海外ミステリ専門書店。特に、イヌ、ネコ、その他の動物が活躍するのが好き。グルメも紹介。
ミステリ専門書店(翻訳もの限定)
ワニと読むミステリ(犯人捜しはつらいよ)
![]() | ピザマンの事件簿2 犯人捜しはつらいよ |
L・T・フォークス | |
ヴィレッジブックス |
![]() | Lights Out: A Working Man's Mystery |
L.T.Fawkes | |
Signet |
読むと、痴情の糸はどう広がるのか。
(L・T・フォークス著)
ピザ屋〈カーロ〉でデリバリーをしているテリー・サルツのシリーズ2作目です。
ワニのお気に入り。
テリーは、ダニー(屋根職人)、ジョン(新人警官)とトレーラー・ハウスで同居しています。ある朝トレーラー・パーク内で銃声がします。テリーたちが駆けつけてみると、男が1人死んでいて、そばにはテリーの妻メリールーが銃を持って立っているのが発見されます。メリールーはへべれけに酔っぱらっていて支離滅裂なことを言っています。男女間の痴情のもつれによる単純な犯罪かと思われましたが、最初犯人と目されたメリールーはいくらバカ女とはいえ犯罪を犯すような女じゃない。離婚届提出まぎわの夫婦ですが、テリーはメリールーの無実を信じています。
テリーたちは、自分たちでこの犯罪の真相を探ろうと、仲間を動員して聞き込みを始めます。
テリーとその仲間たちがなんともいえず良いですね。
ピザ屋のカーロは経営者が変わって、とても働きにくくなってしまいます。誰もかれもむっとして、不満が爆発しそうです。テリーたちがカーロを辞めてしまったら、ピザマンの事件簿という題はあわなくなってしまいますね。
元は大工だったテリーは、今回はスミティのバーの改装に精を出しています。だんだんできあがっていく工程が読んでいて楽しいです。シャンデリアを吊るすのはとても難しいのですね。
男3人で住むトレーラー・ハウスはどんな惨状だろうと恐ろしい気がしますが、予想に反してとてもきちんとした生活のようです。外出から帰ったら、みんなちゃんとコートはコート掛けにかけます。ジョンは料理が上手なので週に一度は素敵なディナーを友人たちも一緒に楽しんでいます。
テリーたちが食事に集まる〈ブルースター〉もとても気持ちが良さそうで、一緒にモーニングセットの4番を注文してメアリーにコーヒーのお代わりをついでもらいたいです。
感謝祭のパーティも楽しそうです。
このシリーズは、あと1つ“Early Eight”がありますが、その後はまだないようです。
続けてほしいシリーズなのに。
■既刊
これまでに1冊出版されています。
デリバリーは命がけ
テリーがデリバリーの仕事にありついたピザ屋で同僚が殺されます。
主人公: テリー・サルツ(ピザマン。本業は大工)
場所: USA、オハイオ州スペンサー
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(スリー・パインズ村の無慈悲な春)
![]() | スリー・パインズ村の無慈悲な春 (RHブックス・プラス) |
ルイーズ・ペニー | |
武田ランダムハウスジャパン |
![]() | The Cruellest Month |
Louise Penny | |
Sphere |
読むと、裏切りは美しい仮面をかぶっている。
(ルイーズ・ペニー著)
アルマン・ガマシュ警部のシリーズ3冊目です。
スリー・パインズ村は、家に鍵をかけないくらい静かで平和な村です。いまはイースターの季節。みんなタマゴを隠しています。
オリヴィエとガブリの経営するB&Bに、占い師のジャンヌが休暇で訪れますが、ガブリに説き伏せられて降霊会を行うことになります。それが不満足な結果におわると、みんなは旧ハドリー邸でもう一度降霊会を行うことにします。旧ハドリー邸は村で唯一邪悪なところと思われて近づく人はまれです(旧ハドリー邸でのできごとについては、1作目のスリー・パインズ村の不思議な事件 を参照してください)。そこでの降霊会で、村の住人マドレーヌが恐怖のあまり亡くなります。しかし、それは薬物が投与された結果のようです。
捜査にあたるのはおなじみのガマシュ警部。憎まれもののニコル刑事も捜査班に参加します。今回もいらないことを言ってグループの和を乱すようなことをしますが、これにはわけが。
殺されたマドレーヌは美人で明るくて誰からも好かれていたようで、なぜ死ななければならなかったのか殺人事件の捜査は難航します。
さらに、ガマシュ警部の個人攻撃をするような過激な記事が新聞に載り、それがガマシュの子供たちにも害を及ぼすようになり、ガマシュは警察を辞職するところまで追いつめられます。信頼していた人の手痛い裏切りが発覚し、ガマシュにとっては人生の大きな出来事となります。
画家のクララ・モローに画商からコンタクトがあり、ついにクララの作品が世に認められるかもしれません。しかしそれには産みの苦しみが伴います。芸術家は苦しいですね。
事件と、ガマシュへの陰謀と、両方が進んでいくので、600ページ以上もあるような結構長い作品ですが、中だるみすることもなくどんどんと読み進んでしまいます。
ただ、登場人物リスト、これはもうちょっと充実させてほしいですね。スリー・パインズ村の住人は多くないので、もう少し細かな記述が望まれます。
■既刊
これまでに2冊出版されています。
スリー・パインズ村の不思議な事件 ← 感謝祭の週末、老婦人が矢で殺されます
スリー・パインズ村と運命の女神 ← クリスマス直前のカーリングの試合中に女性が感電死します
シリーズ7冊目が8月30にUSとカナダで発売されるそうです。予約可。
![]() | A Trick of the Light (Chief Inspector Gamache) |
Louise Penny | |
Minotaur Books |
主人公: アルマン・ガマシュ(ケベック州警察殺人課警部)
場所: カナダ、ケベック州
グルメ: なし
動物: イヌ、数匹
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(いたって明解な殺人)
![]() | いたって明解な殺人 (新潮文庫) |
グラント・ジャーキンス | |
新潮社 |
![]() | A Very Simple Crime |
Grant Jerkins | |
Berkley Trade |
読むと、その人の行動は性格によります。
(グラント・ジャーキンス著)
グラント・ジャーキンスのデビュー作です。
会社役員のアダムが愛人との旅行から帰宅すると、頭をクリスタルの灰皿で割られた妻が死んでいるのを発見します。傍らには知的障害を持つ息子のアルバート。過去にも灰皿で同室の少年を殺害したことがあることから事件は単純なものと検察は判断しますが、それに反する現場状況をつきつけたのは、下級検事補(扱うのは交通法違反のみ)レオ。事件は夫であるアダムの犯行であるとされます。
弁護するのはアダムの兄で弁護士であるモンティ。まれにみる美貌を武器に数々の裁判で勝ちをおさめています。
アダムと妻レイチェルのなれそめから結婚生活まで語られますが、少し異常かもしれません。
さらに両親を早くに亡くしたモンティとアダムの少年時代の出来事など、どの話も引き込まれるような感じです。
この事件解決に大きな役割を果たすのは、将来を約束されていながら少女連続殺人事件で失敗してしまい、今は下級検事補の地位に甘んじるしかないレオです。レオの性格が事件の行方に大いに関係しますよ。
最後は法廷での駆け引きなど、ペリー・メイスンを思い出させるようなところもあります。
これからどうなるのか、知らず知らずに速読状態になってしまっていました。それだけストーリーに引き込まれてしまいます。
訳者あとがきによると、この処女作はあるコンテストに入賞したことで出版への道が開けましたが、内容が暗すぎる、肩入れしたくなる登場人物がいないといったことを理由に、出版を何社からも断られたそうです。それが刊行とほぼ同時に、脚本ニコラス・カザン、監督バーベット・シュローダーの『運命の逆転』コンビで映画化の話が進行しはじめたということです。
映画化されたら見てみたいです。
次回作は南部色を意識したものだそうです。アトランタらしい風景がでてくるかもしれません。どのように描かれるのか、今から楽しみです。
主人公: アダム・リー(会社役員)
場所: USA、ジョージア州アトランタ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(首なし騎士と五月祭)
![]() | 首なし騎士と五月祭 (創元推理文庫) |
ケイト・キングズバリー | |
東京創元社 |
![]() | Eat, Drink, and Be Buried: A Gourmet Detective Mystery |
Kate Kingsbury | |
Minotaur Books |
読むと、愛憎は変わるもの。
(ケイト・キングズバリー著)
ペニーフット・ホテルのシリーズ4作目です。
今回は、ホテルの常連客フォーテスキュー大佐が〈ジョージ&ドラゴン〉亭で酔っぱらっての帰り道、恐ろしいものを見てしまうところから始まります。大佐が道に迷ってうろついていると、首なしの騎士が馬に乗り、猛然と大佐めがけて突っこんできます。間一髪で難を逃れた大佐が、やれやれとさまよっていると、今度はメイポールにからまった女の死体を見てしまいます。ホテルに帰ってからセシリーたちに昨夜の悪夢のような出来事を話すのですが、日ごろから少々常軌を逸している大佐のこと、誰も理解しません。
が、宿泊客の一人から、昨夜妻が帰ってこなかったとの訴えを聞いてからは、セシリーはもしやと気になって仕方ありません。心配は現実となり、犯人はこのあたりに住み着いたジプシーではないかと疑われますが、それに納得のいかないセシリーは独自に調査を始めます。
時代設定は1907年、五月祭が間近な季節です。
メイポールの回りをまわるダンスを村の娘たちに教え込もうというフィービ(ホテルの催しもの担当で、牧師の母)の苦労は並大抵ではありません。いくら教えてもリボンがからまってしまいます。このダンスはずいぶんと難しいのですね。
前作マクダフ医師のまちがった葬式でホテルの厩番頭イアンと結婚したガーティは妊娠してうれしいはずですが、イアンの秘密がほころんで、二人の仲はどうなってしまうのか、とても気掛かりな状況になってしまいます。
ホテルの宿泊客の殺人事件もどう展開するかおもしろいですが、ホテルの従業員や村の人々の動静も見逃せませんね。
■既刊
これまでに3冊出版されています。
ペニーフット・ホテル受難の日 ← 宿泊客の婦人が墜落死します
バジャーズ・エンドの奇妙な死体 ← 灯台建設の現場監督が不審死します
マクダフ医師のまちがった葬式 ← マクダフ医師の葬儀でとんでもない事件が発生。柩のなかにいたのはドクターではなく、見知らぬ若い男で、心臓を刺されて殺されていました
主人公: セシリー・シンクレア(ペニーフット・ホテルの女主人)
場所: イギリス、バジャーズ・エンド
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(帽子収集狂事件)
![]() | 帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫) |
ジョン・ディクスン・カー | |
東京創元社 |
![]() | The Mad Hatter Mystery (Dr. Gideon Fell Mystery) |
John Dickson Carr | |
Harpercollins |
読むと、機会があるかが重要。
(ジョン・ディクスン・カー著)
久々にカーの本を手にとりました。はるか昔にこの本は読んでいますが、新訳になったのでちょっともう一度読んでみようかと。
時は1932年。ロンドンでは連続帽子盗難事件が話題になっています。その記事を書いているのはフリーランス記者フィリップで、高名な古書収集家のサー・ウィリアム・ビットンの甥です。サー・ウィリアム自身も帽子盗難の被害にあっています。
ポーの未発表原稿を入手したサー・ウィリアムですが、その原稿を盗まれてしまいます。原稿盗難を解決すべく招かれたフェル博士とサー・ウィリアムが面会しているとそこにもたらされたのは、甥のフィリップが殺されているのが発見されたというニュースです。霧のロンドン塔の逆賊門のところで死体は発見され、しかもサー・ウィリアムの盗まれたシルクハットをかぶせられています。
このロンドン塔が事件の現場というのが良いですね。ロンドン塔というだけで、なんだかぞくぞくします。しかも深い霧の中です。
帽子盗難事件と、ポーの未発表原稿盗難事件と、2つの盗難事件が進行して、それがどうからみあっているのか、首をひねりながら、読んでいくことになりますよ。その次が早く知りたい!と叫ぶかも。
ポーの原稿というのもミステリアスな感じを増します。
フィリップはなぜ殺されなければならなかったのか。帽子盗難事件の解決に迫っていたからか。
ポーの原稿はサー・ウィリアムの屋敷に保管されていて、外からの侵入犯の可能性が極めて低い状況にあり、犯人は家族・使用人の誰かに絞られるように見えますが、誰にも動機がないようです。
多くの謎がだんだん解き明かされて、謎と謎の関係が明らかになっていく、ミステリファンにとってはこんなに楽しいミステリはなかなかないでしょう。
さすが江戸川乱歩がミステリ黄金時代ベスト10に選んだだけのことはあります。
1933年刊行。昭和8年です。時代の古さはこのミステリの魅力には関係なし。
■ポーつながり
ポーに捧げる20の物語
スチュアート・M・カミンスキー編の、ポー生誕200周年記念アンソロジーです。
トマス・H・クック、メアリ・ヒギンズ・クラーク、S・J・ローザン、ドン・ウィンズロウなど、アメリカを代表するミステリ作家たちの書き下ろしです。
■1932年つながり
愛は売るもの
これはジル・チャーチルの御屋敷に住んでるけどお金がないリリーとロバートのブルースター兄妹のミステリです。設定が、1932年のニューヨーク州です。
主人公: ギディオン・フェル博士(探偵)
場所: イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(パイは小さな秘密を運ぶ)
![]() | パイは小さな秘密を運ぶ (創元推理文庫) |
アラン・ブラッドリー | |
東京創元社 |
![]() | The Sweetness at the Bottom of the Pie: A Flavia de Luce Mystery |
Alan Bradley | |
Bantam |
読むと、イリュージョンにはだまされてしまいます。
(アラン・ブラッドリー著)
11歳の化学大好き少女フレーヴィアのシリーズ第1作めです。ワニは、2作目の人形遣いと絞首台から先に読んでしまいました。
舞台は1950年代に設定されています。第二次世界大戦直後ですね。
フレーヴィアは化学実験に夢中で、なんでも知りたがりです。
ある朝、キッチンのドアステップにコシギの死体が置かれているのが見つかります。フレーヴィアの父はそれを見て、息をのみ、驚愕します。晩には父が何者かと口論しているのを覗き見、そして翌朝その口論の相手の男がキュウリ畑で死んでいるのを見つけます。父の古い知り合いらしいこの男は何物?
父は殺人の罪で拘束されてしまいます。フレーヴィアは父の無実を信じて事件解決に奔走します。
イギリスの田舎町のゆったりした感じが良いですね。フレーヴィアは三姉妹の末っ子ですが、上二人と何かというと仲たがいしています。この本の最初はまさしく激しい姉妹ゲンカから始まります。なんとかして仕返しをしようとするフレーヴィアが考えた方法とはなんでしょう。
ケンカをしながらも助けたりするところが家族なんでしょうね。
この殺人事件の発端は、父の学生時代にさかのぼります。自殺したラテン語教師に本当は何が起こったのか。
フレーヴィアが父の無実を晴らそうとして一生懸命にかけまわるところはちょっとほろりとしますよ。
かじりとられたパイが事件の鍵をにぎります。そしてきわめて珍しい貴重な切手も。
2007年CWAデビュー・ダガー賞受賞作です。
作者はカナダ生まれで、イングランドには授賞式まで行ったことはなかったそうです。行ったことがないから理想的な田舎町を創造できたのかもしれませんね。
■グラディス
フレーヴィアが乗っている自転車は亡き母ハリエットのものでした。
2作目で、フレーヴィアがそれをグラディスと呼んでいるので、そのような自転車の種類ででもあるのかと思っていましたが、1作目にその名前の由来がありました。
ハリエットが、この自転車をリロンデル(つばめ)と名付けていたのを、フレーヴィアがグラディスと改名したのでした。古い三速のBSAキープフィットです。
主人公: フレーヴィア・ド・ルース(11歳の化学大好き少女)
場所: イギリス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(スタイルズ荘の怪事件)
![]() | スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) |
アガサ・クリスティー | |
早川書房 |
![]() | The Mysterious Affair at Styles (Hercule Poirot) |
Agatha Christie | |
Harper |
読むと、怪しいと思われまいとしても怪しい。
(アガサ・クリスティー著)
ポアロものです。アガサ・クリスティーのデビュー作です。
1920年に刊行されました。
ここからポアロが名探偵として世に出たのかと思うと、感慨深いです。
ヘイスティングスは傷病兵となって、前線から本国に送還されています。疾病休暇をどこで過ごそうかと考えているところへ、旧友のジョンに会い、スタイルズ荘に招待されます。ジョンの母エミリーは若い男と再婚しています。スタイルズ荘に滞在するのは、エミリー、その夫、その義理の息子ジョンの夫婦、ジョンの弟、エミリーの友人、エミリーの旧友の娘、さらに近くには毒理学者がいて頻繁にスタイルズ荘に訪れています。
エミリーの再婚によってスタイルズ荘には緊張した空気がたちこめています。
そこで、スタイルズ荘の女主人のエミリーが毒殺されます。しかも密室状態で、どのような手段を用いて毒殺したのが、皆目見当もつきません。
スタイルズ荘を訪れていたヘイスティングスは、かねてからの友人のポアロがベルギーから亡命して近くに住んでいるのを知り、事件解決を依頼します。
ここでポアロ登場ですね。
スタイルズ荘に集う人たちの人間関係、利害関係がからみあう事件で、誰が犯人でもおかしくない状況です。
巻頭には、クリスティーの孫にあたるマシュー・プリチャード氏の序文があります。クリスティーがミステリを書きはじめた経緯などの話があり、ポアロの造形がどこから得られたのかもこれでわかります。
序文の中で、プリチャード氏がどう読み進んでいったか、自分の推理の仕方を書いています。
それぞれ好きな自分のやり方で事件解決しましょう。
巻末は、ミステリ評論家 数藤康雄氏の解説があり、1920年のミステリ界の状況が語られ、この後ドリシー・L・セイヤーズなどの新しい作家が誕生していくところなどミステリの歴史がわかります。
主人公: エルキュール・ポワロ(ベルギー人の私立探偵)
場所: イギリス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(ホロー荘の殺人)
![]() | ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) |
アガサ・クリスティー | |
早川書房 |
![]() | The Hollow (Poirot) |
Agatha Christie | |
Harper |
読むと、みんな犯人はわかっている。
(アガサ・クリスティ著)
ポアロものです。
アンカテル卿の屋敷ホロー荘に滞在する客人たちとその近くに住む映画女優の9人が繰り広げる愛憎物語とそこで起こる殺人事件です。ホロー荘の隣人となっていたポアロが招待されてホロー荘を訪れると、プールの端に男が1人地を流して倒れており、そのかたわらには呆然としてピストルを手にする女。最初ポアロは彼を迎えるために拵えられたつまらない殺人劇かと思い不快な感情を抱きますが、実は本物の殺人が起こったところだったのです。
屋敷に滞在する人たちが、いろいろな方向からやってきてプールに到達しますが、それぞれが直前まで単独行動をとっていて、誰にでも犯行の機会があるようです。
AはBに思いを寄せ、BはCにプロポーズして、CはDと付き合っているが結婚する気はない、Dには妻がありさらに昔の恋人が突然出現する。と、どうなるのかなぁ、この人たち、と謎解きとともに愛憎の行方も気になってしまいます。こういう巧みな状況の作り方も良いですよね。
ワニが好きなのはアンカテル卿夫人ルーシーです。とりとめのないおしゃべり、脈絡の見えない話、唐突に変わる話題にすっかり面喰いますが、それは考えているたくさんのことを断片的に口にのぼせるので聞いている方は何のことかさっぱりわからないというだけです。始まりは早朝の夫人のおしゃべりですが、そこで登場人物の性格が実によく描写されているので、ここは良く読むにしくはありません。
最後のヘンリエッタが悲しみの中から創造していくところはいいですね。
たくさんのミスディレクションがあるので、ご注意。
最初にこの作品を読んだのがいつだったのかワニは忘れてしまいましたが、再読してよかったです。
新訳もできたことだし、まだしばらくはクリスティの再読が続きそうです。
主人公: エルキュール・ポワロ(ベルギー人の私立探偵)
場所: イギリス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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