ワニと読むミステリ(贋作に明日はない)

贋作に明日はない (創元推理文庫)
ヘイリー・リンド
東京創元社
1,323円(価格は変わる場合があります)
Shooting Gallery: An Art Lover's Mystery
Hailey Lind
Signet

読むと、盗みはどういう場合でもいけません。
 
(ヘイリー・リンド著)
 贋作シリーズの2作目です。
 アニー・キンケイドは画家兼疑似塗装師。有名な贋作師を祖父に持つがため、本人の意思とは関係なく美術品を巡る事件に巻き込まれてしまいます。今日はサンフランシスコの高級画廊のオープニングパーティですが、アニーは展示されている彫刻家本人の死体がオークの巨木からぶら下がっているのを発見します。それとおなじころ隣の美術館ではシャガールの盗難事件があり、たまたまその場にいたアニーの友人が犯人ではないかと疑われることになります。アニーの母が急に現れ、どうも怪しい人たちとの付き合いがありそう。シャガールをとり戻すべく、旧知の絵画泥棒と手を組んだアニーはお金持ちのパーティに潜入し、たくさんの真作・贋作をみつけ、さらに絵画泥棒の逃走に手を貸すはめになり。若き日の父母と交遊のあった彫刻家は実に怪しげで、その関係で殺された彫刻家の切り落とされた指をアニーは発見してしまいます。アニーの大家はピカソの修復を依頼してきますが、どうもそれにはウラがありそうで。真贋の美術品を取り合って、また多くの人たちが暗躍します。
 
 またアニーの祖父の描いた贋作が多数出てきますが、今回はアニーの母も事件に関係しているようで、アニーとしては心配ですね。前作で大いに活躍した絵画泥棒マイケルも今回もいろいろなところに出没し、お仕事中に屋敷から出られなくなったりと窮地に陥りますが用意周到のマイケルでも予期せぬ出来事は避けられないようで、いつもしてやられているアニーは少し溜飲を下げます。アニーの大家もだんだんと事件への関与が増えてきました。
 一番おもしろかったのは、アニーが見張っている彫刻家の部屋の前にアニーの友人たちがどんどん集まってきてどんちゃん騒ぎを起こし、はては窓の外を行ったり来たりし始めるところです。このアニーの友人たちにはもっともっと活躍してほしいです。

■既刊
 1作目ではブロック美術館で贋作が見つかります。
贋作と共に去りぬ 

 3作目ではラファエロの作品が事件に関係しているようです。

主人公: アニー・キンケイド(画家兼疑似塗装師(フォーフィニッシャー))
場所:  USA、カリフォルニア州サンフランシスコ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(野兎を悼む春)

野兎を悼む春 (創元推理文庫)
アン・クリ-ヴス
東京創元社
1,365円(価格は変わる場合があります)
Red Bones
Ann Cleeves
Macmillan Publishers Ltd
987円(価格は変わる場合があります)
読むと、1つの発見から古い歯車が回り始めます。
 
(アン・クリ-ヴス著)
 シェトランド四重奏のうち第三章です。
 シェトランド署のサンディ刑事は祖母のミマに会いに小農場をたずね、そのミマの死体を発見してしまいます。ウサギ狩りの銃弾にあたって亡くなったようです。サンディ刑事はペレス警部とともに捜査し、ミマの死は誤って撃たれた銃弾による事故ということになります。ペレス警部はそこに納得のいかないものを感じもう少し調べてみることにします。ミマの小農場では考古学の学生たちがやってきて遺跡発掘をしていますが、そこから古い骨が掘りかえされています。数百年前の骨に交じって比較的新しい骨があり、はたしてこれはどういう経緯でここにあるのか、島の古い記憶が新たな光を浴びることになります。さらに遺跡発掘現場で新たな死体が発見されます。これは自殺との見方が有力ですが、ペレス警部はこれにも一抹の疑問を感じます。
 事件はだんだんと島の住人の複雑な人間関係から愛憎の感情を明らかにしていきます。そしてはるか昔の疑問へとつながっていき、一つ一つを考えあわせてみると、その出来事の経緯がはっきりと見えてきます。
 
 今回はペレス警部とサンディ刑事が主役で、前2作に登場するテイラー主任警部の出番はなし。サンディ刑事の家族関係などが事件の重要な要素を占めています。それにしても複雑に入り組んでいますね。なかなか関係が覚えられません。シェトランド島の自然や産業などが事件の進展とともに語られて、住民とともに海を眺めている気分になります。ただミステリとしては、事故?自殺?他殺?があいまいなのでちょっとそこをはっきりしてよ、と言いたくなるところもありますが、まぁそれがシェトランド島の特徴なのかもしれず油断なく手掛かりを見逃さないようにしましょう。
 ペレス警部は前2作で関係を育んできた恋人フランとの今後についてくよくよと考えていますがなかなか次の一歩を踏み出すことができず、またそれが悩みとなっていましたが、最後にフランから爆弾があります。
 シェトランド島四重奏の4冊目Blue Lightningはすでに出版されているようですので、翻訳が出るのがたのしみです。
 Raven Black, White Nights, Red Bones, Blue Lightningとどれも色の名前がついているのですが、翻訳の題名も色をいれてほしかった。まぁ、無理な注文かもしれませんが。

■既刊
シェトランド四重奏の二冊は下記のとおり。
大鴉の啼く冬
白夜に惑う夏

主人公: ジミー・ペレス(シェトランド署の警部)
サンディ・ウィルソン(シェトランド署の刑事)
場所:  イギリス、シェトランド島
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小

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ワニと読むミステリ(サイモン・アークの事件簿III)

サイモン・アークの事件簿III (創元推理文庫)
エドワード・D・ホック
東京創元社
 966円(価格は変わる場合があります)

読むと、しっかり見れば説明できます。
 
(エドワード・D・ホック著)
 サイモン・アークの事件簿、3冊目です。8個の短編です。
 超常現象かと思われる事件が起こり、サイモン・アークはオカルト探偵の腕を買われて事件現場に出向きます。
 女子大で学生たちが魔法にかけられてしまったようで、さらに魔女が焼け死んでしまいます。
 痛悔修道会(自らの身体を痛めつけることを信仰の手段にする)の信者が儀式を行っている最中に刺し殺されます。
 刑務所として使われていた警備厳重な古城から、ナチスの戦犯が姿を消してしまいます。
 などなど説明のつかない超常現象かと疑われる事件をサイモン・アークが次々に解決していきます。
 巻末の解説によるとホック自身が選んだ作品はここまでだそうです。これでサイモン・アークのシリーズは終わってしまうのかと心配しましたが、第4巻は訳者の方の厳選した作品集になるそうです。作品チェックリストを見るとまだまだたくさんの作品があるので、4巻、5巻と期待できそうです。

■既刊
サイモン・アークのシリーズはすでに2巻出ています。
 サイモン・アークの事件簿I
 サイモン・アークの事件簿II

田舎医者のサム・ホーソーンのシリーズは、すでに6巻出ています。
 サム・ホーソーンの事件簿IV
 サム・ホーソーンの事件簿 VI

その他、夜の冒険があります。

■超常現象のミステリ
サイモン・アークを読むとどうしても幽霊探偵を思い出してしまいます。
 幽霊狩人カーナッキの事件簿

人公: サイモン・アーク(オカルト探偵)
場所:  世界中
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(シャンハイ・ムーン)

シャンハイ・ムーン (創元推理文庫)
S・J・ローザン
東京創元社  1,533円 (価格は変わる場合があります)

The Shanghai Moon (Linda Chin/ Bill Smith)
S.J. Rozan
Minotaur Books 1,315円 (価格は変わる場合があります)

読むと、伝説は伝説のままに。
 
(S・J・ローザン著)
 リディア・チンとビル・スミスの私立探偵コンビのミステリです。今回はリディアが主役。
 私立探偵のピラースキーからリディアに協力要請が入ります。ある宝石を探しているのだが、関係者に中国人が多いのでリディアに手伝ってほしいというのです。リディアがチャイナタウンで調査を始め、ピラースキ―からの電話にこたえて彼を訪ねていくと、そこには射殺死体が。
事件を追っていくうちに、シャンハイ・ムーンと呼ばれる幻の宝石が絡んでいることがわかってきます。その来歴を調べるうちにリディアは第二次世界大戦でユダヤ人迫害から逃れ、シャンハイにたどりついた1人の少女の手紙を目にすることになり、少女のその後の生涯と宝石の関係が次第につながってきます。シャンハイ・ムーンは本当に実在したブローチなのか。長い年月をかけてその宝石を追い求める人たちの執念もあり、事件は壮大なスケールに発展します。
 
 話は現在のニューヨーク、チャイナタウンにおける盗まれた宝石の追跡劇と、ユダヤ人迫害から逃れるために両親のもとを離れてシャンハイに向かう少女とその弟の数奇な運命とが互い違いに語られて、ドキドキするようなドラマが展開します。シャンハイに行きついた少女たちがその後どうなったのか、多くは少女がついに会うことがかなわなかった母に宛てた手紙から知ることになりますが、戦争の悲しい現実とその中でもうれしい恋物語と、現在と過去を行きつ戻りつしながらミステリは次第に解決へと向かっていきます。
 ユダヤ人の少女の手紙が切ないですね。
 S・J・ローザンの巧みな語りでついこれがミステリなのを忘れてしまいそうになりますが、事件解決の手掛かりは随所に示されているので、それをお見逃しなく。
 それにしてもつい読みふけってしまうようなミステリです。

主人公: リディア・チン(私立探偵)
ビル・スミス(私立探偵)
場所:  USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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