ワニと読むミステリ(でぶじゃないの、骨太なだけ)

でぶじゃないの、骨太なだけ (創元推理文庫)
メグ・キャボット
東京創元社
¥1,050(価格は変わる場合があります)


Big Boned (Heather Wells Mysteries)
Meg Cabot
William Morrow Paperbacks
¥1,023(価格は変わる場合があります)


読むと、欲をださずに譲ることも肝心。
 
(メグ・キャボット著)
 ヘザーは元うれっこポップ歌手で今はニューヨーク大学フィッシャー寮の副寮母をしています。元婚約者のお兄さんクーパーの家に居候していますが、出所してきた父親も同じくこの家に住んでいます。 クーパーへの恋心が実らないままに、ヘザーは数学部助教授、ヘザーの補講担当タッドとお付き合いをしています。しかし教員とその生徒との恋愛はご法度。二人はこっそりと会っていますが、なぜかヘザーはタッドと早朝ジョギングをすることになってしまいます。サイズ14のヘザーには拷問にも等しい運動です。へとへとになって出勤してみれば、そこにはまたしても死体が。大学構内では院生組合が待遇改善を訴えてストライキに突入しそうな気配です。そしてその関係者が容疑者と目されて。ヘザーはまたしても殺人事件に巻き込まれてしまいます。
 
 ヘザー・ウェルズのシリーズ第3弾です。
 ニューヨーク大学では院生組合が自分たちの大学での職場の待遇改善を求めての大学との交渉を進めていますが、なかなか主張が通りません。学生でありながら大学でアルバイトをしたりするんですね。寮のバイトのサラもその一人です。いつもは散々ヘザーの心理分析をしてくれるサラですが、今回は院生組合のリーダーに恋をして、あまりヘザーのことに関心を向ける余裕はなさそうです。
 大学内の殺人事件で、いろいろな大学に仕組みが語られるのが日本との違いもあって興味深いです。
 ヘザーの周りでは、出所してきた父親が新たな事業を立ち上げてクーパーの家から引っ越していこうとしていますが、いかにも能天気な父親がおかしいです。それに恋人タッドの健康おたくぶりも、これで少々太めのヘザーがタッドの影響で引き締まったボディになるのか、そしたらちょっとつまらないかも、と心配になります。
 ヘザーも副寮母としての貫禄が増してきて、この殺人事件にも冷静に対処しています。ずいぶん成長したものです。
 事件解決ではまたしてもヘザーは危ないことになりますが、クーパーの助けは間に合うのか。まぁ、だいたいはよそ見をしている隙に消えてしまうとかいう展開ですね。そんなもんでしょ。
 現在メグ・キャボットはヘザーのシリーズ第4弾、第5弾を執筆中だそうです。
 これからヘザーがどう成長していくのか、また歌の世界に戻るのか、それもこのシリーズのおもしろさです。

■既刊
 すでに2巻あり。最初はサイズ12でしたが、のちにサイズ14になり。
 サイズ12はでぶじゃない
     エレベーターサーフィンという恐ろしく危険な遊びが流行っています。
 サイズ14でもでぶじゃない
    寮の厨房で殺人が発覚します。いろんな学生クラブがでてきます。ヘザーはサイズ14になってしまいます。
 
主人公: ヘザー・ウェルズ(ニューヨーク大学の学生寮の副寮母。元ポップ歌手)
場所:  USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物:  イヌ:ルーシー(ヘザーの飼い犬。雑種犬)
ネコ:ガーフィールド
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(三本の緑の小壜)

三本の緑の小壜 (創元推理文庫)
D・M・ディヴァイン
東京創元社
¥1,155(価格は変わる場合があります)


Three Green Bottles
Dominic Devine
HarperCollins Distribution Services
¥3,983(価格は変わる場合があります)


読むと、決めつけ、思い込みは危険。
 
(D・M・ディヴァイン著)
 マンディ・アーミテイジは診療所長の娘で、診療所の秘書兼受付をしています。美しい容姿をもっていながらなぜかいつも地味な目立たない格好をしています。恋愛をしてもいつも邪魔をされ、実ることはありません。マンディには腹違いの妹シーリアがいますが、発育に問題があり、13歳ながら2つ下のクラスで勉強しています。シーリアたち女の子は夏休み前のある夜、水浴に出かけます。遊び疲れてすっかり遅くなった少女たちは大急ぎで家に帰りますが、ただ一人の少女だけは家に帰らず、翌日ゴルフ場で全裸死体で発見されます。小さな町は大騒ぎになりますが、やがて診療所の一人の医師の犯行ではないかと疑われます。その医師は何かを考え込んでいるようでしたが、崖からの転落死体で発見されます。犯行を苦にした末の自殺とみられますが、葬儀に現れた医師の弟マークは疑問を感じ、乞われるままに診療所の医師として働くことにします。もう事件は終わったと町の人々がほっとしていたところで、また一人の少女が殺されて同じくゴルフ場で発見されます。さらにガイ・フォークス・ナイトで事件は続きます。被害者の共通点はいずれも13歳の少女だというだけで犯人の動機はつかめません。

 またディヴァインの作品が読めるのは実にうれしいことです。
 イギリス北部の小さな町のできごとで、夏休み前のやる気のないときに宿題をもっと書きなおそうかどうしようかと迷う少女の様子から始まります。なんということもない学校での成績競争などの少女の気持ちが語られていくのですが、そこはディヴァインなので、なんとなく不安な気持ちにさせられます。のっけからこんな風にミステリ気分にさせてもらえるというのはミステリファンとしてとてもうれしいです。
 物語は3人の人物の視点から語られていきます。マンディ、マーク、シーリアはそれぞれの見方で出来事を語りますが、少しずつ違っているので読者としてはどこに真実があるのかと、余計に首をひねるという楽しいおまけ付きです。
 イギリス北部の小さな町はだいたいみんな知り合いで、その中に殺人者がいるのかと思うと住民はみな不安な気持ちになるけれども、まさか友人が殺人者ということはないだろうという根拠のない勝手な思い込みから事件に巻き込まれていく様子や、手掛かりを見逃してしまうところなど、ぞくぞくするほどうれしい展開です。
 しかし13歳の少女たちが親の同伴もなく夜遅くまで外で遊んでいるというのは不思議な感じがしますが、イギリスではそうなのでしょうか。
 これは1972年に出版された作品です。そのころのイギリスはこんなだったのかなと思いながら読むのもおもしろうでしょう。
 それに頼りない兄としっかりものの弟という兄弟の関係も一見冷えた兄弟関係に見えながら、実は深い信頼と愛情に満ちていたというのも、ディヴァインが書くととてもよく伝わってきます。
 題名の“三本の緑の小壜”は、イギリスの童謡“Ten Green Bottles”からとられているようです。
 次の翻訳は、Sunk Without Traceだそうです。早く読みたいです。

■ディヴァイン既刊
 
 悪魔はすぐそこに
 ウォリス家の殺人
 災厄の紳士
 兄の殺人者
五番目のコード

 ディヴァインは13作の推理小説を残しているので、まだまだ楽しませてもらえそうです。

主人公: マンディ・アーミテイジ(診療所の秘書兼受付)
マーク・ケンダル(診療所の医師)
シーリア・アーミテイジ(マンディの腹違いの妹)
場所:  イギリス、北部
グルメ: なし
動物:  イヌ:ベス(ラブラドール)
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(怪しいスライス )

怪しいスライス プロゴルファー リーの事件スコア 1 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫)
アーロン&シャーロット・エルキンズ
集英社
¥600(価格は変わる場合があります)


Wicked Slice
Aaron & Charlotte Elkins
Fawcett
¥1,031(価格は変わる場合があります)

読むと、曲がるにはわけがある。
 
(アーロン&シャーロット・エルキンズ著)
 リー・オフステッドはプロゴルファーになって1年目の新人女子プロです。まだランクは高くなく、やっと生活できる程度で、経費を切りつめるためにあらゆる努力をしています。プロとアマチュアが組んで試合するトーナメントに出ていますが、なかなかスコアが伸びません。そのゴルフ場でスター選手ケイトの死体を発見してしまいます。ケイトはその言動からあまり周りの人たちから好かれていたとは言い難い人物でしたが、それで殺そうとするまでに憎まれるとも思えません。事件を担当するのはグレアム警部補ですが、彼はゴルフをまったく知りません。リーは容疑者にされそうになったり、またケイトとは親友といえるほどではないにしても他のゴルファーよりは親しい間柄でもあり、グレアム警部補がゴルフに無知なゆえに間違った方向に行くのではないかと心配になり、自分なりに捜査を始めようとします。しかし、トーナメントで一緒の組になったアマチュアゴルファーのペグ(経営コンサルタント)は、生来のおせっかいで、さらにリーとともに死体を発見したことやで、自分も捜査に参加すると言い出します。二人はゴルフ関係者に聞き込みを始めますが、捜査には不慣れなため、なかなかうまくはいきません。その間もトーナメントの試合は続き、リーはスコアも気になりますし、グレアム警部補も気になります。犯人はゴルファーなのか、その他の関係者なのか。ゴルフトーナメントはたくさんの人たちが出入りして、犯行の機会も多く、犯人特定に苦労します。そしてさらに殺人が起こり、ますます推理は難航します。
 
 ゴルファーが探偵というミステリは初めてです。
 アーロン・エルキンズといえばスケルトン探偵のギデオン・オリヴァーのシリーズを思い浮かべてしまいますが、これは奥さんのシャーロットとの共著によるゴルフ界を舞台にしたミステリです。シリーズ化されていて、すでに4作出版されているそうです。リーは20代でまだプロになって一年目、しかもゴルフを始めたきっかけはアメリカ陸軍在籍中に抽選で週末ゴルフの権利をあててからというもので、子ども時からゴルフをしていたという多くのプロゴルファーとはその最初からして違います。この陸軍時代については後続のシリーズで語られるのでしょうか。ちょっと面白そうな気もします。
 殺されたケイトはランクが上、かなり上、それに比べてリーはまだ100位くらいをうろちょろするくらいの選手です。このあたりの生活の違い、シード権獲得の仕組み、スポンサー契約の仕方など、ゴルフ界についてのことが覗き見られるのが面白いですね。
 作品中にモントレーの名物としてチョッピーノという食べ物がでてきますが、それはこのようなものだそうです。
 チョッピーノ(Cioppino) → http://en.wikipedia.org/wiki/Cioppino
 日本で食べられるところがあるのでしょうか。
 この後の作品でも、引き続きペグもグレアムも出てくるようなので、これらの人たちとの関わりがどうなるのかも楽しみです。
プロゴルファーの東尾理子氏による解説が巻末にあります。

■アーロン・エルキンズの著書
 スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーのシリーズです。
 骨の島
水底の骨
骨の城
密林の骨
原始の骨
騙す骨

主人公: リー・オフステッド(女子プロゴルファー)
場所:  USA、カリフォルニア州モントレー
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(天使のテディベア事件)

天使のテディベア事件 (創元推理文庫)
ジョン・J・ラム
東京創元社
¥1,050(価格は変わる場合があります)

The False-Hearted Teddy: A Bear Collector's Mystery
John J. Lamb
Berkley
¥663(価格は変わる場合があります)


読むと、愛憎は入れ替わります。
 
(ジョン・J・ラム著)
 ブラッドリーは元殺人課の刑事、ケガがもとで今は退職しています。愛妻アシュリーはテディベア作家で、二人はボルチモアで開かれる由緒あるテディベア・ショーに来ています。アシュリーは《スウィーツ・コレクション》を出展しますが、ブラッドリーも初めての作品“ダーティベアリー”を出します。会場に着いたとき、ケンカしている夫婦をみかけたブラッドリーは止めに入りますが、女性はどうやら夫から暴力をふるわれているらしい。その女性が有名な《にっこり天使のテディベア》の作者だとわかりますが、やはりショーに来ていた別のテディベア作家が激しく彼女をなじります。会場にあふれるかわいいテディベアたちですが、作家の間にはいろいろと問題があるらしい。そしてショーのパーティで事件は起こり、テディベア作家が命を落とします。容疑者にされそうになったブラッドリーは自ら捜査に乗り出しますが、テディベアのライセンス契約などもからみ、なかなか複雑です。

 テディベアのシリーズ2冊目です。
 今回はブラッドリーとアシュリーはテディベアのショーに来ていますが、こんなショーがあるとは知りませんでした。解説などを読んでみると、こういうショーは結構たくさんあるらしいです。毎年8月にニューヨーク州ビンガムトンでショーが開かれるそうですが、詳細はウェッブサイトで見てください(http://www.tbai.org/)。背景がかわいいですね。それと、10月27日はテディベアズ・デーだそうです。
 テディベアをライセンス契約して大量生産して売り出したり、アニメ化する話なども盛り込まれ、アメリカでのテディベア市場を垣間見ることができます。日本ではどうなんでしょうか。
 コンテストでは二人の作品も候補になりますが、はたして賞を獲得することができるでしょうか。発表はドキドキものですね。
 殺しの手口については、こういう方法があるとはワニは知りませんでした。
 テディベア・シリーズは、もうすでに5冊目まで刊行されているようです。翻訳も早く追いついてほしいですね。

■既刊
 嘆きのテディベア事件
 「嘆きのテディベア」が行方不明になります。

■ボルチモアつながり
ローラ・リップマンの作品はボルチモアが舞台ですね。
あの日、少女たちは赤ん坊を殺した

こちらは私立探偵テス・モナハンのシリーズです。
ロスト・ファミリー

主人公: ブラッドリー(ブラッド)・ライオン(元サンフランシスコ市警察強盗殺人課の刑事)
場所:  USA、メリーランド州ボルチモア
グルメ: なし
動物:  イヌ:キッチナー(オールドイングリッシュ・シープドッグ)
ユーモア: 中
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