ワニと読むミステリ(贋作と共に去りぬ )

贋作と共に去りぬ (創元推理文庫)
ヘイリー・リンド
東京創元社


Feint of Art:: An Annie Kincaid Mystery
Hailey Lind
Signet


読むと、欲つながりは強くてもろい。
 
(ヘイリー・リンド著)
 アニー・キンケイドは画家兼疑似塗装師。サンフランシスコに小さな工房を持ちなんとか生活も軌道に乗りそうな気配です。そこへ元カレの美術館キュレーターから呼び出され、真夜中の美術館でその美術館が新しく購入したばかりのカラヴァッジョの作品を見せられます。アニーの祖父は世界的に有名な贋作師で、アニー自身も贋作をものすることができるほどの腕前で真贋を見分ける生来の才能を見込まれての鑑定を頼まれたのでした。アニーの缶手は、“贋作”。アニーが美術館を出た直後に殺人事件が起き、元カレも行方をくらましてしまいます。
 さらにアニーのところに知り合いの画商から持ち込まれた素描は、これまた贋作。ある画商が真作の素描を持ち逃げし、代わりに贋作を置いていったらしい。アニーは高額の報酬をあてにして、真作の素描の行方を追うことになります。
 アニーが疑わしい贋作師や画商の様子を探っていると、ハンサムな探偵が現れてやはり真作を探しているらしい。
 殺人事件の捜査の過程で警察に同行して美術館に行くと、カラヴァッジョの贋作は、違う贋作にすり替わっており、どうも2つの贋作が関係しているらしい。では真作はどこにあるのか。
 疑わしい人物を追っていくとまたそこには死体があり、アニー自身も真作のありかを知っているのではないかと拉致され命の危険を冒すことになります。
 美術品を所有したい欲、金銭の欲、美術界の騙しあい、などが絡まって、事件は複雑に関係していますが、だんだんと真作に迫っていきます。

 画家が探偵になるというミステリはありますが、贋作師(一応足は洗っていますが)が探偵のミステリは初めて読みました。贋作の手口が書かれていて、これはなかなか面白いです。
 アニーの周りの人々も、変わった人物やアーティストがたくさんでてきます。その中で“トランスヴェスタイト(transvestite)”というのがありますが、これは、「服装倒錯者、異性の衣服を身につけたがる人」のことです。贋作師の祖父はこの作品中では電話でしか登場しませんが、なかなかユニークな人物のようでこれからもっとでてきてほしいです。特に執筆途中の「世界的贋作師による一家言」ははたして出版されるのか気になるところです。
 アニーの大家は美術品の運搬業をしていますが、否応なしに事件に巻き込まれ犯人逮捕につながるパーティでは大変な目にあいますが、これからアニーとの関係がどうなるのか、この展開も次作では楽しみです。そして謎の探偵X氏も、本人の名乗るような探偵というわけではないようで、美術品の行方を追ってアニーとの競合か協業かは続きそうです。
 作者のWebsiteを見るとすでに4作出版されているようなので、これからの翻訳がまたれます。

■贋作つながり
 エイプリル・ヘンリーの作品にフェルメールの贋作が関係するミステリがあります。
フェルメール殺人事件

エミール・ジェンキンスのアンティーク鑑定士は疑う
は、骨董品の贋作です。

■画家つながり
ジェイニー・ボライソー作のローズ・トレヴェリアン(画家、写真家)のシリーズです。
しっかりものの老女の死
クリスマスに死体がふたつ
待ちに待った個展の夜に
ムーアに住む姉妹

主人公: アニー・キンケイド(画家兼疑似塗装師(フォーフィニッシャー))
場所:  USA、カリフォルニア州サンフランシスコ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(プラムプディングが慌てている)

プラムプディングが慌てている (お菓子探偵12)
ジョアン・フルーク
ヴィレッジブックス


Plum Pudding Murder
Joanne Fluke
Kensington Pub Corp (Mm)


読むと、ビジネスはごまかしてはいけません。
 
(ジョアン・フルーク著)
 クッキー探偵のシリーズ、第12弾。
ハンナの住むミネソタ州レイクエデンはクリスマスの準備で大忙しです。〈 クッキージャー〉のオーナー ハンナもクリスマス用の注文に加えて、〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉(クリスマスツリーやオーナメントなどクリスマス用品を売る臨時の店舗)からのクッキーの注文もあり、毎日大量のクッキーを焼いています。そこへハンナの母ドロレスが新たな問題を持ち込みます。ドロレスの親友で共同経営者キャリーの様子が変だから調べてくれないかというのです。キャリーはハンナの友人ノーマンの母でもあり、ノーマンも心配しているので、きっと調べるとハンナは約束してしまいますが、キャリーについては刑事マイクからも気になる情報を入手し、頭の痛いハンナです。
ハンナとノーマンは、〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉のオーナーのラリーから小切手を受け取るためにトレーラーハウスを訪問し、そこでラリーの死体を発見してしまいます。
ハンナたちはまたしても犯人探しのために協力し、手分けして聞き込みを開始します。
そして〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉にはなにやら疑惑の匂いがあるのを嗅ぎつけます。 
ラリーを殺したのは誰なのか、クリスマスシーズンの慌ただしい中の調査ははたしてどう展開するのでしょう。キャリーの秘密も徐々に明かされていきますが、これはちょっとほほえましいですね。

クリスマスのシーズンになると、〈クレイジー・エルフ・クリスマスツリー・ロット〉のようなクリスマス用品を売るための臨時の店舗ができるのですね。いろいろなクリスマス用品を売るだけでなく、観覧車のようないくつかの遊具も併設され、一つのテーマパークみたいになっています。これはおもしろそうです。
ハンナもツリーを部屋に飾ることになるのですが、愛猫モシェはどうもこのツリーが気に入らないようで、ハンナはツリーのてっぺんから降りられなくなったモシェを救出したりと、心配事が増えてしまいました。この問題をいかに解決するか、それはノーマンたちの力が必要でした。
作品名のプラムプディングは、クリスマスにつきもののお菓子だそうです。プラムとつくからプラムが混ぜ込んであるとかトッピングされているのかと思ったら、プラムは入っていないそうです。それでなぜプラムプディングというのかは諸説あって定かではないということで、そしてあまりおいしくないとハンナたちが会話しています。そこでハンナは頼まれておいしいプラムプディングのレシピを考えます。名付けて、“ミネソタ・プラムプディング”。このレシピは作品中にあります。これにかけるソースも2種類のレシピがのっています。ハンナはクリスマス・ディナーのデザートとしてこれを出します。ハンナの下の妹ミシェルの友人がぜひデザートだけでも参加したいというので招待しましたが、それはハンナの大学時代の苦い思い出の人でした。
次の作品では、この人物をめぐってのお話になるようです。

■既刊
 もう12巻も出版されているのですね。すでに本国では、もう2巻出ています。早い翻訳をお願いしたいですね。

チョコチップ・クッキーは見ていた
ストロベリー・ショートケーキが泣いている
ブルーベリー・マフィンは復讐する
レモンメレンゲ・パイが隠してる
ファッジ・カップケーキは怒っている
シュガークッキーが凍えてる
ピーチコブラーは嘘をつく
チェリー・チーズケーキが演じている
キーライム・パイはため息をつく
キャロットケーキがだましている
シュークリームは覗いている

主人公: ハンナ・スウェンセン(クッキー・ジャーのオーナー)
場所:  USA、ミネソタ州レイクエデン
グルメ: お菓子、クリスマスの料理など
動物:  ネコ(モシェ)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(ディミティおばさまと村の探偵)

ディミティおばさまと村の探偵 優しい幽霊6 (RHブックス・プラス)
ナンシー・アサートン
武田ランダムハウスジャパン


Aunt Dimity: Detective (Aunt Dimity Mystery)
Nancy Atherton
Penguin (Non-Classics)


読むと、被害者の被害者が多すぎる。
 
(ナンシー・アサートン著)
 今回ロリは、夫ビルの父親が住むボストンの屋敷に3カ月ほど滞在し、双子を連れて住みなれたイギリスのコッツウォールド地方のフィンチ村に帰ってきたところです。夫ビルは弁護士としての仕事があるのでロリと双子だけがハチミツ色の小さな家に帰宅です。そこで聞いたのがフィンチ村で起こった殺人です。静かで小さな村のフィンチで殺人? およそありえない話です。殺されたのはフィンチ村に引っ越してきて間もない老女です。
 ロリは、かわいがっている青年キットが容疑者にされたことから事件解決に乗り出します。ちょうど牧師の甥がニコラスが牧師館に滞在していて、ロリとともに村の人たちから事情を聞いて回ることになりました。このニコラスがちょっとばかり魅力的な男性でロリはグラリときそうになります。どうもロリはほれっぽくて。
 いつものように頼りにするのはディミティおばさま、ロリの母親の親友だった人の幽霊です。その日の出来事や捜査の成果をディミティおばさまに報告・相談します。
 殺された老女はかなりの毒気をもっていたようで、彼女に恨みを持つ人たちが次々に現れます。犯人はこの中の誰かか?
 犯人探しというよりもいかに被害者が人の恨みをかっていたかということを明らかにしていくところがおもしろいですね。それにからめてほれっぽいロリがニコラスにだんだん惹かれていくところが合わさって、こちらの展開も気になります。ちょうど夫はまだ仕事が終わらず、アメリカにいて不在ですし。常に誰かが見ているフィンチ村では二人の行動がすでに噂のタネになっていて読んでいるとハラハラしますね。
 早朝色々な人が色々な用事で行き交う中の殺人で、時系列で追っていくのかと思うとそうでもなく、どちらかといえばそれぞれの人たちの事情を明らかにして周りの誤解を解いて正しく理解するということに力点が置かれています。
 殺人方法としては、ワニはちょっとね。これじゃ無理があるかなと思いますが、まぁ、そのあたりは割り引いて読みましょう。
 全体で311ページと読みやすい長さです。
 巻末に、「ピム姉妹の金箔付きジンジャーブレッド」のレシピあり。

■既刊
 もうすでに17作目が刊行されているそうです。翻訳はまだ6作目ですから、あと11冊はあります。まだまだディミティおばさまとロリの捜査を楽しむことができそうです。

ディミティおばさま現る
ディミティおばさま旅に出る
ディミティおばさまと古代遺跡の謎
ディミティおばさまと聖夜の奇跡
ディミティおばさま幽霊屋敷に行く

毎回ちょっとしたレシピがついています。

■幽霊つながり
 こちらも幽霊に相談しながら捜査するというミステリです。こちらは書店についた私立探偵の幽霊です。
著者は、アリス・キンバリー。
ミステリ書店(1) 幽霊探偵からのメッセージ
幽霊探偵の5セント硬貨
幽霊探偵とポーの呪い
幽霊探偵と銀幕のヒロイン
幽霊探偵と呪われた館

幽霊ばやりですね。

主人公: ロリ・シェパード(主人公)
場所:  イギリス、コッツウォールド地方フィンチ
グルメ: お菓子(ジンジャーブレッド)
動物:  なし
ユーモア: 中
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