権両方の責任と帰結されうる1998年の指標は除外。外国為替統計は98年を含む)。輸出増加率は保守10.88%vs進歩12.06%だ。外国為替保有の増加額は保守582億ドルvs進歩2420億ドルだ。外国為替保有の増加率は保守19.76%vs進歩314.81%だ。株価上昇率は保守マイナス3.94%vs進歩37.84%だ。
国民の生活にとって最も重要な1人あたりの国民総所得(GNI)の増加率は保守5.25%vs進歩12.65%だ。進歩が2倍を超える。就業者の増加率は保守1.6%vs進歩1.9%だ。最低賃金の引上げ率は保守7.15%vs進歩9.92%だ。消費者物価の上昇率は保守4.16%vs進歩2.71%だ。すべての指標が進歩の優位もしくは圧倒的優位だ。公的支出・公平・貧困・福祉・民生指数ももちろんだ。「保守有能-進歩無能」神話は完全に虚構である。
それならば重大な質問が残る。韓国の保守はなぜこれほど無能なのか。またこれほど無能な業績なのにどうして執権し続け、第1党を維持してきたのだろうか。
最初は反共主義と安保商業主義のためだ。民主・進歩・改革勢力を左傾・容共・従北・左派という烙印を押した虚偽の理念攻勢だけが成功できるならば、それによる理念の動員と支持結集のおかげで保守はあえて能力を証明する必要はなかった。実際に保守政権は執権時に経済公約を達成したことがなかった。無能を理念で隠したのだ。
2つ目、制度要因と地域要因のためだ。87年以降、総選挙で圧倒的な制度の歪曲とアンバランスのために嶺南(ヨンナム)基盤の保守政党は大統領弾劾時を除き継続して第1党だった。得票率と議席比率は違憲であるほど歪曲が大きい。大統領選挙でも嶺南出身の保守候補は100%勝利した〔敗北は忠清(チュンチョン)出身候補が唯一〕。
しかし保守の牙城である大邱(テグ)の1人あたりの地域総生産(GRDP)は盧泰愚から李明博まで全政権で全国最低だった。5つの政権でそれぞれ466万ウォン、808万ウォン、1034万ウォン、1387万ウォン、1742万ウォンで常に全国最下位だ。衝撃的だ。にもかかわらず大邱は自分たちをずっと貧しくさせる政権と政党に票を集中して投じてきた。制度の歪曲と地域主義は保守無能の基底要素だった。
3つ目、世代別の投票率の顕著な格差だ。総選挙と大統領選挙で20代・30代と50代・60代以上の投票率はあまりにも大きい格差を露呈した。2012年の総選挙と大統領選挙で30代以下と50代以上の投票者数の差は何と361万7000人と264万2000人だった。この格差は選挙結果を分けた決定的な要因だった。若者たちの投票不参加によって人生を10~20年残している世代の意志が、人生を60~70年残している世代の未来を決めてきたのだ。高齢世代の高い投票参加は、賞賛を受けるべきものだ。問題はあまりにも低い若者世代の投票率だった。
4つ目、保守政権と政党の主要人物があまりにも良い暮らしをしているためだ。彼らと進歩改革政権・政党の主要人物および一般国民の平均資産の差がものすごく大きい。今日、米国議会(534人中268人)と英国内閣(29人中23人)の半分以上が百万長者で構成されて国民の生活と不平等が悪化しているという調査結果は鋭い。ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグルリッツ氏は最初から「政治が経済ゲームの規則を決め、競技場は上位1%にとって有利に傾いている」と批判する。
金持ちでつくられた政権は国家経済や庶民経済に対し平民政権よりもはるかに関心が低い。資本主義と民主主義の歴史であらわれた「金持ち政治の逆説」だ。民主政権が平民的であるほど国家経済と国民経済をさらに発展させた理由だ。
第20代総選挙は従北・左派理念攻勢の作動不能、若者世代の若干の投票増加、一部地域の地域主義の崩壊程度でも保守の無能が報復を受けた。無能な韓国の保守を有能にさせる方法を探してみよう。まずは「韓国保守=無能」の命題に対する深層討論を展開しよう。
パク・ミョンニム延世(ヨンセ)大学教授(政治学)