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ワニと読むミステリ(穢れしものに祝福を)

読むと、美しさの意味は、なんなのだろうかと思わないでもない。

(デニス・レヘイン著)
 デニス・レヘインは、心の闇をのぞきこむというそうですが、この闇は深いです。
 浮かんでるのが何より好きなワニには、はかりしれない闇です。人間の心って大変ですね、いろいろ難しいことがあって。
 パトリックとアンジェラのシリーズ3作目です。
 アンジェラも、だんだん立ち直りつつありますよ、これだけは少しホッとするところです。
 2作目のお話で、パットとアンジェラはしばらく探偵家業をお休みしています。とても仕事をする気にならないほどに衝撃が強かったから。
 その二人を誘拐して、椅子にしばりつけたままで、事件を依頼するというありえないような始まりです。大富豪のやり方は乱暴ですね。その依頼は、失踪した娘を探してほしいというもの。
 大富豪トレヴァーは、自動車強盗にあい、体に傷を受け、なお病に侵されて余命いくばくもないという。娘のデジレーは、突然の母の死(自動車強盗の際に殺された)、それに続く恋人の死で、すっかり心が沈み、あるカルト集団に救いを求めて、そこから行方がわからなくなってしまっている。
 謎のカルト集団の正体はいったいなんなのか?
 その集金の恐るべき事実が暴かれますが、これは話のおまけ。
 娘の失踪を深く憂えているらしいトレヴァーに動かされ、パットとアンジーは依頼を引き受けることになります。
 でもこれがすごいんですね。
 トレヴァーの憂いの根本にあるのはなんなのか?
 どうしてデジレーは、カルト集団に入ったのか?
 パットの師であるジェイは、この事件を先に請負っていましたが、彼もまた報告に帰る途中で消息をたってしまっています。パットを惑わすものは何?
 パットとジェイの師弟の絆は、何層もの安全装置に守られていますよ。
 暗号が決め手です。
 事件を追うにつれて、思いも寄らない欲望や謀略が次々と2人に立ちはだかってきますよ。
 単純なワニは、もうついていけません。
 みなさん、きっと睡眠不足になりますから、休みの前の日に読みましょう。

質問: ジェイの墓場からのメッセージは、なんでしょうか?

主人公: パトリック・ケンジー(私立探偵) Male
アンジェラ・ジェナーロ(私立探偵、パトリックのパートナー) Female 
場所:  USA、ボストン、タンパ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小


穢れしものに祝福を

角川書店

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ワニと読むミステリ(アルファベット・ヒックス)

読むと、恋は素直でないですね。

(レックス・スタウト著)
 レックス・スタウトといっても、ネロ・ウルフのシリーズではないので、グルメはなし。褐色砂岩の立派な建物もなし。
 でも、ニューヨークです。といっても、ニューヨークからちょっと離れたカトウナが主な舞台ですけど。
 アルファベット・ヒックスは、元は弁護士でしたが、弁護士資格を剥奪されて、今はタクシーの運転手をしています。でも、弁護士資格を剥奪されることになった出来事で有名人。
 ニューヨークをタクシーで流していて偶然拾った女性は、彼がアルファベット・ヒックスだとわかると、相談をもちかけてきます。彼女は、ある会社社長の妻で、夫から産業スパイの疑いをかけられているというのです。その濡れ衣を晴らして欲しいというのが、彼女の依頼です。
 どういう産業か?
 これが、プラスチックの製造についての技術を巡っての産業スパイ合戦なのですね。
 ソノシート。知らない人も多いでしょうね。レコードより前に、安価な塩化ビニール製の音盤だそうです。1958年ごろ、フランスで発明されたそうです。今ではレア物らしいです。
 このソノシートに盗聴録音されたものが事件の鍵です。
 産業スパイの立派な証拠? または、濡れ衣を晴らすもの?
 ヒックスの軽口やウィットは、アーチー・グッドウィンに通じるものがありますね。
 レックス・スタウトの作品だけに、ミステリは込み入っていて、物語の展開と謎解きと、両方いっぺんに楽しめて、もったいないくらいです。どうしてこのような上質のミステリが、日本になかなか紹介されないのでしょうか。
 わかりません。
 若い人たちの恋や、ちょっと年配の人たちの憧れなど、ほんのり楽しかったりつらかったりのロマンスもあり。
 でも最後は、ほっとしますよ。

質問: 通称アルファベット・ヒックスと呼ばれていますが、本名は、何・ヒックスでしょうか?

主人公: アルファベット・ヒックス(元弁護士のタクシー運転手) 
      Male
場所:  USA、ニューヨーク、カトウナ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中

アルファベット・ヒックス

論創社

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ワニと読むミステリ(九時から五時までの男)

読むと、自分まで疑いたくなる。

(スタンリイ・エリン著)
 短編集です。
 「最後の一壜」を読んで、ついついスタンリイ・エリンをまた手にとってしまいました。怖くて奇妙な話が多いのですが、なんだか中毒になる感じです。
 10篇。
 「九時から五時までの男」というから、てっきり気楽なサラリーマンの話かと思ったら、ある犯罪に対して特殊技術をもったプロで、ゆえに九時から五時まで働けば十分なのでした。しかしその他に関しては、不注意なところもあり、妻に「まったく、あなたって人は、、」と頭を振られてしまうのです。
 「ブレッシントン計画」は、高齢化社会を迎えて、ますます大繁盛しているだろうなと、スタンリー・エリンの先見の明に感心してしまいますよ。
 「蚤をたずねて」は、本当の話なのか妄想なのか、読んでいるほうも自分のことがわからなくなってしまうような脳みそがくらくらしそうな内容です。
 でも、一番怖かったのは、「ロバート」かも。
 短編集なんだから、途中適当なところで一時中断もできそうな気がするのですが、スタンリイ・エリンの短編集に関しては、一話終わったら、次のページをめくるのがもどかしいくらいです。
 この本は、1967年6月にハヤカワ・ミステリとして刊行された作品の文庫化なので、時代背景は古いですが、恐怖の元は、時代は関係ないですね。

質問: サーカスの中で、殺されてしまった力技の花形スターの名前はなんでしょうか?


主人公: いろいろ(職業もいろいろ) 
     Male&Female
場所:  USA、場所もいろいろ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小・中


九時から五時までの男

早川書房

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ワニと読むミステリ(マタニティ・ママは名探偵)

読むと、子供がしっかりするくらいの親のほうが良いのかもと思ってしまう。

(アイアレット・ウォルドマン著)
 ロサンゼルスの幼稚園お受験も大変なんですね。始まりは、ジュリエットの長女ルビーの名門幼稚園ハーツソング幼稚園での面接騒動です。ジュリエットも夫のピーターも緊張してなんとか立派な両親を演じようとしているのに、娘のルビーは両親の気持ちなんかおかまいなし。いつものようにやんちゃぶりを発揮して、面接をぶち壊してしまいます。
 でもその夜のニュースで、幼稚園の創設者で園長のアビゲイルがひき逃げされたと聞いて、ジュリエットは仰天! 
 子育て&第二子妊娠中で、子供の成長とともにすごす時間は楽しいのだが、なんとなく物足りないなと思っていたジュリエットは、事件解決に向けて、がぜんはりきります。元々、官選弁護人だったので、その血が騒ぐのでしょうか。
 調べてみると、アビゲイルの2番目の夫には愛人がいて、しかも怪しげなセックスの信奉者らしい。
 前夫との間の娘のオードリーは、母の死に涙のかれるヒマもないですが、完璧な母に劣等感を抱きながら、つらい日々をおくっていたらしい。
 妊娠にともないどんどん増える体重と、臨月近い大きなお腹を抱えて、危険にいどんでいく姿には、もう、読んでいるこっちが心配で、ハラハラしてしまいますよ。
 夫のピーターがいいですね。売れっ子シナリオ・ライターのピーターは、ほとんど家で仕事をしているので、ルビーと遊んでばっかり。シナリオを書いているときは、そっちの世界に飛んでいってしまっているようですが。
 ただいま妊娠中の第二子は、どうやら男の子らしいです。
 これからも出産と事件解決に追われる毎日のようです。 
 二作目が早くでないかと楽しみです。

質問: カーズウェル刑事が、お見舞いにと赤ちゃんに持ってきたものはなんでしょうか?

主人公: ジュリエット・アップルバーム(元官選弁護人。子育て真っ最中のママ。ただいま第二子妊娠中) 
Female
場所:  USA、ロサンゼルス
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中


マタニティ・ママは名探偵

ソニーマガジンズ

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ワニと読むミステリ(ダーク・リバー)

読むと、ヒロインは腕力が決め手。

(マライア・スチュアート著)
 少しロマンスが勝ってます。犯人は、容易にわかるので、ミステリとしては気楽に読めます。
 鍵をかけてない家もあるというくらいのどかな町に、サッカー・ママばかりを狙った連続殺人事件が起こります。
サッカー・ママって、わかりますか? 子育てに熱心で、子供のスポーツ活動には必ず参加し、いろいろな役割をこなすという愛情深いママのことをいいます。
主人公のケンドラは、犯罪捜査用の人相書を描く画家です。こういう職業の主人公は、ワニはケンドラしか知りません。ほかにもいるのでしょうか?
FBIに依頼され、この連続殺人犯人の似顔絵を描くことになるのです。
一緒に事件の捜査にかかわるFBI捜査官のアダムは、以前に友達から恋人に移行しかけて、そこでケンドラに、母の死という出来事があって、不完全燃焼に終わったといういわくつきの間柄です。さて、この事件がきっかけで、二人の関係は深まるのでしょうか?
ま、それは良いとして。
単に似顔絵を描くだけの捜査へのかかわりと思っていたのが、だんだんとケンドラ自身に魔の手が伸びようとしてきます。
どうも、はるか昔の弟といとこの失踪事件につながるような気配。
いとこの家というのが、60年代のままで止まってしまったような生活をしている牧場です。マリファナでボンヤリした女がポーチのゆり椅子でゆられているような。
子供はもっと健全な環境で育たないといけないということでしょうか。
ケンドラは、ついにその恐怖が現実のものとなってしまうのですが、そこからの脱却があっぱれです。
自らの力で、戦いますよ。かなり傷つきますが。
ヒロインは、筋肉がないと務まりません。

質問: イヌのローラは、何と何の混血でしょうか?

主人公: ケンドラ・スミス(犯罪捜査用の人相書画家) 
Female
場所:  USA、
グルメ: なし
動物:  イヌ:ローラ
ユーモア: 中


ダーク・リバー

集英社

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ワニと読むミステリ(ホロスコープは死を招く)

読むと、チャートが気になる。

(アン・ペリー編著)
 アンソロジーです。
 16人の作家。 もちろんいずれもホロスコープが関係するミステリばかりです。
 日本に紹介されていない作家も多いみたいで、まだまだこれから翻訳ミステリの開拓の余地がたくさんあります。どしどし翻訳して欲しいです。
 サイモン・ブレッドの作品が久しぶりに読めて、うれしかったです。ミセス・パージェターのシリーズもとっくに読んでしまって、未訳や絶版ばかりが残りでしたから。
 ワニは、ホロスコープはさっぱりわからないので、意味不明のところもありました。特に、裁判で論争するところ。これは聖書の知識がないから、余計わからない。
 ワニが気に入ったのは、チャートで「無」が現れるという不可思議なもの。このチャートの解釈が難しいですね。「死」を意味するのかと単純に想像するのですが、作品中の占星術師によると、普通は「死」でも「無」にはならないという。その人の残した何かや人間関係が続いているから。では、このチャートの「無」は何?
 生まれた年月日だけでなく、生まれた時刻も正確なチャートには必要ということで、ワニとしては困ります。ワニの場合生まれたのは、いつになるのでしょう。タマゴが産み落とされた日? それとも殻を破って出てきた日? カラを破る前から、きゅっきゅっと鳴いていたんですが、これはまだ生まれたとはいわないのかな? うーむ、難しい。
 占星術師の技量によって読み解き方が違うから、解釈も違って、「警告」が現れたときにどうしたらよいか、対処の仕方に迷いますね。何をしても悪いことが起こりそうな気がして。
 アンソロジーには、ピーター・ラヴゼイやローレンス・ブロックというおなじみの名前もあります。
 知ってる作家も知らない作家も、ホロスコープを巡ってのいずれの殺人事件も楽しめますよ。
 でも、自分のチャートはどうなんだろうと、とても心配になるかも。

主人公: 多数(職業いろいろ) 
Male&Female
場所:  多数
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中かな


ホロスコープは死を招く

ソニーマガジンズ

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ワニと読むミステリ(闇よ、我が手を取りたまえ)

読むと、誰の中にも狂気はあるのかもしれないと思う。

(デニス・レヘイン著)
 パット&アンジェラの2作目です。
 ワニは、デニス・レヘインを読み始めたのが遅いので、まだやっと2作目を読んだところです。
 血と暴力と狂気、と解説にあるとおり、内容はすごくおぞましいです。このころのボストンって、こうだったのかなと考えたりもしますが、今の日本の事件の数々を見ていると、あまり違いがないのかもとも思います。とてもそうは見えない人が、殺人者だったり。
 のんきなワニとしては、このあたりの陰惨さにはあまり触れないようにして、でもパットとアンジェラの魅力に負けて、読んでます。
 またたくさんの殺人なんですが、そのつながりがわかりません。
 実は、はるか昔のパットの父親たちの作っていた自警団が発端なんですね。自警団を作って、地域の安全を守ろうとした人たちに、何が起こったのか、想像もつかないですよ。
 1作目で、パットの父親は表彰されたこともあるような立派な消防士だった反面、家では暴力を振るう家庭内暴力・幼児虐待という陰の部分を併せ持つような人物と触れられていますが、それがこの作品では、もっと父親の性癖や行動が深くえぐられていきます。いやでも、パットは、この父親の子供なんですね。この連続殺人鬼は、パットの近くにいる人物らしいと推測され、知り合いを疑わなくてはならなくなって、パットは悩みます。
 アンジェラの結婚生活も転機です。
 暴力亭主からやっと逃れる決心をするのですが、なかなか長かった結婚生活に終止符をうつのが難しく、それでもなんとか離婚の手続きにこぎつけます。
 でも、夫フィルも、本当はアンジェラを愛しているのです。
 フィルも、アンジェラのために悪に立ち向かおうとします。結果は、哀しい結末ですけど。。。
 ボストンという都会でありながら、地域住民の結束が固くて、みんな幼馴染だったり、ご近所さんだったり、ちょっと村に近い感覚ですね。
 ちょっといかれた、武器マニアのブッパも健在です。あまり出番はないですが。
 拷問とか、魔女裁判時代から人間のやることは変わってないようで、ぼんやりワニとしてはあんまり楽しくない殺人方法ですが、ついつい次の作品のことを考えてしまいます。
 
主人公: パトリック・ケンジー(私立探偵) Male 
アンジェラ・ジェナーロ(パートナー) Female
場所:  USA、ボストン
グルメ: なし
動物:  イヌ:パットン(ブラック・エメラルドの飼い犬)
ユーモア: 小


闇よ、我が手を取りたまえ

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