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ワニと読むミステリ(荒野のホームズ、西へ行く)

読むと、憧れの対象にはさまざまあります。

(スティーヴ・ホッケンスミス著)
 “荒野のカウボーイ”シリーズの2作目になりますが、ワニは1作目を読んでいないのでこれが初めてのカウボーイ探偵ミステリです。
 時代設定は1893年、西部へ向かう旅客列車で起こる事件です。
 まだ列車はほとんど走っていない時代なので、ワニの苦手な時刻表トリックのようなややこしいのはなし。
 グスタフとオットーのカウボーイ兄弟は、鉄道会社に雇われて西部へ行く列車に乗り込みます。馬から列車に乗り換えたわけです。兄のグスタフは毎回珍妙な推理をするのですが字が読めないので、代わりに弟のオットーが事件の顛末を書き綴って出版社に送ります。
 列車内で殺人がおき、犯人は乗客に間違いないというところは“オリエント急行殺人事件”みたいですね。荒野を行く列車は列車泥棒の被害にもあい、車内ではいかさま賭博も行われており、この時代の荒っぽさが伝わってきて活劇映画をみている感じです。
 乗客も胡散臭いセールスマンは毒ヘビを荷物室に持ち込んでいるし、中国人医師も奇妙なふるまいをし、婦人参政権論者の若く美しい女性は妙に肝っ玉が据わっている。普通の中年女性かと思いきや、手連のいかさま師だったり、ごく当たり前のように拳銃をとりだします。飲んだくれの探偵は、職場放棄するのかと思いきや意外とまじめだったり。
 時代背景を見るだけでも面白いですが、このグスタフとオットー兄弟の都会やハイテクにてんで弱いところなど、何度も笑ってしまいます。お互いになんのかんの言いながらも、常に気遣って相手を心配する気持ちが伝わってくるのもほろりとしていいですね。
 最後は運転席が乗っ取られ、疾走する列車の内と屋根で壮絶な戦いが繰り広げられます。
 はたしてサンフランシスコまで無事にたどりつけるのでしょうか。

主人公: グスタフ・アムリングマイヤー(オールド・レッド) (カウボーイ)
場所:  USA
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中


荒野のホームズ、西へ行く (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1825)
スティーヴ・ホッケンスミス
早川書房

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ワニと読むミステリ(ポーに捧げる20の物語)

読むと、怪異の種はつきまじ。

(スチュアート・M・カミンスキー編)
 20篇の短篇集です。
 ポー生誕200周年記念アンソロジー。いずれもポーの作品にちなんだ内容になっています。
 ポーによる原作を読んでいない方も多いでしょうが、原作を知らなくても十分に楽しめます。知っていればもっと楽しめるでしょう。
 作者は、メアリ・H・クラーク、トマス・H・クック、エドワード・D・ホック、ピーター・ラヴゼイ、S・J・ローザン、ドン・ウィンズロウなど。これだけみても内容が期待できますね。
 ホラーになっているもの、ユーモアのあるもの、涙を誘うもの、など、20篇それぞれに特徴がありますので、1つ1つをじっくりと味わってください。

主人公: 多数
場所:  多数
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小


ポーに捧げる20の物語 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1831)
ピーター・ラヴゼイ,トマス・H・クック,ドン・ウィンズロウ,他
早川書房

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ワニと読むミステリ(バレンタインは雪あそび )

読むと、手抜きはいけません。

(レスリー・メイヤー著)
 主婦探偵ルーシー・ストーンのシリーズも5冊目。
 ルーシーとビルの4人の子供たちもだんだん大きくなり、ルーシーは週刊新聞の臨時記者をやるようになりました。さらに今度は図書館の理事も引き受けてしまい、今日は初の理事会参加です。
 理事長は元ウィンチェスター大学の学長、その他の理事たちは、ケータリング業者、弁護士、アンティーク店経営者、建築請負業者など多彩です。もちろん前の司書だったティリーも理事の一人です。理事の間には、敵味方関係があるらしく、議論はなかなかに紛糾します。さらに現在の司書ビッツィと理事たちの間もなにやら問題があるらしい。
 新米理事のルーシーは、ちょっと姿の見えなくなった司書のピッツィを探しに図書館内の作業室にいきますが、そこで死体を発見してしまいます。司書として一生懸命に働いていたピッツィをいったい誰がどんな理由で殺さねばならなかったのか。
 第一発見者のルーシーは、ホロヴィッツ警部補から容疑者にされてしまいます。自分の容疑を晴らすべく、また記者魂も燃え上がり、ルーシーは事件に挑んでいきます。
 雪の積もったスロープをソリで楽しく滑る子どもたちに襲いかかろうとしているのか、不気味なSUVが現れて、ルーシーは気が気ではありません。おまけにバレンタインに時期でもあり、その準備もしないといけないし。
 子どもが4人もいるルーシーは、季節の行事をこなすのも大変。
 事件を調べると、無害と思っていた司書のピッツィの別の側面も現れ始め、犯人と疑わしい人物はだんだんと増えてしまいます。
 図書館の宝物として大切に保管されていたタンカードも疑惑に巻き込まれて。
 既刊は、こちら。
 メールオーダーはできません
 トウシューズはピンクだけ
 ハロウィーンに完璧なカボチャ
 授業の開始に爆弾予告

■タンカード
あまり日本では見ないので、どういうものかイメージがわかなかったので調べたらこんなものでした。ときどき外国のお土産屋さんで見ますね。
ピューター金メッキ(ロイヤルセランゴール社製)

ロイヤルセランゴール

ビールがおいしそう


■主婦つながり
 マタニティ・ママは名探偵 ← 元官選弁護人、第2子妊娠中
 飛ぶのがフライ ← 主婦探偵ジェーン・ジェフリーのシリーズ
 カオスの商人 ← これもジェーン・ジェフリー
 
主人公: ルーシー・ストーン(ミステリ好きの主婦)
場所:  USA、メイン州ティンカーズコーヴ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中

バレンタインは雪あそび (創元推理文庫)
レスリー・メイヤー
東京創元社

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ワニと読むミステリ(ロワイヤル通りの悪魔憑き)

読むと、欲深いのはいけません。

(ジャン=フランソワ・パロ著)
 ニコラ警視のシリーズももう3冊目。1作目ではまだ年若く経験もなかったニコラですが、すっかり壮年になりました。成長しましたね。
 今回は、1770年、王太子とオーストリア皇女マリー・アントワネットの成婚祝賀式の模様から始まります。盛大な花火大会が催されるというので、みんなこぞってルイ十五世広場(現コンコルド広場)に集まりますが、警備はおざなりでまったく交通整理も行われていません。そこで花火が暴発し、逃げまどう人たちで大混乱に陥ります。
 ニコラは警備を担当していないにもかかわらず、義務感から群衆の中に飛び込みなんとか事態を収拾しようとします。
 あちこちの辻には犠牲者たちの死体の山。その中でニコラは若い女性の扼殺死体を発見します。あきらかにこのパニックの犠牲者ではなく殺されたあとにここに置かれたようです。
 その過程で出会ったのが、悪魔がとりついて奇妙な現象を起こしているという毛皮商の一家です。邪悪なものに憑依されたのか、恐ろしい言葉を連発し形相もすっかり変化してしまいます。
 そして殺されたのはこの毛皮商の姪であることがわかり、この憑依現象と事件は関係があるのか?
 またまたニコラの瞑想にふけるくせが出て、どんどん考えは飛んで行ってしまいます。
 今回も、友人である海軍外科医スマッギュス、処刑執行人サンソン(通称パリ殿)、ティール・ポ(桶かつぎ)やニコラの愛人たちが随所で活躍します。
 1770年のパリ、こんなところだったのか、と時代にふけるのも楽しいです。
 ブラン・マントー通りの謎
 鉛を呑まされた男

■パリつながり
パリ警視庁賞 受賞作が多いですね。
悪魔のヴァイオリン
第七の女
ヴェルサイユの影
カタコンベの復讐者
青チョークの男
騙し絵
世界名探偵倶楽部 ←パリ大博覧会です

主人公: ニコラ・ル=フロック(シャトレ裁判所付警視)
場所:  フランス、パリ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小

ロワイヤル通りの悪魔憑き (ニコラ警視の事件3) (ランダムハウス講談社文庫)
ジャン=フランソワ パロ
ランダムハウス講談社

革命前のフランスへ行きましょう
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ワニと読むミステリ(アイスクリームの受難)

読むと、復讐は長くかかります。

(J・B・スタンリー著)
 “ダイエット・クラブ”シリーズの第2弾です。
 〈デブ・ファイブ〉のメンバーであるジェイムズ・ヘンリーは、なかなかダイエットも成功せず、好きなルーシーにも積極的な態度に出ることができません。そこで〈デブ・ファイブ〉のメンバーは、ダイエット教室に参加することにします。大枚をはたいて会員になったジェイムズたちは、ハイテンションのダイエット教室のオーナーのロニーに励まされ必死のエクササイズに挑みます。足もとはよろけ、汗だくになり、体は曲がりません。
 でもインストラクターのディランはスタイルもよくイケメンで、女性たちのあこがれの的。ジェイムズも、ルーシーの視線が気になってディランのような体型をめざしてなりふり構わず体を動かしています。
 しかし、デブになるには理由があり、みんな新しくできたアイスクリーム店に目がなくて、つい行列に並んでしまいます。カロリーの高いアイスクリーム店とダイエット教室は犬猿の仲で、何かといがみあっています。さらにこのアイスクリーム店の店舗デザインが町の景観を損ねると抗議する町の有力者一団が現れて、おいしいアイスクリーム目当てで並んでいるジェイムズたちは困惑します。
 そして話題のアイスクリーム店が火事になり、そこの従業員が焼死体で発見されます。
 夜誰もいないはずのアイスクリーム店でこの従業員は何をしていたのか? 
 火の気はないはずのアイスクリーム店なのに、なぜ火事になったのか?
 保険会社は保険金目当ての放火でないかと疑って、オーナーのウィリーの調査を始めたため、生活に困ったウィリーは手先の器用さを生かしてみんなの何でも屋として存在価値を高めていきます。。
 ダイエット教室で支給されるダイエットメニューは、とうていジェイムズたちのようなグルメに支持されるような味でなく、またその食品の内容も怪しいものがあります。
 今回は、ジェイムズたちの汗にまみれるエクササイズが読んでいて楽しいです。

■図書館つながり
 ジェフ・アボットの「図書館の死体」など図書館長のシリーズがありますね。でもこのごろこのシリーズが書かれていないようなのが、残念です。ワニとしては、このシリーズが好きだったのですが、ジェフ・アボットは判事のシリーズの方に力がはいっているようで。
 新しいところでは、イアン・サンソムの「蔵書まるごと消失事件」ですね。こちらは移動図書館の司書です。

主人公: ジェイムズ・ヘンリー(図書館長。〈デブ・ファイブ〉のメンバー)
場所:  USA、ヴァージニア州クィンシーズ・ギャップ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中

アイスクリームの受難 (ダイエット・クラブ2) (ランダムハウス講談社文庫)
J B スタンリー
ランダムハウス講談社

おいしいものが好きなかたに
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ワニと読むミステリ(億万長者の殺し方教えます)

読むと、だいたい欲がからんでます。

(ナンシー・マーティン著)
フィラデルフィアの名家に生まれたけれども、両親の散在で家が窮地に陥っているというブラックバード家次女ノラが主人公のミステリ・シリーズ第1弾です。
著者のナンシー・マーティンはロマンス作家の出身ですが、この作品からミステリをてがけるようになってきました。まだロマンス小説の要素が強く、ミステリとして読むとかなり難あり。ま、今後を期待しましょう。
ノラは、ブラックバード家の次女で、脱税して海外逃亡し優雅な生活を送っている両親から農場を贈られその税金を払うだけでも四苦八苦。かくてお嬢様育ちのノラは、両親の友人ローリーを頼ってローリーの所有する地元紙〈インテリジェンサー〉で社交欄を担当することになります、人気記者キティ・ケイオの元で。
ローリーの開いたパーティーに出席したノラは、ローリーの居住する部屋にシャンパンを持っていき、そこでローリーの死体を発見してしまいます。第一発見者でローリーと親しくしていたノラは、誰がローリーを殺したのか、警察に協力することになります。フィラデルフィアの社交界にまつわる事件では、警察よりノラのほうが情報収集力に優れているとみなされて。
ノラは三姉妹の次女。長女はリビー、再婚相手は南北戦争マニア、ノラは夫が麻薬がらみで殺されて以来独身、三女エマは自動車事故で夫を失って自分も大怪我して馬にしか興味がありません。三姉妹とも男運が悪いということ。
ノラが税金対策でやむなく土地の一部を売った相手が自動車ディーラーで、元は少年院に入っていたこともあるというマイケル・アブルッゾ。上流階級のノラとは雲泥の差の環境で育った人物で粗野でハンサム。このあたりの設定はすっかりロマンス小説でしょうか。
ま、今回は登場人物の紹介という感じで読めばそれほど落胆することもないでしょう。

■旧家についてのミステリ
キャロライン・ヘインズの“ダリアハウス”のシリーズがやはり旧家なんだけど、お金がなくて困っているというミステリです。主人公は、サラ・ブース・ディレイニー、ダリアハウスの女主人で元舞台女優。こちらはジティという幽霊がついてます。
 
主人公: ノラ・ブラックバード(新聞記者)
場所:  USA、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 小

億万長者の殺し方教えます―ブラックバード姉妹の事件簿 (イソラ文庫)
ナンシー マーティン
早川書房

ミステリよりロマンスかも
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ワニと読むミステリ(君を想いて)

読むと、積年の恨み?

(ジル・チャーチル著)
リリーとロバートの貧乏兄妹のシリーズももう第5弾です。
大きなお屋敷グレイス&フェイヴァーを相続しながらも、まったくお金のない二人は、今回看護の仕事をすることになります。
1933年3月、大恐慌下ルーズヴェルト大統領の就任式があります。ロバートはわざわざその式典を見に行くのですが、当てにしていた友人たちからの宿の提供はすべてはずれ、公園で多くの人たちと同様に野宿することになります。たくさんの人たちがただ就任式を自分の目で確かめようとするあたり、国民の期待がよくわかりますね。
近所の養護ホームの看護婦の一人がインフルエンザにかかったので、その代わりをリリーとロバートがすることになります。これが大変な重労働で、2階から地下まで洗濯物を一日に2回も運び、また洗濯が終わったらそれを運び上げないといけません。そこで労働に根をあげた生来怠け者のロバートが、小さなエレベーターを設置することを提案します。このエレベーター工事の模様もなかなかおもしろいですね。
養護ホームの入居者ショーン・コナー老人はとても扱いにくいですが、もう余命いくばくもない状態で看護婦も日夜の看護に疲れはてています。お見舞いに来るのは孫の巡回セールスマンのケリーと老人の妻。この二人はうまくいってないらしく、ケリーはコナー夫人が現れる時間には決して来ません。コナー夫人は、夫の枕元で農場がうまくいっていないから早く退院するようにとずっと文句ばかり言い続けています。
コナー老人が亡くなって、看護婦たちはどうも殺人らしいということを発見します。
事件を担当するのはおなじみのハワード・ウォーカー警察署長と助手のラルフ。ハワードはビーコン警察署長エドからも依頼を受けてそちらの事件も手伝うことになります。最初は何の関係もなかった事件が、だんだんと関連を帯びてきて、リリーの推理も冴えてきます。
最後は、リリーが容疑者宅を訪問し、さりげなく証拠物件を手に入れてきます。いくら警察関係者が見張っているとはいえ、リリーが単身で乗り込んでいくのはドキドキしますね。
1930年代の小さな町のいろいろな出来事は、読んでいて郷愁を誘い、ホッとするような気持ちになりますね。
リリーたちのお屋敷に下宿する弁護士夫妻や帽子屋さん、小学校の校長などもみな健在です。

闇を見つめて
愛は売るもの

■主婦探偵シリーズ
ジル・チャーチルのもう一つのシリーズは、主婦探偵ジェーン・ジェフリイのシリーズですが、このごろあまり書かれないのが残念。もう10冊目なんですが、もっと続いてほしいですね。
飛ぶのがフライ
カオスの商人
 
主人公: リリー・ブルースター(妹)
ロバート・ブルースター(兄)
場所:  USA、ニューヨーク州ヴォールブルグ
グルメ: なし
動物:  なし
ユーモア: 中

君を想いて (創元推理文庫)
ジル・チャーチル
東京創元社

1930年代のノスタルジック
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