
旧東ドイツで1950年代に生産されたレンズシャッター機に「ヴェラ」というカメラがある。レンズはCarl Zeiss Jena Tessar 50mm f2.8を搭載。ボディーは黄金比デザインでシンプル。レンズ根元のリング回転によるユニークなフィルム巻上げとシャッターチャージ機構。レンズキャップがフードに早替わりするアイデアなど非常に魅力的なカメラである。社会主義国家らしい質実剛健さと控えめながら遊び心をのぞかせたチャームさがツボ。これら機構とデザインに惚れて1998年頃に買い求めた。故障していたシャッター機構を修理し、そのレポートは月刊誌「中古カメラGET」にも掲載された。しかしこのカメラには距離計がなく目測のビューファインダー。露出計も付いていない。ツァイスレンズの描写は素晴らしいけれどそのポテンシャルを存分に発揮できないでいた。そこで悪巧み。あまり描写が芳しくなかったシグマの広角24mmの光学系を降ろしてしまいヴェラレンズを移植してみた。当初の構想ではAF機構はそのままにヴェラレンズのAF化とFマウント化を狙ったのだ。仮組みではAFも問題なく作動し試写も成功。しかし問題はレンズ焦点距離にあった。無限遠を拾おうとするとレンズ内のAFギアとヴェラレンズ鏡胴が干渉してしまった。ヴェラレンズはレンズアッセンブリのままシグマレンズ内に移植しているのだ。そこでAF化を諦めシグマのAFギアと基板を降ろし空間をかせぐ。これできっちり無限遠が拾えるようになった。また、シグマレンズの絞りリングはそのままなので、絞りリングが動くとカメラのAi連動が誤作動してしまう(当然ながらこの絞りリングとヴェラレンズの絞りは非連動)。この対策としてFマウントの最小絞りロック機構を応用し開放固定できるように改造した。撮影ではヴェラレンズは半固定絞りとなる。絞り操作はレンズ後玉側を摘み鏡胴を回転させることで行える。レンズ移植は完了したものの、短いTessarはかなり奥まって鎮座することとなった。フードの心配は無さそうだがこれでは変態まるだしなのでスカイライトフィルターを着けてカムフラージュ。ヴェラレンズは無加工なので、これに飽きれば元の本体に組み戻せる。♪ 芝居してるふりで急に言いましょうか「本気よ」(中島みゆき カム・フラージュ)
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