ついにラスト。
ミンツ家はハイネセンの長征一万光年以来の由緒ある家らしい。
ユリアンの父が、帝国からの亡命貴族の子孫である女性と結婚したため、ユリアンの祖母は猛反対した。後に両親を亡くし、祖母に引き取られたユリアンは、この祖母を嫌っていたようだ。
10歳の時に祖母がなくなると施設に引き取られ、12歳の時にトラバース法によってヤンの養子となる。なぜ独身であるヤンのところに養子にやったかという理由については、ついにキャゼルヌは語らなかった。
ちなみにトラバース法を少し解説すると、軍人の養子には政府から一定額の養育費が貸与され、15歳までは普通に教育を受けられる。その後士官学校や技術学校等軍関係の学校に入学すれば養育費の変換は免除される仕組みとなっている。
ヤンに憧れ、いつしかヤンと同じ軍人になりたいと願うようになっており、本伝開始時点ではまだ中学生(?)で、翌年から士官学校に通おうと考えていたが、養育費の返還するから軍人になるのはやめておけとヤンに忠告される。が、結局ヤンがイゼルローン方面軍の司令官に赴任するときに兵長待遇軍属という身分で一緒にイゼルローン要塞に乗り込む。ここらへんの事情は外伝2巻に詳しい。イゼルローンではシェーンコップに格闘技を、ポプランに空中戦を教わり、ヤンからは戦略などを教わった。
プライベートではヤンの身の回りの世話をしながらも、ヤンの飲酒を戒めるなど、しっかりした面が目立ち、利発な性格で周囲からはヤン以上の天才的な素質を持っているのではないかと期待される。
救国軍事会議のクーデターを鎮圧後、軍曹待遇になる。そして初陣となったイゼルローン回廊での遭遇戦ではワルキューレ3機と巡航艦1隻を鎮めるという大功を樹て、曹長に昇進。ケンプ艦隊との戦いでは、ケンプの策を見抜き、勝利に貢献。その後正式に軍隊に所属し准尉。それからすぐに少尉に昇進し、フェザーン駐在武官となった。
フェザーンではあまり成果はないが、帝国軍が乗り込んでくると、同盟の高等弁務官府にあるデータを消去し、ヘンスローを連れて脱出。途中、帝国の駆逐艦をのっとり、無事ヤンと合流した。このあたり度胸も才能も豊富で、外伝のラインハルトを彷彿とさせる。ハイネセンに戻ったときに中尉に昇進。ついでに自由戦士勲章も受章。
フェザーン脱出で同乗していたデグスビィの言葉が気になり、バーラトの和約後に退役し、地球へ向かう。そこで地球教の秘密を持ち帰り、エル・ファシルでヤンと合流した。かなりの行動力だ。
ヤンの死後、イゼルローン共和政府軍の最高司令官に就任。本人はかなり不本意であったろうが、ヤンの用兵学上の弟子であり、ヤンの思想や構想についてももっとも熟知していたわけだから、残されたキャゼルヌらにとっては他に選択肢がなかった。
司令官としてのユリアンは、それまでの天才タイプから、勤勉な努力家に変わったように周りから見られる。ユリアン自身は常にヤンだったらどうするだろうと、ヤンを指標として物事を考えるようになった。また、自分が目指していたのはヤンの下で軍人になることであり、そのヤンが死んだ後は軍人ではなく、歴史家として自分が見てきたことを後世に伝えたいと願うようになった。
イゼルローン要塞の基本的な戦略構想として、ユリアンはヤンが考えていたように、イゼルローンとどこかの惑星を交換し、そこに内政自治権を認めさせることだった。だが、具体的にラインハルトとどうやって交渉のテーブルを持つかが問題だった。
ロイエンタールの叛乱では、手を組むよう誘いを受けるが、ここで一時的に暴れることができても、結局はラインハルトの報復をまねくだけとわかっていたので、ロイエンタールには与しなかった。かわりにメックリンガー艦隊にイゼルローン回廊の通過を許可し、評価を上げた。帝国に貸しを作ることができ、後の交渉材料にしようとしたわけだ。
その後、旧同盟領の民衆が、イゼルローン共和政府は帝国に荷担するのではないか、と疑いだしたため、帝国と一戦交えることを決意。ワーレン艦隊と交戦し、見事トゥール・ハンマーの餌食にした。
だが、オーベルシュタインが旧同盟の高官たちを人質にとってハイネセンにおびき寄せようとしたため、仕方なくハイネセンに向かうことに。しかしこれはラグプール刑務所の暴動により途中で引き返すこととなった。
こののち、民主主義を生き残らせるために肝心なのは、ラインハルトと対等の交渉をすることであって、ラインハルトの慈悲にすがったり、従属することではない、そのためにはラインハルトと戦い、命がけの決意を示すことが必要との結論に達した。
そして、ドロイゼン艦隊と交戦したのを直接のきっかけとしてシヴァ星域会戦が始まる。この戦いでは5倍の兵力を誇る帝国軍の前に劣勢に立たされるはずだったのだが、ラインハルトがぶっ倒れたため帝国軍の動きが鈍った。そしてその知らせを耳にしたユリアンはブリュンヒルトに直接乗り込むことを決意。死闘の末(ミッターマイヤーとミュラーはユリアンが乗り込んだ時点で戦闘をやめさせようとしたのだが)にラインハルトの元にたどり着き、ラインハルトから停戦と講和を勝ち取った。
それから帝国軍とともにハイネセンに行き、またフェザーンまで同行した。その間、ラインハルトとの間に色々な取り決めをした。
ヴェルゼーデ仮皇宮に地球教徒たちが侵入すると、ド・ヴィリエを射殺。ヤンの讐を討った。その後はカリンと一緒になったのだろうか…。
ユリアンはヤンの事跡などを後世に正確に伝えた点で、歴史家から評価された。ただ、ユリアンの言動はすべてヤンのぱくりだという批判もある。しかし本人はそれについて、一切言い訳をしなかった(アッテンボローは擁護しているが)。
ユリアンが一番偉大な点は、10代の若さで、その若さに流されることなくヤンの構想を実現できたことではないかと思う。
他に、家事が得意で、ユリアンが淹れた紅茶はヤンの好物。ちなみにユリアンの父が茶道楽で、ユリアンにお茶の淹れ方を教えたのはこの父である。
ほかにも書きたいことはあるけど、思いついたときにまた書き足せばいいか。とりあえず予定どおりOVAと同じ110回で終了。これからは外伝の人物評を。