チゴユリ
(季節の花300)より
日当たりのいい雑木林に
足を踏みいれると
柔らかそうな緑の葉に
星のような白い花が
ちょこんと乗っかっていた
たぶん稚児百合だよね
恥ずかしそうにしているので
すぐに分かったんだ
武家社会に根付いた特異な存在
お小姓という制度があったことも
史上で一番有名な稚児さんは
美少年で知られた森蘭丸だよね
気配りもよく織田信長の寵愛を受けた
本能寺の変で主君とともに果てたが
その生涯は後世まで語り継がれている
認知されたのは戦国時代だったかな
戦に不向きな女性に代わって
身の回りの世話や夜の伽も務めた
やがて合戦のない世の中になると
稚児さんの存在は霞んでいった
それでも春から初夏にかけて
稚児ユリは下草の中から姿を現す
可憐な白にわずかな翳りを帯び
悲しくも雄々しい存在のあかしを
歴史のページにとどめている
(2019/02/16より再掲)
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