海外ミステリ専門書店。特に、イヌ、ネコ、その他の動物が活躍するのが好き。グルメも紹介。
ミステリ専門書店(翻訳もの限定)
ワニと読むミステリ(野兎を悼む春)
![]() | 野兎を悼む春 (創元推理文庫) |
アン・クリ-ヴス | |
東京創元社 |
![]() | Red Bones |
Ann Cleeves | |
Macmillan Publishers Ltd |
読むと、1つの発見から古い歯車が回り始めます。
(アン・クリ-ヴス著)
シェトランド四重奏のうち第三章です。
シェトランド署のサンディ刑事は祖母のミマに会いに小農場をたずね、そのミマの死体を発見してしまいます。ウサギ狩りの銃弾にあたって亡くなったようです。サンディ刑事はペレス警部とともに捜査し、ミマの死は誤って撃たれた銃弾による事故ということになります。ペレス警部はそこに納得のいかないものを感じもう少し調べてみることにします。ミマの小農場では考古学の学生たちがやってきて遺跡発掘をしていますが、そこから古い骨が掘りかえされています。数百年前の骨に交じって比較的新しい骨があり、はたしてこれはどういう経緯でここにあるのか、島の古い記憶が新たな光を浴びることになります。さらに遺跡発掘現場で新たな死体が発見されます。これは自殺との見方が有力ですが、ペレス警部はこれにも一抹の疑問を感じます。
事件はだんだんと島の住人の複雑な人間関係から愛憎の感情を明らかにしていきます。そしてはるか昔の疑問へとつながっていき、一つ一つを考えあわせてみると、その出来事の経緯がはっきりと見えてきます。
今回はペレス警部とサンディ刑事が主役で、前2作に登場するテイラー主任警部の出番はなし。サンディ刑事の家族関係などが事件の重要な要素を占めています。それにしても複雑に入り組んでいますね。なかなか関係が覚えられません。シェトランド島の自然や産業などが事件の進展とともに語られて、住民とともに海を眺めている気分になります。ただミステリとしては、事故?自殺?他殺?があいまいなのでちょっとそこをはっきりしてよ、と言いたくなるところもありますが、まぁそれがシェトランド島の特徴なのかもしれず油断なく手掛かりを見逃さないようにしましょう。
ペレス警部は前2作で関係を育んできた恋人フランとの今後についてくよくよと考えていますがなかなか次の一歩を踏み出すことができず、またそれが悩みとなっていましたが、最後にフランから爆弾があります。
シェトランド島四重奏の4冊目Blue Lightningはすでに出版されているようですので、翻訳が出るのがたのしみです。
Raven Black, White Nights, Red Bones, Blue Lightningとどれも色の名前がついているのですが、翻訳の題名も色をいれてほしかった。まぁ、無理な注文かもしれませんが。
■既刊
シェトランド四重奏の二冊は下記のとおり。
大鴉の啼く冬
白夜に惑う夏
主人公: ジミー・ペレス(シェトランド署の警部)
サンディ・ウィルソン(シェトランド署の刑事)
場所: イギリス、シェトランド島
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(サイモン・アークの事件簿III)
![]() | サイモン・アークの事件簿III (創元推理文庫) |
エドワード・D・ホック | |
東京創元社 |
読むと、しっかり見れば説明できます。
(エドワード・D・ホック著)
サイモン・アークの事件簿、3冊目です。8個の短編です。
超常現象かと思われる事件が起こり、サイモン・アークはオカルト探偵の腕を買われて事件現場に出向きます。
女子大で学生たちが魔法にかけられてしまったようで、さらに魔女が焼け死んでしまいます。
痛悔修道会(自らの身体を痛めつけることを信仰の手段にする)の信者が儀式を行っている最中に刺し殺されます。
刑務所として使われていた警備厳重な古城から、ナチスの戦犯が姿を消してしまいます。
などなど説明のつかない超常現象かと疑われる事件をサイモン・アークが次々に解決していきます。
巻末の解説によるとホック自身が選んだ作品はここまでだそうです。これでサイモン・アークのシリーズは終わってしまうのかと心配しましたが、第4巻は訳者の方の厳選した作品集になるそうです。作品チェックリストを見るとまだまだたくさんの作品があるので、4巻、5巻と期待できそうです。
■既刊
サイモン・アークのシリーズはすでに2巻出ています。
サイモン・アークの事件簿I
サイモン・アークの事件簿II
田舎医者のサム・ホーソーンのシリーズは、すでに6巻出ています。
サム・ホーソーンの事件簿IV
サム・ホーソーンの事件簿 VI
その他、夜の冒険があります。
■超常現象のミステリ
サイモン・アークを読むとどうしても幽霊探偵を思い出してしまいます。
幽霊狩人カーナッキの事件簿
人公: サイモン・アーク(オカルト探偵)
場所: 世界中
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(シャンハイ・ムーン)
![]() | シャンハイ・ムーン (創元推理文庫) |
S・J・ローザン | |
東京創元社 1,533円 (価格は変わる場合があります) |
![]() | The Shanghai Moon (Linda Chin/ Bill Smith) |
S.J. Rozan | |
Minotaur Books 1,315円 (価格は変わる場合があります) |
読むと、伝説は伝説のままに。
(S・J・ローザン著)
リディア・チンとビル・スミスの私立探偵コンビのミステリです。今回はリディアが主役。
私立探偵のピラースキーからリディアに協力要請が入ります。ある宝石を探しているのだが、関係者に中国人が多いのでリディアに手伝ってほしいというのです。リディアがチャイナタウンで調査を始め、ピラースキ―からの電話にこたえて彼を訪ねていくと、そこには射殺死体が。
事件を追っていくうちに、シャンハイ・ムーンと呼ばれる幻の宝石が絡んでいることがわかってきます。その来歴を調べるうちにリディアは第二次世界大戦でユダヤ人迫害から逃れ、シャンハイにたどりついた1人の少女の手紙を目にすることになり、少女のその後の生涯と宝石の関係が次第につながってきます。シャンハイ・ムーンは本当に実在したブローチなのか。長い年月をかけてその宝石を追い求める人たちの執念もあり、事件は壮大なスケールに発展します。
話は現在のニューヨーク、チャイナタウンにおける盗まれた宝石の追跡劇と、ユダヤ人迫害から逃れるために両親のもとを離れてシャンハイに向かう少女とその弟の数奇な運命とが互い違いに語られて、ドキドキするようなドラマが展開します。シャンハイに行きついた少女たちがその後どうなったのか、多くは少女がついに会うことがかなわなかった母に宛てた手紙から知ることになりますが、戦争の悲しい現実とその中でもうれしい恋物語と、現在と過去を行きつ戻りつしながらミステリは次第に解決へと向かっていきます。
ユダヤ人の少女の手紙が切ないですね。
S・J・ローザンの巧みな語りでついこれがミステリなのを忘れてしまいそうになりますが、事件解決の手掛かりは随所に示されているので、それをお見逃しなく。
それにしてもつい読みふけってしまうようなミステリです。
主人公: リディア・チン(私立探偵)
ビル・スミス(私立探偵)
場所: USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(装飾庭園殺人事件)
![]() | 装飾庭園殺人事件 (扶桑社ミステリー) |
ジェフ・ニコルスン | |
扶桑社 980円(価格は変わる場合があります) |
![]() | The Knot Garden |
Geoff Nicholson | |
Hodder & Stoughton Ltd 2,007円より (価格は変わる場合があります) |
読むと、一番知っているのは本人、たぶん。
(ジェフ・ニコルスン著)
リチャード・ウィズデンは高名な造園家です。ロンドンのハンコック・ホテルで死体で発見されます。睡眠薬自殺と思われますが、それに納得のいかない妻リビーは独自に調査を始めます。リチャードに関係する人々、またはリビーが調査を依頼した人々がそれぞれの視点からリチャードを、そして彼の死を語ります。妻のリビー、リチャードの亡くなったホテルの警備責任者、娼婦、リビーの友人で医者、リチャードの昔の愛人とその息子、英文学教授、銀行家、カメラマン、ジョークショップの店長、俳優、サンチャゴ・インのフロント嬢、ハーブ園芸家、著名な実業家、そしてリチャード自身。
リビーは彼の書いたものや写真からもて手掛かりを得ようとします。そして調査が進むにつれそれぞれの関係者の運命も変化していきます。
ちょっと奇妙なお話です。リチャードを知っていた人、あるいは知らなかったけれどもその彼の表現したもの、書き物や写真から知った人、など、さまざまな人々が彼について知りえたことを語るのですが、それはリチャードの一部であり、それらがジグソーパズルのようにだんだんと全体を構成していきます。しかし、最後のピーズをはめるのはリチャード本人です。
造園家の殺人事件ですが、登場人物の語りに魅せられて、事件解決に向かっているのだということを忘れてしまいそうです。親しくしていた人でさえ、なんとその人のほんの一部しか知らないということを発見するのは驚きであり裏切られたような理不尽な気持ちにもなります。
本の訳者あとがきによると、ジェフ・ニコルスンは1953年イギリスシェフィールド生まれ。ケンブリッジ大学で英文学を学び、エセックス大学で映画と演劇を専攻。教師、ゴミ収集人、家具のセールスマン、警備員などの職を経て、TVやラジオのシナリオやコント台本を執筆。1987年にフォルクスワーゲン・フェチの男のロードノベル長編Street Sleeperでデビュー。この作品は長編の第2作だそうです。
主人公: リチャード・ウィズデン(造園家)
場所: イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(夏の夜のわるい夢)
![]() | 夏の夜のわるい夢 (創元推理文庫) |
ジェイニー・ボライソー | |
東京創元社 945円 (価格は変わる場合があります) |
![]() | Killed in Cornwall |
Janie Bolitho | |
Allison & Busby |
読むと、閉じ込められたものは外にでます。
(ジェイニー・ボライソー著)
コーンウォール・ミステリ第6弾。もう6冊目なんですね。
ローズ・トレヴェリアンはコーンウォールに住み、画家で、絵画教室の講師でもあります。ジャック・ピアース警部と付き合いがありますが、二人の仲はあまり進展していません。
夏の夜に若い女性が襲われるレイプ事件が起きます。ジャックは懸命に捜査しますが、なかなか犯人特定につながるものがでてきません。
ローズは絵画教室に通う生徒の一人から相談をもちかけられます。彼女の娘が何か悩みがあるらしい様子だが、たずねても話してくれないと。その娘の友人がレイプ事件の被害者らしいのです。事件当夜の被害者の行動に何か関係しているらしいと思われるのですが、少しも話してくれません。そこでまた別の女性が襲われて殺されてしまいます。住民はみな不安な気持ちで生活しています。
小さな町なのでみなそれぞれに知り合いで、ローズは何かと相談を受ける立場になり、ジャックよりも事件に深入りしていくようになります。心配なジャックは止めるようにローズに頼みますが、そこは意地っ張りなローズなので、だんだんと独自に推理を進めていき犯人に迫っていきます。
シリーズも6作目で、ローズを巡る人々もすっかりおなじみになってしまいました。
ちょっと変化があって、カードショップ店主のバリー・ロウが内気な性格に立ち向かい、家の改装に踏み切ります。茶飲み友達もできそうです。ローズの両親も病の兆候があったりで、これまで通りとはいかないようです。
ローズも別の男性と関係ができ、ジャックとの仲も変化の兆しです。
なんといってもコーンウォールの美しい景色や住んでいる人たちの温かい気持ちが作品全体に流れていて心が和むようです。誰か亡くなった人があればみんなが駆け寄って遺された人を助けようとしますしね。
シリーズは次の7作目でおしまいのようです。それぞれの人たちはどのように落ち着くのでしょうか。
特にローズとジャックはうまくやっていくことができるのでしょうか。どうしてジャックがそれほどローズに惹かれるのか、首をかしげるようなところもありますが。
■既刊
容疑者たちの事情 ← パーティに招かれたところで、女主人が墜落死します
しっかりものの老女の死 ← しっかりものの老女がなくなって警察は自殺と判断します
クリスマスに死体がふたつ ← 廃坑から女性の悲鳴が響きます
待ちに待った個展の夜に ← ローズの初めての個展です
ムーアに住む姉妹 ← ある姉妹から肖像画の依頼があります
■コーンウォールつながり
スケルトン探偵ギデオン・オリヴァー(アーロン・エルキンズ著)も、コーンウォールに行ってますね。遺体探知犬が活躍します
骨の城
ポアロもコーンウォールに滞在していました。
エンド・ハウスの怪事件
これはアメリカ、コネティカット州のコーンウォールです。メアリ・H・クラーク著。
20年目のクラスメート
主人公: ローズ・トレヴェリアン(画家)
場所: イギリス、コーンウォール
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(幸運を招く男)
![]() | 幸運を招く男―私立探偵ジョー・シックススミス (ハヤカワ ポケット ミステリ) |
レジナルド・ヒル | |
早川書房 |
![]() | Blood Sympathy |
Reginald Hill | |
Harper |
読むと、わかってみれば単純です。
(レジナルド・ヒル著)
ジョー・シックススミス、40歳ちょっと手前のさえない中年男です。ルートンの工場で働いていましたが不況で首になり、しかたなく探偵事務所を開きました。が、ほとんど依頼人はいません。依頼人が来たと思うとこれがどうもおかしな人たちばっかりです。
ノックもせずに入ってきた男は保険会社に勤めるまじめな人物に見えたのですが、話はじめると、『妻を殺すことについて、相談したいんだが』。ジョーはぞっとしますが、よく聞いてみると毎夜家族を殺す夢を見るのだという。ジョーはホッとしますが夢の話では依頼にもなりません。
同じく首になった元整備工で現在タクシーの運転手をしているマーヴが連れて来たのは、夫が入国の時に足止めをくらってしまい、どうしたらよいか途方にくれているインド人女性とその子どもたちです。密輸の疑いがかかっているらしい。
さらにジョーの元にやってきたのは、夫の浮気相手が自分に呪いをかけて殺そうとしているので、なんとか呪いの元を取り除いてほしいというあっけにとられるような依頼です。
これだけでも大変なのにミラベル伯母は次々とジョーに結婚相手を探してきて会わせようとします。
ダルジール警視のシリーズで知られているレジナルド・ヒルの新しい私立探偵ジョー・シックススミスのシリーズ第1作目です。ダルジールと違い、人が良くて気弱。推理も間違えてばっかりです。探偵になりたてなので、聞き込みの要領も悪く、第一何を聞いたらよいのかもわかりません。
ワニは第2作目の探偵稼業は運しだいから読みましたが、その時何度も格言とともにでてくるミラベル伯母がこの最初の作品でしっかりと描かれていて、人物像がよくわかりました。ベリルとの出会いもなんだか笑ってしまいます。
ジョーの推理はハズレてばかりですが、いつの間にか真相に近づいています。このあたりの話の展開がさすがにレジナルド・ヒルですね。手掛かりはあちこちにあり。どのくらいしっかりと事件を見極めることができますか。
このシリーズは長く続けてほしいです。
主人公: ジョー・シックススミス(私立探偵)
場所: イギリス、ルートン
グルメ: なし
動物: ネコ:ホワイティ(ジョーが飼っている黒猫)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(緋色の十字章)
![]() | 緋色の十字章 (警察署長ブルーノ) (創元推理文庫) |
クリエーター情報なし | |
東京創元社 |
![]() | Bruno, Chief of Police: A Novel of the French Countryside (Vintage) |
クリエーター情報なし | |
Vintage |
読むと、決して許せないこともあります。
(マーティン・ウォーカー著)
ブルーノはフランス南西部の村サンドニの警察署長、ただし警官は彼一人。サンドニは人口約3000人、風光明媚で静かなところです。そんな穏やかな村で戦争の英雄であり戦功十字章を受けたアルジェリア人の老人が殺されます。しかも胸にナチスの鉤十字を刻まれて。そして壁にかけられていた勲章も消えています。いったい誰が戦争の英雄の老人を殺す必要があったのか。ブルーノは初めての殺人事件の捜査に加わることになります。
フランスの田舎の暮らしがとても魅力的に描写されています。ブルーノの作る料理がとてもおいしそうですね。「ラ・マルセイエーズ」を歌いながらステーキを焼くところが絶品です。歌の進行で焼き加減を決めているというのがいかにもおいしそうで、舌舐めずりしそうになりますね。
事件は憲兵隊が主導権を握ることになり、ブルーノ署長は捜査班の一人にすぎない存在になりますが、そこは小さな村のこと、よそからきた憲兵隊には村の人たちから何も聞き出すことはできません。村に住むブルーノでなければ本音を探り出すことはできませんね。
大戦中のレジスタンス運動での確執がまだ尾を引いていまだに絶対に口を利かない仲の人たちがいるという濃厚な人間関係の土地柄がブルーノの目から語られていて、それぞれが個性的な人物で読んでいるうちにいつの間にか自分も住んでるような気になってしまいます。パンはどこで買おうかなとか考えてしまいます。
EU法の検査官たちをあの手この手で村人たちが撃退するところは笑えます。
最後の事件の解決も、サンドニ村なら許されるような気がします。
本の解説によると、マーティン・ウォーカーはジャーナリストで英国ガーディアン紙に25年勤めていたそうです。ドルドーニュに家を持ち夏の間過ごしているそうです。それでサンドニが舞台のミステリを書いたのでしょうか。
フランスの戦争の歴史が語られているのですが、アルジェリア人がフランスとどうかかわっているのか、この本を読むとわかってきます。難しいですがヨーロッパの歴史を理解する一助になりますね。
主人公: ブノワ・クレージュ(ブルーノ)(サンドニの警察署長)
場所: フランス、ぺリゴール地方ドルドーニュ県サンドニ
グルメ: フランス田舎料理
動物: イヌ:バセットハウンド(ジジ)ブルーノの飼い犬
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(ほかほかパンプキンとあぶない読書会)
![]() | ほかほかパンプキンとあぶない読書会 卵料理のカフェ3 (RHブックス・プラス) |
ローラ・チャイルズ | |
武田ランダムハウスジャパン |
![]() | Bedeviled Eggs (A Cackleberry Club Mystery) |
Laura Childs | |
Berkley |
読むと、勝つためにはなんでもします。
(ローラ・チャイルズ著)
卵料理の店〈カックルベリー・クラブ〉のシリーズ第3弾です。
スザンヌ、トニ、ペトラの3人は卵料理の店を経営しています。
今日は読書会というお見合いパーティが行われ、店は読書好きの男女であふれています。途中で口論があったもののパーティは無事に終わり、スザンヌは最後まで残っていたチャック・ピーブラーと店を出ます。チャックは今度の町長選の候補者です。店を出たとたんにチャックは矢で眉間を射られて殺されてしまいます。スザンヌ自身も次々と飛んでくる矢をよけて店に駆け込んでやっと難を逃れます。
読書会で口論になった女性が容疑者の一人となり、また〈カックルベリー・クラブ〉が事件現場になったことから客足が減るのではないかと心配し、スザンヌは犯人探しに乗り出します。町はハロウィーンの準備で忙しく、特別イベントの〈キルト・トレイル〉も行われています。それの見学に行ったスザンヌたちはなかなか場所を見つけることができず迷い込んだところで、また死体を見つけてしまいます。
連続殺人なのか?
今回はハロウィーンの季節が舞台です。イベントが目白押しで〈カックルベリー・クラブ〉でのハロウィーン・パーティの準備もあり、スザンヌたちは大忙しです。特別な料理を考案したりして、とてもおいしそうです。それらのレシピも巻末にあります。ローガン郡の小さな町はアットホームな雰囲気ですが、町長選は熾烈のようです。現町長と町長候補に対する支持は拮抗しています。選挙の行方も気になりますね。先回の作品からスザンヌが付き合い始めたサム(医師)との仲も少しずつ進んでいるようでちょっとほほえましいです。
今回の作品で驚いたのはトニのダメ夫ジュニアの意外な活躍です。これまではまったくの役立たずでみんながどうしてトニはさっさと手を切らないのかと首をかしげていましたが、ジュニアはこの事件の解決にちょっとした働きをします。このあたりの展開はユーモラスで読んでいて笑ってしまいます。
スザンヌの周りの人たちがみんな個性的でいろいろな活動をしています。小さな町の出来事を楽しみながら読めますね。特に推理は必要ありません。まぁ、これが犯人でよかったな、やっぱりね、とそんな感じでしょうか。
殺された町長候補のチャックの名前が登場人物一覧に載ってないのはなぜでしょうか。
■既刊
〈カックルベリー・クラブ〉のシリーズはすでに2巻でています。
あつあつ卵の不吉な火曜日 ← 日替わり卵メニューをテイクアウトした弁護士が、店の駐車場で殺されます
チェリーパイの困った届け先 ← チェリーパイを取り置きしていった葬儀屋のオジーが殺されます
ローラ・チャイルズには別のシリーズがあります。インディゴ・ティーショップのオーナー、セオドシア・ブラウニングが主人公です。こちらは紅茶に関するウンチクが満載です。
ダージリンは死を招く
その他。
主人公: スザンヌ・デイツ(カックルベリー・クラブの経営者)
場所: USA、中西部キンドレッド
グルメ: 家庭料理
動物: イヌ:バクスター(スザンヌの愛犬、アイリッシュ・セッター)、
スクラッフ(コリーとシェパードの雑種)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(水晶玉は嘘をつく?)
![]() | 水晶玉は嘘をつく? (創元推理文庫) |
アラン・ブラッドリー | |
東京創元社 |
![]() | A Red Herring without Mustard (Flavia De Luce Mystery) |
Alan Bradley | |
Orion (an Imprint of The Orion Publishing Group Ltd ) |
読むと、骨董品にご注意。
(アラン・ブラッドリー著)
フレーヴィア・ド・ルースはバックショー荘に住む11歳の化学大好き少女。ジプシーの占いのテントで手相をみてもらっているときにジプシーの言葉に動揺したフレーヴィアは過ってジプシーのテントを燃やしてしまいます。申し訳なく思ったフレーヴィアはバックショー荘の敷地内にジプシーの幌馬車を連れていき、そこに留まるように言います。翌日フレーヴィアが行ってみるとジプシーは血を流して横たわっていました。誰のしわざ? ジプシーの肉親として呼び寄せられたのはポーセリンという孫娘。行きどころのない彼女をフレーヴィアは館にかくまいます。バックショー荘に夜中に入り込む男があり、なんとか撃退したと思ったら、今度はポセイドン像のところで死体を発見し。フレーヴィアは愛車(自転車)のグラディスに乗って事件解決のため捜査を開始します。
化学大好き少女フレーヴィアのシリーズ3作目です。
ド・ルース家の財政逼迫はだんだんとひどくなり、いよいよ財産に手をつけないといけないような状況になってきました。このままバックショー荘を維持していくことができるのでしょうか。心配ですね。
フレーヴィアと2人の姉の関係は相変わらずで、フレーヴィアがいたずらすれば姉たちが報復し、それにフレーヴィアが仕返しするという終りのない戦争が続いています。それでも姉たちはフレーヴィアのことを気にかけて危ないところにかかわらないように手を回したりしますが、なかなかフレーヴィアにはそれが理解できません。
子どもを連れ去ったとジプシーを非難する人。それらには非国教徒のホブラーの存在がかかわってきます。宗教問題は難しいです。
バックショー荘にはご先祖様が作った巨大な像や水を使った設備などがありますが、今回はそれらが謎を解くカギになります。それに骨董品も窃盗、模造品の被害にあい、それらの犯罪組織の一味が存在するようです。
フレーヴィアの亡くなった母ハリエットの思い出につながるものが発見され、涙してしまいます。
1950年代のイングランドの生活が見えて、とても楽しく読むことができます。
■既刊
すでに2巻出版されています。
パイは小さな秘密を運ぶ
人形遣いと絞首台
フレーヴィアのシリーズはまだまだ続くようです。
化学大好き少女はどう成長していくのか、それを見るのもこのシリーズの楽しみです。
主人公: フレーヴィア・ド・ルース(11歳の化学大好き少女)
場所: イギリス、イングランド
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(でぶじゃないの、骨太なだけ)
![]() | でぶじゃないの、骨太なだけ (創元推理文庫) |
メグ・キャボット | |
東京創元社 | |
¥1,050(価格は変わる場合があります) |
![]() | Big Boned (Heather Wells Mysteries) |
Meg Cabot | |
William Morrow Paperbacks | |
¥1,023(価格は変わる場合があります) |
読むと、欲をださずに譲ることも肝心。
(メグ・キャボット著)
ヘザーは元うれっこポップ歌手で今はニューヨーク大学フィッシャー寮の副寮母をしています。元婚約者のお兄さんクーパーの家に居候していますが、出所してきた父親も同じくこの家に住んでいます。 クーパーへの恋心が実らないままに、ヘザーは数学部助教授、ヘザーの補講担当タッドとお付き合いをしています。しかし教員とその生徒との恋愛はご法度。二人はこっそりと会っていますが、なぜかヘザーはタッドと早朝ジョギングをすることになってしまいます。サイズ14のヘザーには拷問にも等しい運動です。へとへとになって出勤してみれば、そこにはまたしても死体が。大学構内では院生組合が待遇改善を訴えてストライキに突入しそうな気配です。そしてその関係者が容疑者と目されて。ヘザーはまたしても殺人事件に巻き込まれてしまいます。
ヘザー・ウェルズのシリーズ第3弾です。
ニューヨーク大学では院生組合が自分たちの大学での職場の待遇改善を求めての大学との交渉を進めていますが、なかなか主張が通りません。学生でありながら大学でアルバイトをしたりするんですね。寮のバイトのサラもその一人です。いつもは散々ヘザーの心理分析をしてくれるサラですが、今回は院生組合のリーダーに恋をして、あまりヘザーのことに関心を向ける余裕はなさそうです。
大学内の殺人事件で、いろいろな大学に仕組みが語られるのが日本との違いもあって興味深いです。
ヘザーの周りでは、出所してきた父親が新たな事業を立ち上げてクーパーの家から引っ越していこうとしていますが、いかにも能天気な父親がおかしいです。それに恋人タッドの健康おたくぶりも、これで少々太めのヘザーがタッドの影響で引き締まったボディになるのか、そしたらちょっとつまらないかも、と心配になります。
ヘザーも副寮母としての貫禄が増してきて、この殺人事件にも冷静に対処しています。ずいぶん成長したものです。
事件解決ではまたしてもヘザーは危ないことになりますが、クーパーの助けは間に合うのか。まぁ、だいたいはよそ見をしている隙に消えてしまうとかいう展開ですね。そんなもんでしょ。
現在メグ・キャボットはヘザーのシリーズ第4弾、第5弾を執筆中だそうです。
これからヘザーがどう成長していくのか、また歌の世界に戻るのか、それもこのシリーズのおもしろさです。
■既刊
すでに2巻あり。最初はサイズ12でしたが、のちにサイズ14になり。
サイズ12はでぶじゃない
エレベーターサーフィンという恐ろしく危険な遊びが流行っています。
サイズ14でもでぶじゃない
寮の厨房で殺人が発覚します。いろんな学生クラブがでてきます。ヘザーはサイズ14になってしまいます。
主人公: ヘザー・ウェルズ(ニューヨーク大学の学生寮の副寮母。元ポップ歌手)
場所: USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物: イヌ:ルーシー(ヘザーの飼い犬。雑種犬)
ネコ:ガーフィールド
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(三本の緑の小壜)
![]() | 三本の緑の小壜 (創元推理文庫) |
D・M・ディヴァイン | |
東京創元社 | |
¥1,155(価格は変わる場合があります) |
![]() | Three Green Bottles |
Dominic Devine | |
HarperCollins Distribution Services | |
¥3,983(価格は変わる場合があります) |
読むと、決めつけ、思い込みは危険。
(D・M・ディヴァイン著)
マンディ・アーミテイジは診療所長の娘で、診療所の秘書兼受付をしています。美しい容姿をもっていながらなぜかいつも地味な目立たない格好をしています。恋愛をしてもいつも邪魔をされ、実ることはありません。マンディには腹違いの妹シーリアがいますが、発育に問題があり、13歳ながら2つ下のクラスで勉強しています。シーリアたち女の子は夏休み前のある夜、水浴に出かけます。遊び疲れてすっかり遅くなった少女たちは大急ぎで家に帰りますが、ただ一人の少女だけは家に帰らず、翌日ゴルフ場で全裸死体で発見されます。小さな町は大騒ぎになりますが、やがて診療所の一人の医師の犯行ではないかと疑われます。その医師は何かを考え込んでいるようでしたが、崖からの転落死体で発見されます。犯行を苦にした末の自殺とみられますが、葬儀に現れた医師の弟マークは疑問を感じ、乞われるままに診療所の医師として働くことにします。もう事件は終わったと町の人々がほっとしていたところで、また一人の少女が殺されて同じくゴルフ場で発見されます。さらにガイ・フォークス・ナイトで事件は続きます。被害者の共通点はいずれも13歳の少女だというだけで犯人の動機はつかめません。
またディヴァインの作品が読めるのは実にうれしいことです。
イギリス北部の小さな町のできごとで、夏休み前のやる気のないときに宿題をもっと書きなおそうかどうしようかと迷う少女の様子から始まります。なんということもない学校での成績競争などの少女の気持ちが語られていくのですが、そこはディヴァインなので、なんとなく不安な気持ちにさせられます。のっけからこんな風にミステリ気分にさせてもらえるというのはミステリファンとしてとてもうれしいです。
物語は3人の人物の視点から語られていきます。マンディ、マーク、シーリアはそれぞれの見方で出来事を語りますが、少しずつ違っているので読者としてはどこに真実があるのかと、余計に首をひねるという楽しいおまけ付きです。
イギリス北部の小さな町はだいたいみんな知り合いで、その中に殺人者がいるのかと思うと住民はみな不安な気持ちになるけれども、まさか友人が殺人者ということはないだろうという根拠のない勝手な思い込みから事件に巻き込まれていく様子や、手掛かりを見逃してしまうところなど、ぞくぞくするほどうれしい展開です。
しかし13歳の少女たちが親の同伴もなく夜遅くまで外で遊んでいるというのは不思議な感じがしますが、イギリスではそうなのでしょうか。
これは1972年に出版された作品です。そのころのイギリスはこんなだったのかなと思いながら読むのもおもしろうでしょう。
それに頼りない兄としっかりものの弟という兄弟の関係も一見冷えた兄弟関係に見えながら、実は深い信頼と愛情に満ちていたというのも、ディヴァインが書くととてもよく伝わってきます。
題名の“三本の緑の小壜”は、イギリスの童謡“Ten Green Bottles”からとられているようです。
次の翻訳は、Sunk Without Traceだそうです。早く読みたいです。
■ディヴァイン既刊
悪魔はすぐそこに
ウォリス家の殺人
災厄の紳士
兄の殺人者
五番目のコード
ディヴァインは13作の推理小説を残しているので、まだまだ楽しませてもらえそうです。
主人公: マンディ・アーミテイジ(診療所の秘書兼受付)
マーク・ケンダル(診療所の医師)
シーリア・アーミテイジ(マンディの腹違いの妹)
場所: イギリス、北部
グルメ: なし
動物: イヌ:ベス(ラブラドール)
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(怪しいスライス )
![]() | 怪しいスライス プロゴルファー リーの事件スコア 1 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫) |
アーロン&シャーロット・エルキンズ | |
集英社 | |
¥600(価格は変わる場合があります) |
![]() | Wicked Slice |
Aaron & Charlotte Elkins | |
Fawcett | |
¥1,031(価格は変わる場合があります) |
読むと、曲がるにはわけがある。
(アーロン&シャーロット・エルキンズ著)
リー・オフステッドはプロゴルファーになって1年目の新人女子プロです。まだランクは高くなく、やっと生活できる程度で、経費を切りつめるためにあらゆる努力をしています。プロとアマチュアが組んで試合するトーナメントに出ていますが、なかなかスコアが伸びません。そのゴルフ場でスター選手ケイトの死体を発見してしまいます。ケイトはその言動からあまり周りの人たちから好かれていたとは言い難い人物でしたが、それで殺そうとするまでに憎まれるとも思えません。事件を担当するのはグレアム警部補ですが、彼はゴルフをまったく知りません。リーは容疑者にされそうになったり、またケイトとは親友といえるほどではないにしても他のゴルファーよりは親しい間柄でもあり、グレアム警部補がゴルフに無知なゆえに間違った方向に行くのではないかと心配になり、自分なりに捜査を始めようとします。しかし、トーナメントで一緒の組になったアマチュアゴルファーのペグ(経営コンサルタント)は、生来のおせっかいで、さらにリーとともに死体を発見したことやで、自分も捜査に参加すると言い出します。二人はゴルフ関係者に聞き込みを始めますが、捜査には不慣れなため、なかなかうまくはいきません。その間もトーナメントの試合は続き、リーはスコアも気になりますし、グレアム警部補も気になります。犯人はゴルファーなのか、その他の関係者なのか。ゴルフトーナメントはたくさんの人たちが出入りして、犯行の機会も多く、犯人特定に苦労します。そしてさらに殺人が起こり、ますます推理は難航します。
ゴルファーが探偵というミステリは初めてです。
アーロン・エルキンズといえばスケルトン探偵のギデオン・オリヴァーのシリーズを思い浮かべてしまいますが、これは奥さんのシャーロットとの共著によるゴルフ界を舞台にしたミステリです。シリーズ化されていて、すでに4作出版されているそうです。リーは20代でまだプロになって一年目、しかもゴルフを始めたきっかけはアメリカ陸軍在籍中に抽選で週末ゴルフの権利をあててからというもので、子ども時からゴルフをしていたという多くのプロゴルファーとはその最初からして違います。この陸軍時代については後続のシリーズで語られるのでしょうか。ちょっと面白そうな気もします。
殺されたケイトはランクが上、かなり上、それに比べてリーはまだ100位くらいをうろちょろするくらいの選手です。このあたりの生活の違い、シード権獲得の仕組み、スポンサー契約の仕方など、ゴルフ界についてのことが覗き見られるのが面白いですね。
作品中にモントレーの名物としてチョッピーノという食べ物がでてきますが、それはこのようなものだそうです。
チョッピーノ(Cioppino) → http://en.wikipedia.org/wiki/Cioppino
日本で食べられるところがあるのでしょうか。
この後の作品でも、引き続きペグもグレアムも出てくるようなので、これらの人たちとの関わりがどうなるのかも楽しみです。
プロゴルファーの東尾理子氏による解説が巻末にあります。
■アーロン・エルキンズの著書
スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーのシリーズです。
骨の島
水底の骨
骨の城
密林の骨
原始の骨
騙す骨
主人公: リー・オフステッド(女子プロゴルファー)
場所: USA、カリフォルニア州モントレー
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(天使のテディベア事件)
![]() | 天使のテディベア事件 (創元推理文庫) |
ジョン・J・ラム | |
東京創元社 | |
¥1,050(価格は変わる場合があります) |
![]() | The False-Hearted Teddy: A Bear Collector's Mystery |
John J. Lamb | |
Berkley | |
¥663(価格は変わる場合があります) |
読むと、愛憎は入れ替わります。
(ジョン・J・ラム著)
ブラッドリーは元殺人課の刑事、ケガがもとで今は退職しています。愛妻アシュリーはテディベア作家で、二人はボルチモアで開かれる由緒あるテディベア・ショーに来ています。アシュリーは《スウィーツ・コレクション》を出展しますが、ブラッドリーも初めての作品“ダーティベアリー”を出します。会場に着いたとき、ケンカしている夫婦をみかけたブラッドリーは止めに入りますが、女性はどうやら夫から暴力をふるわれているらしい。その女性が有名な《にっこり天使のテディベア》の作者だとわかりますが、やはりショーに来ていた別のテディベア作家が激しく彼女をなじります。会場にあふれるかわいいテディベアたちですが、作家の間にはいろいろと問題があるらしい。そしてショーのパーティで事件は起こり、テディベア作家が命を落とします。容疑者にされそうになったブラッドリーは自ら捜査に乗り出しますが、テディベアのライセンス契約などもからみ、なかなか複雑です。
テディベアのシリーズ2冊目です。
今回はブラッドリーとアシュリーはテディベアのショーに来ていますが、こんなショーがあるとは知りませんでした。解説などを読んでみると、こういうショーは結構たくさんあるらしいです。毎年8月にニューヨーク州ビンガムトンでショーが開かれるそうですが、詳細はウェッブサイトで見てください(http://www.tbai.org/)。背景がかわいいですね。それと、10月27日はテディベアズ・デーだそうです。
テディベアをライセンス契約して大量生産して売り出したり、アニメ化する話なども盛り込まれ、アメリカでのテディベア市場を垣間見ることができます。日本ではどうなんでしょうか。
コンテストでは二人の作品も候補になりますが、はたして賞を獲得することができるでしょうか。発表はドキドキものですね。
殺しの手口については、こういう方法があるとはワニは知りませんでした。
テディベア・シリーズは、もうすでに5冊目まで刊行されているようです。翻訳も早く追いついてほしいですね。
■既刊
嘆きのテディベア事件
「嘆きのテディベア」が行方不明になります。
■ボルチモアつながり
ローラ・リップマンの作品はボルチモアが舞台ですね。
あの日、少女たちは赤ん坊を殺した
こちらは私立探偵テス・モナハンのシリーズです。
ロスト・ファミリー
主人公: ブラッドリー(ブラッド)・ライオン(元サンフランシスコ市警察強盗殺人課の刑事)
場所: USA、メリーランド州ボルチモア
グルメ: なし
動物: イヌ:キッチナー(オールドイングリッシュ・シープドッグ)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(探偵稼業は運しだい)
![]() | 探偵稼業は運しだい (PHP文芸文庫) |
レジナルド・ヒル | |
PHP研究所 | |
¥900(価格は変わる場合があります) |
![]() | The Roar of the Butterflies |
Reginald Hill | |
Harper | |
¥752(価格は変わる場合があります) |
読むと、たくらみは誰かが見ている。
(レジナルド・ヒル著)
ジョー・シックススミスはちょっと腹の出た40代の私立探偵。ただぼんやりオフィスに座っているところに来たのは、クリスチャン・ポーフィリ。いかにも家柄育ちの良さそうなお坊ちゃんのクリスが冴えない探偵のジョーに依頼してきたのは、ゴルフで不正をしたとの疑いを晴らしてくれということ。ロイヤル・フ―・ゴルフ・クラブは加入審査の厳しい名門中の名門のゴルフ・クラブで、クリスは創設者の孫です。相談のためクラブでクリスと落ち合ったジョーはクラブに集う街の名士たちと会話をしますが、ゴルフに縁のないジョーには交わされる会話はちんぷんかんぷんで、大きな誤解をしてしまいます。不正の疑いを晴らすといってもその方法すら考え付きません。ジョーがゴルフ場をクリスに案内されていると、従業員の一人が無断で休みをとり連絡がつかなくて困っているとの話を聞き、クリスは担当役員に代わりの人員を手配するように依頼します。ジョーの友人の一人が今付き合っているのがクラブのアシスタント・プロと知り、内部事情を探ろうと話をしますが、ジョーはそれとなく行動を見張られているのをみつけます。さらに街の名士の一人が、ジョーにスペインでの仕事を依頼してきます。さっぱり事件の見当もつかないジョーですが、弁護士の友人や恋人の看護師らの推理に助けられ、少しずつ真相に近づきます。
レジナルド・ヒルというとすぐにダルジール警視のシリーズを思い浮かべますが、これは冴えない探偵ジョー・シックススミスが主人公のシリーズです。日本語訳はまだ3冊目だそうです。ダルジール警視のように嫌みでなく、ジョーは探偵稼業がうまくいっていない時でも、すぐに眠りにおちることができるというなんとものんきな性格です。探偵仕事のほうもそんな風で、推理はさっぱりですが、いきあたりばったり、友人の推測に流されたり、でもっていつの間にか真相に近づいていくというなんとも頼りない探偵です。
ジョーはミラベル伯母に厳しく育てられたということで随所にミラベルの格言がでてきます。なかなか役にたつものもあり、参考になりそうです。
事件はゴルフ・クラブで起こり、メンバーたちの特権意識やそれぞれの仕事で手を組むやり口など、相関関係は複雑です。事件の謎解きはしっかりと構成されているので、小さな手がかりが随所にちりばめられていますので、お見逃しのないように。
読み終わって事件解決してみると、なるほどそうだったのかと、納得できるエピソードが思い出されます。
プロボクサーに、振られた相手の新しい恋人ではないかと誤解され、7階のベランダからつりさげられて死ぬ思いをするところなど、怖い場面ですが思わず笑ってしまいます。脇役の下層階級専門の押しの強い弁護士や、ゲームでごまかしてばっかりの友人、看護師をしているしっかりした恋人など、周りを固める人々も個性豊かで楽しみながら読むことができます。
さすがにレジナルド・ヒルですね。
このシリーズの翻訳が続くことを望みます。
■ダルジール警視のシリーズ
ワニはあまり読んでいませんが(どれも長篇なので)、読みだすと止まらなくなります。
警視の部下、パスコー警部の活躍も見逃せません。
社交好きの女
幻の森
ダルジールの死
主人公: ジョー・シックススミス(私立探偵)
場所: イギリス、ルートン
グルメ: なし
動物: ネコ:ホワイティ(ジョーの飼っている黒猫)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(深煎りローストはやけどのもと)
![]() | 深煎りローストはやけどのもと コクと深みの名推理9 (RHブックス・プラス) |
クレオ・コイル | |
武田ランダムハウスジャパン | |
¥945(価格は変わる場合があります) |
![]() | Roast Mortem (Coffee House Mystery) |
Cleo Coyle | |
Berkley | |
¥575(価格は変わる場合があります) |
読むと、欠陥を作ってはいけません。
(クレオ・コイル著)
コーヒーハウス ビレッジブレンドのマネジャーのクレア・コージーはオーナーのマダムとともに友人のコーヒーハウスのカフェ・ルチアを訪れます。閉店後のカフェ・ルチアでグラッパを飲みながら歓談していると、爆弾が爆発し店は火事になり、クレアたちも負傷します。カフェ・ルチアのオーナーが保険金目当てに自分で放火したのではないかと疑われ、クレアは容疑を晴らそうと捜査を始めます。
その後もほかのコーヒーハウスが放火されるという事件が続きます。クレアのところには探るのを止めるようにとの警告がきます。
火事で出動した消防士の一人が現場で亡くなりますが、その死に疑問を持った同僚の消防士も亡くなります。一見自殺のようですが、クレアたちは他殺ではないかと疑います。さらに消防隊長も襲われて重傷を負い、それはクレアの恋人マイクの仕業ではないかと疑われます。
コーヒーハウスの放火と消防士の死、関連があるのか?
クレアは恋人マイクの容疑を晴らすべく、元夫マテオの協力を得て、事件の真相に迫ります。
ビレッジブレンドのシリーズ第9弾。
今回はコーヒーハウスが爆破されるというショッキングな場面から始まります。ニューヨークの消防隊の消火活動が詳しく描写され、装備や用具についてもいろいろと語られます。ニューヨーク市消防隊が今回のテーマですね。クレアは消防署にエスプレッソ・マシンの使い方を教えに行きますが、厨房があって消防署内で食事を作ったりもするんですね。
ニューヨークのコーヒーハウスの事情も語られます。だんだんと減って、いろいろな料理のテイクアウトの店などに変わっているようです。日本も喫茶店が減っていますが、同じような事情なのかもしれません。
クレアの恋人マイク・クィンは、ニューヨーク六文書の警部補ですが、ニューヨーク市消防局の隊長マイケル・クィンとはいとこ同士です。以前の作品でもでてきますが、この二人には昔からの確執があるようで、今回はこの確執の原因が二人の口から語られますが、一度誤解が生じるとなかなか修復は難しいようですね。
マイクが麻薬の捜査で忙しいので、クレアの元夫マテオがクレアとともに事件解決に活躍します。マテオの現妻は出張中。クレアとマテオの愛娘ジョイはフランスでシェフの修行中です。
すでに9作目で、登場人物の事情も少しずつ変化しています。
ステーキなどのレシピが巻末にあります。
■既刊
ビレッジブレンドのシリーズはすでに8冊あります。
名探偵のコーヒーのいれ方
事件のあとはカプチーノ
秋のカフェ・ラテ事件
危ない夏のコーヒー・カクテル
秘密の多いコーヒー豆
コーヒーのない四つ星レストラン
エスプレッソと不機嫌な花嫁
クリスマス・ラテのお別れ
■ティーショップなら
ビレッジブレンドはコーヒーハウスですが、ティーショップのミステリもあります。
こちらはサウスカロライナ州チャールストンのインディゴ・ティーショップのオーナー セオドシア・ブラウニングが主人公です。こちらはすでに10作品が翻訳されています。
最新作は、ウーロンと仮面舞踏会の夜です。チャールストンの街は仮面舞踏会の準備でうきうきしています。
主人公: クレア・コージー(ビレッジブレンドのマネージャー)
場所: USA、ニューヨーク
グルメ: コーヒーと料理
動物: なし
ユーモア: 中
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