goo blog サービス終了のお知らせ 

ワニと読むミステリ(コージー作家の秘密の原稿)

コージー作家の秘密の原稿 (創元推理文庫)
G・M・マリエット
東京創元社
¥1,155(価格は変わる場合があります)


Death of a Cozy Writer (A St. Just Mystery)
G.M. Malliet
Midnight Ink
¥1,229(価格は変わる場合があります)


読むと、遺産を狙う方法はさまざま。
 
(G・M・マリエット著)
 サー・エイドリアンは、ケンブリッジシャー州マナー・ハウス(古く大きな屋敷)に住むコージー・ミステリの人気作家です。4人の子ども(3男1女)がいますが、妻とは子どもが小さいときに別れています。子どもたちは独立していますが(実業家、画廊主、俳優、料理本作家)それぞれ問題を抱え、そこへエイドリアンの再婚のお知らせが舞い込みます。みんなエイドリアンの財産を当てにしているので、ここで新しい妻が出現すると相続分が減ってしまいます。それでなくとも頻繁に遺言書を書き変えて、相続人から外したり相続分を変更したりして意地悪く子どもたちの心をもてあそんでいるのですから、今後はどうなるのか、みんな気になって仕方がありません。
 マナー・ハウスにみんなが集まったところで、エイドリアンから衝撃のニュースが伝えられ、新妻が紹介されます。その夜、相続人の一人が殺害され、さらに第二の殺人が起こります。雪が降った夜で外から屋敷に押し入った形跡はなく、屋敷に滞在している人物の犯行と目されます。
 事件を担当するのはケンブリッジシャー州警察のセント・ジャスト警部。名探偵気取りのエイドリアン、その底意地の悪さに翻弄される子どもたち、さらに新妻には夫の殺人事件の容疑者になった過去があり、みんなが少しずつウソをつきます。
 誰にでも動機がありそうですが、決め手に欠け、事件は過去にさかのぼります。

 セント・ジャスト警部のシリーズの第一作目です。これはアガサ賞最優秀処女長編賞を受賞しています。
 設定されている時代は少し前、まだ携帯電話などない頃です。
 意地が悪く、子どもたちの心を傷つけて歪んだ喜びを感じながらも苦い気持ちになる老ミステリ作家。美しい妻に夢中になっている様子は老年の希望でもありそうです。無邪気に自分が事件を解決できると考えて、セント・ジャスト警部の苦笑を誘いますが、ミステリ作家を揶揄していますね。エイドリアンのミステリが、アガサ・クリスティのミス・マープル・シリーズに似ているのがちょっとおかしくて、作中でミステリのプロットがクリスティの作品に似ていると言われて自分の方がよく書けてるというところが笑ってしまいます。
 子どもたちは、売れない俳優だったり、何をやっても中途半端なプレイボーイだったり、それぞれ問題を抱え、エイドリアンの一言に大きく影響を受けるところなどはかわいそうなくらいです。
 それにしても殺人の動機のある人が多すぎて、なかなか誰と特定できません。
 エイドリアンとその家族、マナー・ハウスに住む人々、みんな過去に秘密があり、そして今に至っているところが、とてもよく描写されています。
 次の作品が期待できますね。
 
■セント・ジャスト警部シリーズ
 すでに三作目まで出版されているようです。
 二作目は、Death and the Lit Chick、三作目は、Death at the Alma Mater です。

 新しいシリーズも出版しているようです。主人公は、元MI5のスパイで今は小さな村の教区牧師をしているThomas Dunneで、最初の本は、Wicked Autumnです。ジェームズ・ボンドみたいですね。
こちらも早く翻訳されると良いです。

主人公: アーサー・セント・ジャスト(ケンブリッジシャー州警察警部)
場所:  イギリス、ケンブリッジシャー州マナー・ハウス
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(ライヘンバッハの奇跡)

ライヘンバッハの奇跡 (シャーロック・ホームズの沈黙) (創元推理文庫)
ジョン・R・キング
東京創元社


The Shadow of Reichenbach Falls
John R. King
Forge


読むと、正邪の闘いは続く。
 
(ジョン・R・キング著)
 21歳のトマス・カーナッキ(のちの幽霊狩人)は、スイスのマイリンゲンで、美しい女性アンナ・シュミットと出会い、ライヘンバッハの滝へピクニックに出かけます。滝の上では二人の男が争い、一人が滝つぼに落とされて流されてしまいます。カーナッキとアンナは落ちた男を助けますが、もう一人の男は執拗に追跡を続け、3人は必死に逃走します。落とされた男は記憶を喪失していたため、サイレンスと呼ぶことにします。サイレンスを病院に運びますが、そこは追跡していた男の配下にあり、サイレンスは電気治療器にかけられて拘束されてしまいます。
幼い日のモリアーティ教授はパブリックスクールでいじめにあいますが、逆にいじめっこを策略で撃退します。ケンブリッジ大学に進んだ彼はスザンナと出会い、彼女の稀有な才能を引き出すことになり、やがて結婚、一人の娘をえます。スザンナは、ロンドンの町を牛耳っていた犯罪組織を壊滅させるため理論を構築し、その最初のスイッチを入れると、犯罪組織は内部から崩壊を始めます。しかし彼らは報復の対象になります。
モリアーティ教授は、ロンドンの町を騒然とさせていた切り裂きジャックの正体を探るべく、娘と一緒に捜索し、ついに追いつめることになりますが、それはモリアーティ教授が悪に染まる初めにもなりました。
カーナッキ、アンナ、サイレンスは、モリアーティ教授の犯罪を食い止めようと、協力して阻止計画を実行に移します。

若き日のトマス・カーナッキと、大空白時代のシャーロック・ホームズが出会うという異色の組み合わせで、さらにモリアーティ教授の過去が語られてなぜ悪に染まることになったのかがつづられています。モリアーティ教授の幼い日からの物語はなかなかおもしろいですね。モリアーティ教授と切り裂きジャックの関係のところはなんだか納得できそうです。このあたりが一番興味深いかもしれません。
のちに幽霊探偵となるカーナッキが、いつも持ち歩く「電気式五芒星」との出会いは、気持ちの良いものではありませんが、機械は使いようで役に立つようにもなるということでしょうか。
最後はパリのルーブル美術館で壮絶な闘いになりますが、その後その闘いをめぐってカーナッキとシャーロック・ホームズの見解が違ってくるのは、二人の性格や事件解決の手法を考えるとそうだろうなと納得しますね。
ホームズの助手役ワトスンが、後半少しだけ活躍します。

■幽霊探偵
 トマス・カーナッキは、W・H・ホジスン作の怪奇現象を電気式五芒星と古文書を駆使して解決するオカルト探偵です。ホームズと同時代に書かれています。幽霊狩人カーナッキの事件簿 は、短編集です。カーナッキが事件を解決するたびに友人たちは招かれて冒険譚を聞くことになります。

 
幽霊狩人カーナッキの事件簿 (創元推理文庫)
W・H・ホジスン
東京創元社


主人公: シャーロック・ホームズ(名探偵)
     トマス・カーナッキ(のちの幽霊探偵)
場所:  ヨーロッパ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(贋作と共に去りぬ )

贋作と共に去りぬ (創元推理文庫)
ヘイリー・リンド
東京創元社


Feint of Art:: An Annie Kincaid Mystery
Hailey Lind
Signet


読むと、欲つながりは強くてもろい。
 
(ヘイリー・リンド著)
 アニー・キンケイドは画家兼疑似塗装師。サンフランシスコに小さな工房を持ちなんとか生活も軌道に乗りそうな気配です。そこへ元カレの美術館キュレーターから呼び出され、真夜中の美術館でその美術館が新しく購入したばかりのカラヴァッジョの作品を見せられます。アニーの祖父は世界的に有名な贋作師で、アニー自身も贋作をものすることができるほどの腕前で真贋を見分ける生来の才能を見込まれての鑑定を頼まれたのでした。アニーの缶手は、“贋作”。アニーが美術館を出た直後に殺人事件が起き、元カレも行方をくらましてしまいます。
 さらにアニーのところに知り合いの画商から持ち込まれた素描は、これまた贋作。ある画商が真作の素描を持ち逃げし、代わりに贋作を置いていったらしい。アニーは高額の報酬をあてにして、真作の素描の行方を追うことになります。
 アニーが疑わしい贋作師や画商の様子を探っていると、ハンサムな探偵が現れてやはり真作を探しているらしい。
 殺人事件の捜査の過程で警察に同行して美術館に行くと、カラヴァッジョの贋作は、違う贋作にすり替わっており、どうも2つの贋作が関係しているらしい。では真作はどこにあるのか。
 疑わしい人物を追っていくとまたそこには死体があり、アニー自身も真作のありかを知っているのではないかと拉致され命の危険を冒すことになります。
 美術品を所有したい欲、金銭の欲、美術界の騙しあい、などが絡まって、事件は複雑に関係していますが、だんだんと真作に迫っていきます。

 画家が探偵になるというミステリはありますが、贋作師(一応足は洗っていますが)が探偵のミステリは初めて読みました。贋作の手口が書かれていて、これはなかなか面白いです。
 アニーの周りの人々も、変わった人物やアーティストがたくさんでてきます。その中で“トランスヴェスタイト(transvestite)”というのがありますが、これは、「服装倒錯者、異性の衣服を身につけたがる人」のことです。贋作師の祖父はこの作品中では電話でしか登場しませんが、なかなかユニークな人物のようでこれからもっとでてきてほしいです。特に執筆途中の「世界的贋作師による一家言」ははたして出版されるのか気になるところです。
 アニーの大家は美術品の運搬業をしていますが、否応なしに事件に巻き込まれ犯人逮捕につながるパーティでは大変な目にあいますが、これからアニーとの関係がどうなるのか、この展開も次作では楽しみです。そして謎の探偵X氏も、本人の名乗るような探偵というわけではないようで、美術品の行方を追ってアニーとの競合か協業かは続きそうです。
 作者のWebsiteを見るとすでに4作出版されているようなので、これからの翻訳がまたれます。

■贋作つながり
 エイプリル・ヘンリーの作品にフェルメールの贋作が関係するミステリがあります。
フェルメール殺人事件

エミール・ジェンキンスのアンティーク鑑定士は疑う
は、骨董品の贋作です。

■画家つながり
ジェイニー・ボライソー作のローズ・トレヴェリアン(画家、写真家)のシリーズです。
しっかりものの老女の死
クリスマスに死体がふたつ
待ちに待った個展の夜に
ムーアに住む姉妹

主人公: アニー・キンケイド(画家兼疑似塗装師(フォーフィニッシャー))
場所:  USA、カリフォルニア州サンフランシスコ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(プラムプディングが慌てている)

プラムプディングが慌てている (お菓子探偵12)
ジョアン・フルーク
ヴィレッジブックス


Plum Pudding Murder
Joanne Fluke
Kensington Pub Corp (Mm)


読むと、ビジネスはごまかしてはいけません。
 
(ジョアン・フルーク著)
 クッキー探偵のシリーズ、第12弾。
ハンナの住むミネソタ州レイクエデンはクリスマスの準備で大忙しです。〈 クッキージャー〉のオーナー ハンナもクリスマス用の注文に加えて、〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉(クリスマスツリーやオーナメントなどクリスマス用品を売る臨時の店舗)からのクッキーの注文もあり、毎日大量のクッキーを焼いています。そこへハンナの母ドロレスが新たな問題を持ち込みます。ドロレスの親友で共同経営者キャリーの様子が変だから調べてくれないかというのです。キャリーはハンナの友人ノーマンの母でもあり、ノーマンも心配しているので、きっと調べるとハンナは約束してしまいますが、キャリーについては刑事マイクからも気になる情報を入手し、頭の痛いハンナです。
ハンナとノーマンは、〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉のオーナーのラリーから小切手を受け取るためにトレーラーハウスを訪問し、そこでラリーの死体を発見してしまいます。
ハンナたちはまたしても犯人探しのために協力し、手分けして聞き込みを開始します。
そして〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉にはなにやら疑惑の匂いがあるのを嗅ぎつけます。 
ラリーを殺したのは誰なのか、クリスマスシーズンの慌ただしい中の調査ははたしてどう展開するのでしょう。キャリーの秘密も徐々に明かされていきますが、これはちょっとほほえましいですね。

クリスマスのシーズンになると、〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉のようなクリスマス用品を売るための臨時の店舗ができるのですね。いろいろなクリスマス用品を売るだけでなく、観覧車のようないくつかの遊具も併設され、一つのテーマパークみたいになっています。これはおもしろそうです。
ハンナもツリーを部屋に飾ることになるのですが、愛猫モシェはどうもこのツリーが気に入らないようで、ハンナはツリーのてっぺんから降りられなくなったモシェを救出したりと、心配事が増えてしまいました。この問題をいかに解決するか、それはノーマンたちの力が必要でした。
作品名のプラムプディングは、クリスマスにつきもののお菓子だそうです。プラムとつくからプラムが混ぜ込んであるとかトッピングされているのかと思ったら、プラムは入っていないそうです。それでなぜプラムプディングというのかは諸説あって定かではないということで、そしてあまりおいしくないとハンナたちが会話しています。そこでハンナは頼まれておいしいプラムプディングのレシピを考えます。名付けて、“ミネソタ・プラムプディング”。このレシピは作品中にあります。これにかけるソースも2種類のレシピがのっています。ハンナはクリスマス・ディナーのデザートとしてこれを出します。ハンナの下の妹ミシェルの友人がぜひデザートだけでも参加したいというので招待しましたが、それはハンナの大学時代の苦い思い出の人でした。
次の作品では、この人物をめぐってのお話になるようです。

■既刊
 もう12巻も出版されているのですね。すでに本国では、もう2巻出ています。早い翻訳をお願いしたいですね。

チョコチップ・クッキーは見ていた
ストロベリー・ショートケーキが泣いている
ブルーベリー・マフィンは復讐する
レモンメレンゲ・パイが隠してる
ファッジ・カップケーキは怒っている
シュガークッキーが凍えてる
ピーチコブラーは嘘をつく
チェリー・チーズケーキが演じている
キーライム・パイはため息をつく
キャロットケーキがだましている
シュークリームは覗いている

主人公: ハンナ・スウェンセン(クッキー・ジャーのオーナー)
場所:  USA、ミネソタ州レイクエデン
グルメ: お菓子、クリスマスの料理など
動物:  ネコ(モシェ)
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(ディミティおばさまと村の探偵)

ディミティおばさまと村の探偵 優しい幽霊6 (RHブックス・プラス)
ナンシー・アサートン
武田ランダムハウスジャパン


Aunt Dimity: Detective (Aunt Dimity Mystery)
Nancy Atherton
Penguin (Non-Classics)


読むと、被害者の被害者が多すぎる。
 
(ナンシー・アサートン著)
 今回ロリは、夫ビルの父親が住むボストンの屋敷に3カ月ほど滞在し、双子を連れて住みなれたイギリスのコッツウォールド地方のフィンチ村に帰ってきたところです。夫ビルは弁護士としての仕事があるのでロリと双子だけがハチミツ色の小さな家に帰宅です。そこで聞いたのがフィンチ村で起こった殺人です。静かで小さな村のフィンチで殺人? およそありえない話です。殺されたのはフィンチ村に引っ越してきて間もない老女です。
 ロリは、かわいがっている青年キットが容疑者にされたことから事件解決に乗り出します。ちょうど牧師の甥がニコラスが牧師館に滞在していて、ロリとともに村の人たちから事情を聞いて回ることになりました。このニコラスがちょっとばかり魅力的な男性でロリはグラリときそうになります。どうもロリはほれっぽくて。
 いつものように頼りにするのはディミティおばさま、ロリの母親の親友だった人の幽霊です。その日の出来事や捜査の成果をディミティおばさまに報告・相談します。
 殺された老女はかなりの毒気をもっていたようで、彼女に恨みを持つ人たちが次々に現れます。犯人はこの中の誰かか?
 犯人探しというよりもいかに被害者が人の恨みをかっていたかということを明らかにしていくところがおもしろいですね。それにからめてほれっぽいロリがニコラスにだんだん惹かれていくところが合わさって、こちらの展開も気になります。ちょうど夫はまだ仕事が終わらず、アメリカにいて不在ですし。常に誰かが見ているフィンチ村では二人の行動がすでに噂のタネになっていて読んでいるとハラハラしますね。
 早朝色々な人が色々な用事で行き交う中の殺人で、時系列で追っていくのかと思うとそうでもなく、どちらかといえばそれぞれの人たちの事情を明らかにして周りの誤解を解いて正しく理解するということに力点が置かれています。
 殺人方法としては、ワニはちょっとね。これじゃ無理があるかなと思いますが、まぁ、そのあたりは割り引いて読みましょう。
 全体で311ページと読みやすい長さです。
 巻末に、「ピム姉妹の金箔付きジンジャーブレッド」のレシピあり。

■既刊
 もうすでに17作目が刊行されているそうです。翻訳はまだ6作目ですから、あと11冊はあります。まだまだディミティおばさまとロリの捜査を楽しむことができそうです。

ディミティおばさま現る
ディミティおばさま旅に出る
ディミティおばさまと古代遺跡の謎
ディミティおばさまと聖夜の奇跡
ディミティおばさま幽霊屋敷に行く

毎回ちょっとしたレシピがついています。

■幽霊つながり
 こちらも幽霊に相談しながら捜査するというミステリです。こちらは書店についた私立探偵の幽霊です。
著者は、アリス・キンバリー。
ミステリ書店(1) 幽霊探偵からのメッセージ
幽霊探偵の5セント硬貨
幽霊探偵とポーの呪い
幽霊探偵と銀幕のヒロイン
幽霊探偵と呪われた館

幽霊ばやりですね。

主人公: ロリ・シェパード(主人公)
場所:  イギリス、コッツウォールド地方フィンチ
グルメ: お菓子(ジンジャーブレッド)
動物:  なし
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(とんでもないパティシエ)

とんでもないパティシエ ダイエット・クラブ5 (RHブックス・プラス)
J・B・スタンリー
武田ランダムハウスジャパン


The Battered Body (A Supper Club Mystery)
J.B.Stanley
Midnight Ink


読むと、濃くなる恨みもあるのかも。
 
(J・B・スタンリー著)
 ダイエットクラブ〈デブ・ファイブ〉のシリーズも、もう5冊目。
 でもなかなかみんなダイエットに成功しないようです。唯一ルーシーだけが肥満解消に向かっているようですね。
 図書館長ジェイムズの父ジャクソンがお料理教室の先生のミラと結婚することになり、ジェイムズは自分の住む新居を捜し始めます。父親の新婚家庭に、こんな独身の息子は同居できないだろうということで。それと結婚式に服が着られるようにと、ジェイムズはダイエットについて栄養士に相談することにしました。
 父ジャクソンの花嫁ミラは、妹を結婚式に呼びますが、それがなんと有名なパティシエ「お菓子の女王」です。ウェディングケーキを焼くことが決まっています。
 ところがこのパティシエのポーレットは、毒舌で怒りっぽく、誰とでもかまわずケンカになり、静かな町の平安を乱す存在になります。そしてウェディングケーキの試作品を作る間もなく、死体で発見されます。
 これは殺人事件か、それとも不幸な中毒死か。

デブ・ファイブのメンバーのベネットが、〈ジョパディ!〉に出ます!
町の人たちはこぞってベネットの応援をしますが、最後の最後でベネットは大変な決断をしてしまいます。
ジェイムズは元恋人マーフィーが書いたミステリが出版されるので、ユーツでたまりません。それにクリスマスを前にして、図書館から人気者のぬいぐるみグロウスターが誘拐され、身代金の要求がきてしまいます。
ジェイムズはマーフィーと別れて、またルーシーと付き合いたいと思うのですが、そこへ前妻のジェーンが現れてジェイムズの人生を複雑にしてしまいます。
巻末に、いくつかのお菓子のレシピあり。

■既刊
 
前作品はバーベキュー大会が舞台でしたが、今回はクリスマス。ご馳走が並んでダイエットにはつらい時期ですね。

ベーカリーは罪深い
アイスクリームの受難
料理教室の探偵たち
バーベキューは命がけ

主人公: ジェイムズ・ヘンリー(図書館長。〈デブ・ファイブ〉のメンバー)
場所:  USA、ヴァージニア州クィンシーズ・ギャップ
グルメ: お菓子
動物:  なし
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(フェルメールの暗号)

フェルメールの暗号 (ヴィレッジブックス)
ブルー・バリエット
ヴィレッジブックス


Chasing Vermeer
Blue Balliett
Scholastic Prof Book Div


読むと、偶然が重なると意味がある。
 
(ブルー・バリエット著)
 ペトラとコールダーはクラスメイト。ハッセー先生の授業が大好き。コールダーはいつもペントミノのピースを持ち歩いています。
 ハッセー先生の授業でフェルメールを学んだところで、移送中のフェルメールの作品「手紙を書く女」が盗まれます。
 ペトラとコールダーは、盗まれたフェルメールの捜索を始めるのですが、ちょっと危ない目にもあって、ドキドキものです。
 登場人物がとても魅力的な人ばかりですね。ハッセー先生の授業はとてもユニークで、こんな授業だったら楽しいでしょう。でもずいぶんと自分たちで考えないといけないから、学校から帰ってもうんと勉強しないといけないかも。シャープさんはとてもお年寄りで、とても怖いです。シャープさんのお茶に招かれたペトラとコールダーは緊張してお茶をいただきます。いろいろと珍しいものがあるので、つい周りを見回してしまいますが。
 コールダーにはトミーという親友がいて、今はニューヨークに引っ越してしまいました。
 2人は、暗号を使って手紙のやりとりをしていますが、この手紙の暗号を解くことができますか。
 子ども向けということになっていますが、大人も文句なく楽しめます。良い作品だからでしょう。

■フェルメールつながり
 フェルメールって、ちょっと謎めいていますね。もうひとつフェルメールにまつわる作品を思い出してしまいました。
 フェルメール殺人事件
 こちらは相続した絵がフェルメールの贋作かどうかで事件が進んでいきます。

 ミステリ中で盗まれたフェルメールの作品「手紙を書く女」は、ワシントンのナショナルギャラリーにあります。日本にも来たことがありますね。

主人公: ペトラ・アンダリー(美術館と本が大好きな女の子)
コールダー・ピレイ(暗号やパズル好きの男の子)
場所:  USA、イリノイ州シカゴ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(エッジウェア卿の死)

エッジウェア卿の死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房


The Complete Christie: An Agatha Christie Encyclopedia
Agatha Christie
Pocket


読むと、似せても現れます。
 
(アガサ・クリスティ著)
 エッジウェア卿の夫人は美貌の舞台女優ジェーン・ウィルキンスンです。二人は別居状態でジェーンは離婚を望んでいましたが、なかなか思うように進まず、ポアロに仲介を依頼します。ある日、エッジウェア卿が書斎で殺されているのが発見されます。第一の容疑者はジェーンですが、彼女には晩餐会に出席しておりたくさんの人がそれを見ているという鉄壁のアリバイがあります。それに離婚も整いそうになっていたので殺す理由が見つかりません。では財産狙いの甥の仕業なのか。エッジウェア卿に会いに来た人は誰なのか。
動機も機会もある人物はなかなか見つからず、また殺人の手口もはっきりせず、ジャップ警部の捜査は難航します。
さすがにクリスティですね。アリバイ崩しにはドキドキするような緊張感があります。徐々にいろいろな出来事が組み合わさって、犯罪の絵を完成させていきます。
 随所に手がかりがありますが、あまりにも巧妙に提示されているのであっさりと見逃してしまいます。ポアロの説明で初めてそれと気づくのはくやしいような気もしますが、それよりも実によくできたミステリと感服する気持ちのほうが強いです。
 クリスティならば何回読んでも楽しめます。

主人公: エルキュール・ポワロ(私立探偵)
場所:  イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(蘭追い人、幻の貴婦人をさがす)

蘭追い人、幻の貴婦人をさがす (ヴィレッジブックス)
ミシェル・ワン
ヴィレッジブックス


Deadly Slipper: A Novel of Death in the Dordogne
Michelle Wan
Doubleday


読むと、美しい蘭には昆虫をだます巧妙なテクニックがあります。
 
(ミシェル・ワン著)
 蘭が重要な手がかりになるミステリです。
 マーラはインテリア・デザイナーで19年間行方不明になっている双子の姉ベディを捜しています。最後に目撃されたのはフランスの南西部ドルドーニュで、マーラはそこに移住して姉を捜す決心をします。手がかりは姉の残したカメラに写っていた蘭。蘭の好きだったベディはいくつかの蘭を写していましたが、その花の跡をたどればベディにいきつくのではと、蘭愛好家で造園業のジュリアンに助けを求めます。失踪人の捜査にはちょっと気の進まないジュリアンですが、写真の中の一枚にとても珍しい蘭があるのを発見し、それを見つけようとマーラに協力することにします。蘭を求めて山の中を右往左往するマーラとジュリアンですが、二人に危機が迫ります。
 とにかく蘭のウンチク満載です。種類によって花の咲く時期、育つ環境などさまざまに違うので、その蘭にあった生育環境を求めて森を歩くのですが、道もないところなので迷ってしまいますね。
 マーラの飼い犬ジャズ、ジュリアンの近所の犬エディスも、なかなか重要な役割を果たします。
 ドルドーニュ地方の人たちのみなユニークで、そういう村の人たちの行動も楽しく読めます。手がかりを発見したところで殺されそうになる郵便配達人。おいしい料理が自慢のビストロの夫婦。一緒にいるのが長くなると我慢できなくなってケンカして別れてはまたよりを戻す蘭愛好家とその恋人。壮大なお城に住みながらも破産寸前で遠くで働く息子だけが頼りという少々精神に異常をきたしていそうな領主夫妻。その近くに住み、異様な外見と行動で恐れられている母と息子。
 犯人はその存在が知れたところで、あー、これが犯人ねとわかってしまうのはなぜでしょうか。
 蘭の花の香りが漂ってきそうなミステリです。

■造園業つながり
 ローズマリー・ハリス著の造園業を営むポーラ・ホリデーが主人公のミステリです。庭園修復作業中に赤ん坊のミイラを発見します。
事件現場は花ざかり

 あまり造園関係のミステリは読んでないですね。

主人公: マーラ・ダン(カナダ人のインテリア・デザイナー)
ジュリアン・ウッド(蘭愛好家、造園業を営むイギリス人)
場所:  フランス、ドルドーニュ県
グルメ: なし
動物:  イヌ:ジャズ(マーラの飼い犬)
エディス(近所の農場の飼い犬)
ユーモア: 小
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(ウェディングケーキにご用心)

ウェディングケーキにご用心 カップケーキ探偵1 (RHブックス・プラス)
ジェン・マッキンリー
武田ランダムハウスジャパン


Sprinkle with Murder (Cupcake Bakery Mystery)
Jenn McKinlay
Berkley


読むと、恨みを出す人隠す人。
 
(ジェン・マッキンリー著)
 カップケーキ探偵のシリーズ第1弾です。
 メルとアンジーは〈フェアリーテイル・カップケーキ〉の共同経営者。テイトはその出資者で、3人は幼なじみで親友です。店を開いたばかりですが、商売敵の〈コンフェクションズ〉のオーナーがさかんに様子を探りにきています。一日に何度も店の前を通るので、メルもアンジーもあきれ顔。
 テイトがファッションデザイナーのクリスティーと結婚することになり、メルたちはウェディングケーキの作成を頼まれます。二人ともクリスティーを好きになれず、結婚に賛成しかねていますが、頼まれればしかたなくウェディングカップケーキのデザインを考えています。
 試作のカップケーキができあがり、感想を聞こうとクリスティーを訪ねていったところで、メルは死体と遭遇してしまいます。メルは容疑者にされ、テイトも疑われ、容疑を晴らそうとメルとアンジーは協力して聞き込みを始めますが、被害者に恨みを持つ人が多すぎてなかなか犯人を特定することができません。
 
 メル、アンジー、テイトの3人の親友が助けあいながら犯人捜しをするというのはなかなかおもしろいです。3人は古い映画が好きで映画の中のセリフをたくさん引用していますが、みなさんどのくらいわかるでしょうか。
 カップケーキを積み上げてウェディングケーキにするのが今はやっているらしいですが、いったいどんな感じにできあがるのでしょうか。
 巻末にカップケーキのレシピがあります。いろいろなフロスティングがあっておいしそうですが、カロリーも高そうですね。
 自分の好きなカップケーキを食べながら気楽に読むのがよいでしょう。

■お菓子の探偵
 最初に思い出してしまうのは、ジョアン・フルーク作〈クッキー・ジャー〉のハンナ・スウェンセンのシリーズですね。こちらはクッキーのお店です。
 ファッジ・カップケーキは怒っている
 その他、シリーズはすでに11作出ています。

こちらは下宿屋のシリーズですが、いつもお菓子コンテストで競争しています。リヴィア・J・ウォッシュバーン作です。
かぼちゃケーキを切る前に

主人公: メラニー(メル)・クーパー(〈フェアリーテイル・カップケーキ〉の経営者)
場所:  USA、アリゾナ州スコッツデール旧市街
グルメ: カップケーキ
動物:  なし
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(感謝祭の勇敢な七面鳥)

感謝祭の勇敢な七面鳥 (創元推理文庫)
レスリー・メイヤー
東京創元社


Turkey Day Murder (Lucy Stone Mysteries)
Leslie Meier
Kensington Pub Corp (Mm)


読むと、利害がからむとねぇ。
 
(レスリー・メイヤー著)
 ルーシー・ストーンのシリーズ第7弾だそうです。もう7冊目とは早いものですね。
今回は感謝祭の季節です。
大学に入学して家を離れている長男のトビーが、感謝祭に帰ってくるというので(しかも友人を連れて)ルーシーはその準備で大忙しです。週刊新聞『ペニーセイヴァー』の記者としての仕事もあり、町の行政委員会の聴聞会にも取材に行かないといけません。ニワトリを大量殺戮したとして、カート・ノーランの飼い犬カジョーが裁かれようとしています。いつになく厳しい内容になりそうな聴聞会の成り行きは、飼い主のカートが先住民であることが関係しているようで、ルーシーは義憤にかられます。行政委員会の会員についてもいままで書かないでいた実態をついに記事にすることを決意します。これでルーシーの町での立場はあまりよくないことになりそうです。
先住民の部族として認定を受けようとしているメティニカット族の人々は、認定だけにとどまらず町にカジノを建設しようとしています。しかし建設をめぐっては部族の間でも賛否が分かれるようです。
だんだんと意見の衝突が激しくなってきたところで、反対意見を表明していた人物が殺されます。
静かな町だったティンカーズ・コーヴにカジノは建設されるのでしょうか。
今回は感謝祭の料理が満載です。伝統的な感謝祭のメニューは、なかなかおいしそうです。
長男トビーの帰省は、大学1年生の男の子ならこんなものかなと、思い当たる人も多いかもしれません。
空の巣症候群のルーシーはイヌを飼うことになってしまいますが、なかなか個性的なイヌのようで、これからの活躍が期待できるかもしれません。
アメリカの先住民族のあり方とか、訳者あとがきも非常に参考になります。
小さな町の感謝祭の過ごし方が描かれていて、アメリカの伝統を垣間見ることができます。
 
■既刊
 もう6作品が翻訳されています。ルーシーの家族の変遷が見えます。

 メールオーダーはできません ← 通販会社の経営者が自殺します
トウシューズはピンクだけ ← バレエの発表会です
ハロウィーンに完璧なカボチャ ← ルーシーの夫が修復した屋敷が全焼し、そこから死体が発見されます
授業の開始に爆弾予告 ← ルーシーの娘が通う学校に爆弾予告があります
バレンタインは雪あそび ← 図書館の理事になったルーシーはそこで死体を発見してしまいます
史上最悪のクリスマスクッキー交換会 ← ルーシーの家で開くことになったクリスマスクッキー交換会はさんざんな結果に終わります

 ずいぶんと事件がありましたね。
■主婦探偵つながり
 主婦探偵を考えてみると、ジル・チャーチルのジェーン・ジェフリーが近いかも。
 飛ぶのがフライ
カオスの商人
眺めのいいヘマ
こちらも長く続いてます。

アイアレット・ウォルドマンのジュリエット・アップルバームも子育て中。
マタニティ・ママは名探偵 
そういえばこのシリーズはどうなっているのでしょう。その後の翻訳がでていませんね。

主人公: ルーシー・ストーン(ミステリ好きの主婦)
場所:  USA、メイン州ティンカーズコーヴ
グルメ: 感謝祭の料理
動物:  イヌ:クードー(またはカジョー)
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(不変の神の事件)

不変の神の事件 (創元推理文庫)
ルーファス・キング
東京創元社


読むと、関係者ならば知っている。
 
(ルーファス・キング著)
 1936年に刊行されたミステリです。
 ジェニーは恐喝にたえられなくなり自殺してしまいます。翌年、ジェニーの夫や家族たちは恐喝者と接触できると、話し合い、もみあっているうちに恐喝者が死んでしまいます。激しく身をうちつけたときに心臓発作を起こしたらしい。彼らは警察の手を逃れようと死体を遠くまで運んで行きますが、その途中に見とがめられ、すぐに警察に通報されてしまいます。さまざまに考えて逮捕を逃れようとしますが、警察の追及が迫ってきます。しかし、捜査の過程で死因が当初予想されたものでないことがわかると、事件は思わぬ展開を見せていきます。
大がかりな逃走劇の最中にまた殺人が起きますが、自分たちの中に殺人者がいるのかと、家族や友人を疑いの目で見るようになり、よりいっそう緊張が増してきます。
 必死に逃げるジェニーの家族たち、それをどこまでも追っていくヴァルクール警部補。
 最後はヴァルクール警部補の見事な推理が冴えます。
 読み終わると、なるほどーとうなります。
 いろいろと隠ぺい工作をして、自分たちは大変にうまくやっていると思っているところがおかしみを誘います。人相を隠そうとして、絶対これならバレないと自信を持って変装しているのですが、やり過ぎて人の記憶にしっかり残ってしまったり、誰にも聞かれていないと思った会話が筒抜けだったり、どこかであったような感じで笑ってしまいます。
 逃走の間に、ジェニーの夫、家族、友人たちのこれまで見えなかった性格や感情が現れてきて、ちょっと恐ろしかったりほろ苦かったり、だんだんと登場人物に親しみを覚えてきます。このまま逃走が成功してほしいような、犯罪者として捕まってほしいような、引き裂かれた感情に悩まされ、先をさきをと読んでしまいます。
 こういうミステリがおもしろいですね。
 ルーファス・キングの作品がもっとたくさん出版されることを望みます。これまで読めなかったなんて、なんともったいないことでしょう。
 でも、これからたくさん読めるなら、大きな楽しみが残っていたということでそれは大変なよろこびです。
 
■1930年代のミステリ
 1930年代に刊行されたミステリ、または1930年代に設定されたミステリというのは結構たくさんありますね。舞台設定に良い時代なのでしょうか。
 予期せぬ夜 ← エリザベス・デイリイ。避暑地で莫大な財産を相続した青年が死体で発見されます
 手袋の中の手 ← レックス・スタウト。女性探偵ドル・ボナーです。
 苦いオードブル ← レックス・スタウト。ドル・ボナーが探偵事務所を経営しています。
 ヒンデンブルク号の殺人 ← マックス・アラン・コリンズ。ドイツの飛行船ヒンデンブルク号で殺人が起こります。
 ロジャー・マーガトロイドのしわざ ← ギルバート・アデア。密室殺人です。
 ライノクス殺人事件 ← フィリップ・マクドナルド。ゲスリン大佐のシリーズです。
騙し絵 ← マルセル・F・ラントーム。結婚披露の日にダイヤモンドが消えます。
 
 まだいろいろありますね。

主人公: ヴァルクール(警部補)
場所:  USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(今をたよりに)

今をたよりに (創元推理文庫)
ジル・チャーチル
東京創元社 ←Amazonで購入できます


Who's Sorry Now?: A Grace & Favor Mystery (Grace & Favor Mysteries)
Jill Churchill ←Amazonで購入できます
Avon


読むと、誰かが見ている。
 
(ジル・チャーチル著)
 ブルースター兄妹のシリーズももう第6弾だそうです。いつのまにかこんなに話が進んでいたのですね。
 今回は、1933年4月から5月にかけての事件です。
 ブルースター兄妹の住むグレイス&フェイヴァーの屋敷では、植え込みを整理することになり、何でも屋のハービンジャー兄弟に作業を頼むことになります。兄弟が買ったばかりのチェーンソーで伐採し、木を引っこ抜くと、地面の中から白骨死体が発見されます。病理学者と人類学者が呼ばれ、いつごろの骨なのかなど調査が始まります。
 町には、ドイツからの引揚げ者のクルツ氏が仕立屋を開業しますが、店を開いた直後に赤ペンキで鉤十字が描かれたり、店に放火する試みがなされたりと、不穏な動きがあります。
 ロバート(ブルースター兄)は、ふとしたきっかけから町の郵便事情の改善に乗り出します。町議会の承認を得るために、郵便仕分けの作業場所の設計書を作ったり、見積りをとったりと、奮闘しています。
 この計画が実現したら仕分けの作業を請け負ってもらおうと思っていた駅のポーター、エドウィンが殺されてしまいます。善良で人畜無害のエドウィンがなぜ殺されなければならないのか。まったく殺人の動機がみつからず、警察署長のウォーカーは捜査に行き詰ってしまいます。
 今回はロバートの活躍が中心で、妹のリリーは本を読んでいることが多いです。
 ちょうどドイツではヒトラーが台頭し、外国人の出国が規制されるころで、そういうことが及ぼす影響もクルツ氏をめぐる事件で現されます。
 グレイス&フェイヴァーの下宿人たちは相変わらずですが、新たな下宿人が加わります。警察署長のウォーカーです。大きな屋敷なので、まだ空き部屋はありそうですね。
 それほどの謎解きはないので、1933年ころのアメリカの街ヴォールブルグの人たちの生活がどういうものだったのか、楽しみましょう。
 グレイス&フェイヴァーの屋敷からは兄妹の大伯父が隠していたものが見つかります。まだこの屋敷には謎がありそうな気配ですね。
 
■シリーズのその他
 グレイス&フェイヴァーのシリーズは、あと5冊あります。
   風の向くまま
   夜の静寂に
闇を見つめて
愛は売るもの
君を想いて

 ジル・チャーチルのもう一つのシリーズは、主婦探偵ジェーン・ジェフリーが探偵役です。
   忘れじの包丁
地上より賭場に
豚たちの沈黙
エンドウと平和
   飛ぶのがフライ
カオスの商人
眺めのいいヘマ

主人公: リリー・ブルースター(妹)
ロバート・ブルースター(兄)
場所:  USA、ニューヨーク州ヴォールブルグ
グルメ: なし
動物:  イヌ:アガサ(兄妹の飼い犬)
ユーモア: 中
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(暗い鏡の中に)

暗い鏡の中に (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ
東京創元社  ←AMAZONで購入


Through a Glass Darkly
Helen McCloy
Littlehampton Book Services Ltd ←まだAMAZONに出品があるようです


読むと、ほんとうに見たと言えるのか。
 
(ヘレン・マクロイ著)
 ベイジル・ウィリング博士(精神科医)が探偵役のミステリです。1950年刊行。
 絶版になっていたので、もう読めないのかととても残念に思っていたのですが、新訳で登場ということで大変、大変うれしいです。ミステリ黄金時代の傑作がまた読めるようになってきたというのはミステリ・ファンにはありがたいことです。
 美術教師のフォスティーナはブレアトン女子学院に勤めていますが、校長から突然理由もなく解雇を告げられます。まだ勤め始めて5週間にしかならないのに。同僚でオーストリアからの亡命してきたギゼラ(ドイツ語教師)は学校の仕打ちに憤慨し、それを恋人のベイジル・ウィリング博士に伝えたところから2人による解雇の真相究明が始まります。
 まじめで控えめ、特にめだったところもない女性教師のフォスティーナがなぜ解雇されなければならなかったのか。メイドや生徒たちがフォスティーナに向ける恐怖の表情はなんなのか。
 天涯孤独のフォスティーナの生い立ち、そして奇妙なフォスティーナの母の遺言。ウィリング博士が調べを進めるにつれて過去から現在へのつながりが少しずつ解明されていきます。
 みんなの恐怖の目は、そこに超常現象を見たからか。
 理屈では説明できないような奇妙な出来事が続き、緊張した空気がたちこめますが、そこで女性教師が死んでしまいます。事故にも見えるのですが、その前にまたまた奇妙な目撃証言があり、他殺のようにも見えますが、容疑者と目される人物は遠く離れた場所にいることが確認され、ますます謎は深まるばかり。
 深まりゆく緊張感がたまりませんね。何かが起こるはず、それはどういう風に起こるのか、知りたい気持ちがどんどん膨らんで、とてもページをめくるのがもどかしいです。
 ベイジル・ウィリング博士による謎解きを知ってみれば、あちこちに張り巡らされた伏線に、『そういえばあの時誰それはこう言っていたな』と、見事にヘレン・マクロイにしてやられたのを悔しさ半分の満足感で味わうことができるでしょう。
 それにしても、怖い話です。夜、暗くしたくないですね。
 
■その他のヘレン・マクロイ
 次々とヘレン・マクロイの本が翻訳されて出版されるのは実にうれしい限りです。
   幽霊の2/3  ← 人気作家が殺されます。ここではベイジルとギゼラは結婚しています。
   殺す者と殺される者 ← ハリーの身の回りで起こる奇妙なできごと。
 どれもすばらしいです。
 未翻訳や絶版になったものなどまだ多数の著書があるので、ぜひすべてを読めるようにしていただきたいです。
 ミステリ黄金時代の作品は、珠玉のものばかりで、時代の変化などからなんの影響もうけないようです。息を詰めて読んでしまいそうです。
 その他。
家蝿とカナリア (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ
東京創元社
ひとりで歩く女 (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ
東京創元社
読後焼却のこと (ハヤカワ・ミステリ 1387)
ヘレン・マクロイ
早川書房



主人公: ベイジル・ウィリング博士(精神科医)
場所:  USA
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ワニと読むミステリ(ロザムンドの死の迷宮)

ロザムンドの死の迷宮 (創元推理文庫)
アリアナ・フランクリン
東京創元社  ← AMAZONで購入

The Death Maze: Mistress of the Art of Death 2
Ariana Franklin
Bantam Books (Transworld Publishers a division of the Random House Group) ← AMAZONで購入


読むと、裏切りは身近に。
 
(アリアナ・フランクリン著)
 12世紀のイギリスを舞台にしたミステリです。
 ヘンリー二世の時代です。
ロザムンドはヘンリー二世の愛妾で、オックスフォードシャーのワームホールド塔に住んでいます。そこは迷路に囲まれて人を寄せつけない迷宮です。厳重に守られているかにみえたロザムンドが、毒殺されてしまいます。ロザムンドが大好きというキノコ料理の中に毒キノコがしのばせてあったのです。
まだ生まれて間もない子アリーと楽しく過ごしていたアデリア(女医)は、ロウリー司教(アリーの父親)の目迎えにより、この殺人事件の捜査のため、ワームホールド塔に行くことになります。
ロザムンド殺害の第一容疑者は、幽閉されている王妃のエレアノールですが、幽閉から脱出して行方がわかりません。このままでは、王と王妃との間の内乱が起こってしまいそうです。状況から考えて王妃の仕業とはおもえないロウリー司教は急いで真犯人を捜そうとします。
寒い冬です。川も凍りついています。
アデリアたちが滞在先となるゴッドストウ女子修道院に着こうとするときに、矢で射抜かれた死体を発見します。まだ若い男性は誰で、なんのために殺されなければならなかったのか。
殺人事件は、大きく2つにわかれます。

ロザムンドには献身的な家政婦デイカーズが死後もつき従っていますが、ロザムンドを守ろうという意志は異常な激しさをもっています。
ゴッドストウ女子修道院に乗り込んできた王妃エレアノールの部隊は思惑をことにする2つのグループに分かれ、なにかと対立しています。
とにかく長い。文庫で500ページ以上。ぎっしり詰まっています。
ワニは、読んでいるうちに初めの方の話を忘れてしまいました。
12世紀とはこういう時代だったのかな、と歴史小説の好きな人は大いに楽しめるでしょう。

■キドリントンつながり
 この作品の中に、“キドリントンのタルボット”なる人物が登場するのですが、これでコリン・デクスターのミステリを思い出してしまいました。作品同士、なんの関連もありませんが。
 まだAMAZONで購入できます。コリン・デクスターは長く読んでないですね。面白いのに、ちょっと残念です。

キドリントンから消えた娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
コリン・デクスター
早川書房


主人公: ヴェスーヴィア・アデリア・レイチェル・オルテーゼ・アギラール(アデリア)(医師)
場所:  イギリス
グルメ: なし
動物:  イヌ:ウォード(アデリアの飼い犬)
ユーモア: 小


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ 次ページ »
 
 
<script async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"></script> <script> (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); </script>