海外ミステリ専門書店。特に、イヌ、ネコ、その他の動物が活躍するのが好き。グルメも紹介。
ミステリ専門書店(翻訳もの限定)
ワニと読むミステリ(探偵稼業は運しだい)
![]() | 探偵稼業は運しだい (PHP文芸文庫) |
レジナルド・ヒル | |
PHP研究所 | |
¥900(価格は変わる場合があります) |
![]() | The Roar of the Butterflies |
Reginald Hill | |
Harper | |
¥752(価格は変わる場合があります) |
読むと、たくらみは誰かが見ている。
(レジナルド・ヒル著)
ジョー・シックススミスはちょっと腹の出た40代の私立探偵。ただぼんやりオフィスに座っているところに来たのは、クリスチャン・ポーフィリ。いかにも家柄育ちの良さそうなお坊ちゃんのクリスが冴えない探偵のジョーに依頼してきたのは、ゴルフで不正をしたとの疑いを晴らしてくれということ。ロイヤル・フ―・ゴルフ・クラブは加入審査の厳しい名門中の名門のゴルフ・クラブで、クリスは創設者の孫です。相談のためクラブでクリスと落ち合ったジョーはクラブに集う街の名士たちと会話をしますが、ゴルフに縁のないジョーには交わされる会話はちんぷんかんぷんで、大きな誤解をしてしまいます。不正の疑いを晴らすといってもその方法すら考え付きません。ジョーがゴルフ場をクリスに案内されていると、従業員の一人が無断で休みをとり連絡がつかなくて困っているとの話を聞き、クリスは担当役員に代わりの人員を手配するように依頼します。ジョーの友人の一人が今付き合っているのがクラブのアシスタント・プロと知り、内部事情を探ろうと話をしますが、ジョーはそれとなく行動を見張られているのをみつけます。さらに街の名士の一人が、ジョーにスペインでの仕事を依頼してきます。さっぱり事件の見当もつかないジョーですが、弁護士の友人や恋人の看護師らの推理に助けられ、少しずつ真相に近づきます。
レジナルド・ヒルというとすぐにダルジール警視のシリーズを思い浮かべますが、これは冴えない探偵ジョー・シックススミスが主人公のシリーズです。日本語訳はまだ3冊目だそうです。ダルジール警視のように嫌みでなく、ジョーは探偵稼業がうまくいっていない時でも、すぐに眠りにおちることができるというなんとものんきな性格です。探偵仕事のほうもそんな風で、推理はさっぱりですが、いきあたりばったり、友人の推測に流されたり、でもっていつの間にか真相に近づいていくというなんとも頼りない探偵です。
ジョーはミラベル伯母に厳しく育てられたということで随所にミラベルの格言がでてきます。なかなか役にたつものもあり、参考になりそうです。
事件はゴルフ・クラブで起こり、メンバーたちの特権意識やそれぞれの仕事で手を組むやり口など、相関関係は複雑です。事件の謎解きはしっかりと構成されているので、小さな手がかりが随所にちりばめられていますので、お見逃しのないように。
読み終わって事件解決してみると、なるほどそうだったのかと、納得できるエピソードが思い出されます。
プロボクサーに、振られた相手の新しい恋人ではないかと誤解され、7階のベランダからつりさげられて死ぬ思いをするところなど、怖い場面ですが思わず笑ってしまいます。脇役の下層階級専門の押しの強い弁護士や、ゲームでごまかしてばっかりの友人、看護師をしているしっかりした恋人など、周りを固める人々も個性豊かで楽しみながら読むことができます。
さすがにレジナルド・ヒルですね。
このシリーズの翻訳が続くことを望みます。
■ダルジール警視のシリーズ
ワニはあまり読んでいませんが(どれも長篇なので)、読みだすと止まらなくなります。
警視の部下、パスコー警部の活躍も見逃せません。
社交好きの女
幻の森
ダルジールの死
主人公: ジョー・シックススミス(私立探偵)
場所: イギリス、ルートン
グルメ: なし
動物: ネコ:ホワイティ(ジョーの飼っている黒猫)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(深煎りローストはやけどのもと)
![]() | 深煎りローストはやけどのもと コクと深みの名推理9 (RHブックス・プラス) |
クレオ・コイル | |
武田ランダムハウスジャパン | |
¥945(価格は変わる場合があります) |
![]() | Roast Mortem (Coffee House Mystery) |
Cleo Coyle | |
Berkley | |
¥575(価格は変わる場合があります) |
読むと、欠陥を作ってはいけません。
(クレオ・コイル著)
コーヒーハウス ビレッジブレンドのマネジャーのクレア・コージーはオーナーのマダムとともに友人のコーヒーハウスのカフェ・ルチアを訪れます。閉店後のカフェ・ルチアでグラッパを飲みながら歓談していると、爆弾が爆発し店は火事になり、クレアたちも負傷します。カフェ・ルチアのオーナーが保険金目当てに自分で放火したのではないかと疑われ、クレアは容疑を晴らそうと捜査を始めます。
その後もほかのコーヒーハウスが放火されるという事件が続きます。クレアのところには探るのを止めるようにとの警告がきます。
火事で出動した消防士の一人が現場で亡くなりますが、その死に疑問を持った同僚の消防士も亡くなります。一見自殺のようですが、クレアたちは他殺ではないかと疑います。さらに消防隊長も襲われて重傷を負い、それはクレアの恋人マイクの仕業ではないかと疑われます。
コーヒーハウスの放火と消防士の死、関連があるのか?
クレアは恋人マイクの容疑を晴らすべく、元夫マテオの協力を得て、事件の真相に迫ります。
ビレッジブレンドのシリーズ第9弾。
今回はコーヒーハウスが爆破されるというショッキングな場面から始まります。ニューヨークの消防隊の消火活動が詳しく描写され、装備や用具についてもいろいろと語られます。ニューヨーク市消防隊が今回のテーマですね。クレアは消防署にエスプレッソ・マシンの使い方を教えに行きますが、厨房があって消防署内で食事を作ったりもするんですね。
ニューヨークのコーヒーハウスの事情も語られます。だんだんと減って、いろいろな料理のテイクアウトの店などに変わっているようです。日本も喫茶店が減っていますが、同じような事情なのかもしれません。
クレアの恋人マイク・クィンは、ニューヨーク六文書の警部補ですが、ニューヨーク市消防局の隊長マイケル・クィンとはいとこ同士です。以前の作品でもでてきますが、この二人には昔からの確執があるようで、今回はこの確執の原因が二人の口から語られますが、一度誤解が生じるとなかなか修復は難しいようですね。
マイクが麻薬の捜査で忙しいので、クレアの元夫マテオがクレアとともに事件解決に活躍します。マテオの現妻は出張中。クレアとマテオの愛娘ジョイはフランスでシェフの修行中です。
すでに9作目で、登場人物の事情も少しずつ変化しています。
ステーキなどのレシピが巻末にあります。
■既刊
ビレッジブレンドのシリーズはすでに8冊あります。
名探偵のコーヒーのいれ方
事件のあとはカプチーノ
秋のカフェ・ラテ事件
危ない夏のコーヒー・カクテル
秘密の多いコーヒー豆
コーヒーのない四つ星レストラン
エスプレッソと不機嫌な花嫁
クリスマス・ラテのお別れ
■ティーショップなら
ビレッジブレンドはコーヒーハウスですが、ティーショップのミステリもあります。
こちらはサウスカロライナ州チャールストンのインディゴ・ティーショップのオーナー セオドシア・ブラウニングが主人公です。こちらはすでに10作品が翻訳されています。
最新作は、ウーロンと仮面舞踏会の夜です。チャールストンの街は仮面舞踏会の準備でうきうきしています。
主人公: クレア・コージー(ビレッジブレンドのマネージャー)
場所: USA、ニューヨーク
グルメ: コーヒーと料理
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(コージー作家の秘密の原稿)
![]() | コージー作家の秘密の原稿 (創元推理文庫) |
G・M・マリエット | |
東京創元社 | |
¥1,155(価格は変わる場合があります) |
![]() | Death of a Cozy Writer (A St. Just Mystery) |
G.M. Malliet | |
Midnight Ink | |
¥1,229(価格は変わる場合があります) |
読むと、遺産を狙う方法はさまざま。
(G・M・マリエット著)
サー・エイドリアンは、ケンブリッジシャー州マナー・ハウス(古く大きな屋敷)に住むコージー・ミステリの人気作家です。4人の子ども(3男1女)がいますが、妻とは子どもが小さいときに別れています。子どもたちは独立していますが(実業家、画廊主、俳優、料理本作家)それぞれ問題を抱え、そこへエイドリアンの再婚のお知らせが舞い込みます。みんなエイドリアンの財産を当てにしているので、ここで新しい妻が出現すると相続分が減ってしまいます。それでなくとも頻繁に遺言書を書き変えて、相続人から外したり相続分を変更したりして意地悪く子どもたちの心をもてあそんでいるのですから、今後はどうなるのか、みんな気になって仕方がありません。
マナー・ハウスにみんなが集まったところで、エイドリアンから衝撃のニュースが伝えられ、新妻が紹介されます。その夜、相続人の一人が殺害され、さらに第二の殺人が起こります。雪が降った夜で外から屋敷に押し入った形跡はなく、屋敷に滞在している人物の犯行と目されます。
事件を担当するのはケンブリッジシャー州警察のセント・ジャスト警部。名探偵気取りのエイドリアン、その底意地の悪さに翻弄される子どもたち、さらに新妻には夫の殺人事件の容疑者になった過去があり、みんなが少しずつウソをつきます。
誰にでも動機がありそうですが、決め手に欠け、事件は過去にさかのぼります。
セント・ジャスト警部のシリーズの第一作目です。これはアガサ賞最優秀処女長編賞を受賞しています。
設定されている時代は少し前、まだ携帯電話などない頃です。
意地が悪く、子どもたちの心を傷つけて歪んだ喜びを感じながらも苦い気持ちになる老ミステリ作家。美しい妻に夢中になっている様子は老年の希望でもありそうです。無邪気に自分が事件を解決できると考えて、セント・ジャスト警部の苦笑を誘いますが、ミステリ作家を揶揄していますね。エイドリアンのミステリが、アガサ・クリスティのミス・マープル・シリーズに似ているのがちょっとおかしくて、作中でミステリのプロットがクリスティの作品に似ていると言われて自分の方がよく書けてるというところが笑ってしまいます。
子どもたちは、売れない俳優だったり、何をやっても中途半端なプレイボーイだったり、それぞれ問題を抱え、エイドリアンの一言に大きく影響を受けるところなどはかわいそうなくらいです。
それにしても殺人の動機のある人が多すぎて、なかなか誰と特定できません。
エイドリアンとその家族、マナー・ハウスに住む人々、みんな過去に秘密があり、そして今に至っているところが、とてもよく描写されています。
次の作品が期待できますね。
■セント・ジャスト警部シリーズ
すでに三作目まで出版されているようです。
二作目は、Death and the Lit Chick、三作目は、Death at the Alma Mater です。
新しいシリーズも出版しているようです。主人公は、元MI5のスパイで今は小さな村の教区牧師をしているThomas Dunneで、最初の本は、Wicked Autumnです。ジェームズ・ボンドみたいですね。
こちらも早く翻訳されると良いです。
主人公: アーサー・セント・ジャスト(ケンブリッジシャー州警察警部)
場所: イギリス、ケンブリッジシャー州マナー・ハウス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(ライヘンバッハの奇跡)
![]() | ライヘンバッハの奇跡 (シャーロック・ホームズの沈黙) (創元推理文庫) |
ジョン・R・キング | |
東京創元社 |
![]() | The Shadow of Reichenbach Falls |
John R. King | |
Forge |
読むと、正邪の闘いは続く。
(ジョン・R・キング著)
21歳のトマス・カーナッキ(のちの幽霊狩人)は、スイスのマイリンゲンで、美しい女性アンナ・シュミットと出会い、ライヘンバッハの滝へピクニックに出かけます。滝の上では二人の男が争い、一人が滝つぼに落とされて流されてしまいます。カーナッキとアンナは落ちた男を助けますが、もう一人の男は執拗に追跡を続け、3人は必死に逃走します。落とされた男は記憶を喪失していたため、サイレンスと呼ぶことにします。サイレンスを病院に運びますが、そこは追跡していた男の配下にあり、サイレンスは電気治療器にかけられて拘束されてしまいます。
幼い日のモリアーティ教授はパブリックスクールでいじめにあいますが、逆にいじめっこを策略で撃退します。ケンブリッジ大学に進んだ彼はスザンナと出会い、彼女の稀有な才能を引き出すことになり、やがて結婚、一人の娘をえます。スザンナは、ロンドンの町を牛耳っていた犯罪組織を壊滅させるため理論を構築し、その最初のスイッチを入れると、犯罪組織は内部から崩壊を始めます。しかし彼らは報復の対象になります。
モリアーティ教授は、ロンドンの町を騒然とさせていた切り裂きジャックの正体を探るべく、娘と一緒に捜索し、ついに追いつめることになりますが、それはモリアーティ教授が悪に染まる初めにもなりました。
カーナッキ、アンナ、サイレンスは、モリアーティ教授の犯罪を食い止めようと、協力して阻止計画を実行に移します。
若き日のトマス・カーナッキと、大空白時代のシャーロック・ホームズが出会うという異色の組み合わせで、さらにモリアーティ教授の過去が語られてなぜ悪に染まることになったのかがつづられています。モリアーティ教授の幼い日からの物語はなかなかおもしろいですね。モリアーティ教授と切り裂きジャックの関係のところはなんだか納得できそうです。このあたりが一番興味深いかもしれません。
のちに幽霊探偵となるカーナッキが、いつも持ち歩く「電気式五芒星」との出会いは、気持ちの良いものではありませんが、機械は使いようで役に立つようにもなるということでしょうか。
最後はパリのルーブル美術館で壮絶な闘いになりますが、その後その闘いをめぐってカーナッキとシャーロック・ホームズの見解が違ってくるのは、二人の性格や事件解決の手法を考えるとそうだろうなと納得しますね。
ホームズの助手役ワトスンが、後半少しだけ活躍します。
■幽霊探偵
トマス・カーナッキは、W・H・ホジスン作の怪奇現象を電気式五芒星と古文書を駆使して解決するオカルト探偵です。ホームズと同時代に書かれています。幽霊狩人カーナッキの事件簿 は、短編集です。カーナッキが事件を解決するたびに友人たちは招かれて冒険譚を聞くことになります。
![]() | 幽霊狩人カーナッキの事件簿 (創元推理文庫) |
W・H・ホジスン | |
東京創元社 |
主人公: シャーロック・ホームズ(名探偵)
トマス・カーナッキ(のちの幽霊探偵)
場所: ヨーロッパ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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