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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム128 『稚児ユリは野に生きて』

2022-04-06 00:44:04 | ポエム
 チゴユリ  (季節の花300)より   日当たりのいい雑木林に 足を踏みいれると 柔らかそうな緑の葉に 星のような白い花が ちょこんと乗っかっていた   たぶん稚児百合だよね 恥ずかしそうにしているので すぐに分かったんだ 武家社会に根付いた特異な存在 お小姓という制度があったことも   史上で一番有名な稚児さんは 美少年で知られた森 . . . 本文を読む
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ポエム320 『虫になろうよ』

2022-03-04 01:57:41 | ポエム
 尺取り虫 (ウェブ画像)より     う~ん 騒がしいな 人間の世界で いま何が起きているんだ?   虫の寄り合いでも 話題はそのことだよ 青虫や毛虫が 用もないのに集まってくる   最初のうちは セミが大騒ぎしていたな カマキリやハチなど武器自慢のやつも来ていたが   近頃は 鳥たちに狙われる虫たちが 心配顔で 集ま . . . 本文を読む
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自薦ポエム119 『カマキリの物思い』

2022-01-29 00:27:32 | ポエム
  しきりに降りそそぐ広葉樹の枯れ葉 追われるようにカマキリが逃げてくる 暑い夏が過ぎたらおまえも物思う仲間に入るのか かたい地面をコツコツ叩きながらどこへ向かうのだ    見たところおまえはまだ就活の年頃だな 景気はいいのか悪いのかはっきりしないし めっきり獲物の減るこの冬をどう過ごすのか まだ当てさえ見つけていないようだ   周りを見回し . . . 本文を読む
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自薦ポエム114 『馬酔木が誘う月と酒』

2022-01-03 23:10:45 | ポエム
 馬酔木の花 (ウェブ画像)より   おぼろ月夜の晩だから 碁でもやろうと誘われて 馬の背なかでゆうらゆら ほろ酔い気分でゆうらゆら   この文明の世の中で 何を好んで馬の背に・・・・ モータリゼーション拒絶して ゆらゆら行くのがわしの主義   昼は畑を耕して 夜は主人のお供する わしの主義だと駆り出され 月に向かってゆうらゆら &n . . . 本文を読む
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自薦ポエム103 『悟りが似合うホトケノザ』

2021-10-26 10:47:10 | ポエム
 ホトケノザ   (ウェブ画像)より   春の野に仏の座が用意されているなんて お釈迦様でも気がつくめえ 4月8日はブッダの誕生日ということで 灌仏会には甘茶でお祝いしたものだが ひと足早くふかふかの葉っぱを並べて待っていたらしい   それにしても仏の座とはぴったりの名前だねえ 人間様の想像力にはホトホト感心させられる 日射しを受けて居眠りしたって許されそ . . . 本文を読む
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自薦ポエム99 『雲のスキャンダル』

2021-10-03 11:30:45 | ポエム
 うろこ雲(1)    うろこ雲(2)    (いずれもウェブ画像より)   男ごころと秋の空 尾崎紅葉の『金色夜叉』までは そう言っていたそうだ   ところが女性の心変わりを描いた 貫一お宮の話題作から後は 女心と秋の空と言うようになったんだとか   うろ覚えだからはっきりしないが 諺や言い伝えには両サイドからの見方が けっこ . . . 本文を読む
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自薦ポエム91 『沢蓋木を求めて』

2021-08-18 03:22:15 | ポエム
おお 怖・・・・ 頭の上を 何かが翔ぶ アブか 天狗か ミサイルか わからんもんが 夢を斬る   おお 怖・・・・ 夜中に目覚めて 闇を視る 頭上を超えたのは ムササビか 真夏のはずが 肌寒い   おお 怖・・・・ 避暑地の朝を 鳥がよぎる 飛べないトリが 時をつくる チキンレースが 延々と続く   おお 怖・・・・ 言葉のヤリが 空を . . . 本文を読む
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自薦ポエム87 『水茄子を恋う』

2021-07-31 02:06:00 | ポエム
ひゃー、こうべ病むなあ 田舎のばあちゃんがしわくちゃの顔を綻ばす   たんぼの畦で早めの昼飯が始まったのだ 手には持ってきた曲げわっぱの弁当箱   今しも汲んできた清水がヤカンから注がれる 弁当箱の中はたっぷりの水とコメの飯   飯の上には手で割いた水茄子の浅漬けが泳ぐ ばあちゃんは水茶漬けが大好きなのだ   ヒャー、おめえもこうべ病 . . . 本文を読む
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自薦ポエム84 『山茱萸の唄』

2021-07-15 00:10:07 | ポエム
たくさん寄り集まっているのに なんて寂しい花なんだ   チパチパと神経質そうなのに なんて人懐っこい花なんだ   高木に伍して見晴らし好きなのに なんて寒村に似合っているのだ   庭の山茱萸の木ィィィィに なんで鳴る鈴を掛けるんだ   泣くな鈴虫声ふるわして ここは道ばた人が知るよォォなんてさ   民謡を聴いてそのワケ . . . 本文を読む
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自薦ポエム78 『悲しみの千日紅』

2021-06-21 00:00:19 | ポエム
母が飛んだ 夕暮れの空へ飛んだ 団地の花壇には苺のような千日紅 ついばむ鳥が嘴から突っ込んだ   娘は電気もつけずに泣いた 頼りの父は半年前にツガイの相手を変えた 今どこのねぐらに籠っているのやら 見捨てた団地の窓をテレビは写すだろうか   娘は泣き疲れたまま眠り込んだ 目ざめると闇のなかで囁く声がした おまえは一人ぼっちになった もう世の中とつながる . . . 本文を読む
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自薦ポエム75 『月と星は天の穴ぼこ』

2021-06-08 00:19:38 | ポエム
夜空を眺めることが少なくなって ぼくの夢はまとまりがなくなった もともと夢なんてまとまりがないもの そういって揶揄するならすればいい   ある夜ぼくは吉行淳之介の本を読んだ 『月と星は天の穴』を探し当てたのだ 世界を動かすほどの力はないが 文章が醸し出す滋味の滴りを受け取った   ふたりの女と交際して それぞれの魅力を文章にする 女たちにはそれぞれに男が . . . 本文を読む
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自薦ポエム74 『老女の家のアメリカ朝顔』

2021-06-04 00:26:41 | ポエム
古い家から出てきた老女が 向かいの家のブロック塀に向かって いきなり落ち葉を撒き散らした   「だらしのないジジイだ」 塀越しに枝を伸べるハナミズキの葉が 道路に散らばるのを掃いているのだ   「一度だって掃いたことがないんだから」 老女はよほど腹に据えかねているらしい しかも塀ぎわに捨てた落ち葉が風に舞い戻る   北からの風が老女の側に吹き寄 . . . 本文を読む
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自薦ポエム69 『テッポウウオ異説』

2021-05-17 00:14:24 | ポエム
オレたちの鉄砲は 百発百中 水槽の中で ただいま虫取り実験中 火薬なんぞ使わずに 口に入れた水を発射するだけ オレたちの口元に 研究者の目が光る   ふむふむ 獲物の位置で角度を変えてるぞ そうそう 明らかに口の形が違っている 口の中で圧力を高め ノズルのように噴射するようだ 初速よりも あとから追いかける水流の方が速いんだよ   あぶない危ない 飛んでるア . . . 本文を読む
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自薦ポエム67 『灼熱の亜米利加芙蓉』

2021-05-08 00:03:24 | ポエム
マサミはシングルマザー 負傷してイリノイ州に帰ったジョージとは 三年にもわたって音信不通 基地の街でホステスを続けるマサミは 夜遅く託児所からジミーを帰還させる   ハーイ ジミー  How are you? 母親の腕の中で半分眠りかけている子を 息のかかる近さで覗き込む 寂しい思いをさせたけれどもう心配ないわ   あなたのパパはとてもいい人なのよ ヘ . . . 本文を読む
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自薦ポエム62 『蝋梅の下で』

2021-04-19 00:02:13 | ポエム
この季節になると さびしく死んでいった友人のことを 痛みと共に思い出す   小説家として期待され あと一息でデビューを飾るはずだったのに こころざし半ばで行き暮れたのだ   友を蝕んだのは胃がんであったが 辛抱しきれなかった苛立ちのがんとも言える 持って生まれた運命の黒い塊とは思いたくない   どんな作家に憧れたのやら どこかで無頼派を気取っ . . . 本文を読む
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