どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム128 『稚児ユリは野に生きて』

2022-04-06 00:44:04 | ポエム

チゴユリ チゴユリ

 (季節の花300)より

 

日当たりのいい雑木林に

足を踏みいれると

柔らかそうな緑の葉に

星のような白い花が

ちょこんと乗っかっていた

 

たぶん稚児百合だよね

恥ずかしそうにしているので

すぐに分かったんだ

武家社会に根付いた特異な存在

お小姓という制度があったことも

 

史上で一番有名な稚児さんは

美少年で知られた森蘭丸だよね

気配りもよく織田信長の寵愛を受けた

本能寺の変で主君とともに果てたが

その生涯は後世まで語り継がれている

 

認知されたのは戦国時代だったかな

戦に不向きな女性に代わって

身の回りの世話や夜の伽も務めた

やがて合戦のない世の中になると

稚児さんの存在は霞んでいった

 

それでも春から初夏にかけて

稚児ユリは下草の中から姿を現す

可憐な白にわずかな翳りを帯び

悲しくも雄々しい存在のあかしを

歴史のページにとどめている

 

(2019/02/16より再掲)

 

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