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銀英伝人物評101<ヤン・ウェンリーその2>

2004年09月07日 18時21分00秒 | 銀英伝人物評
続いてヤンの性格編。
基本的には怠惰な面が目立ち、生活もグータラなため、養子となったユリアンにはみんなが同情した。私生活においてはユリアンが完全に面倒を見る形となったため、彼がヤンの元を離れてフェザーンに行くときには誰もがヤンの生活を心配した。
勤労精神においては明らかにラインハルトと差があり、ラインハルトは義務感で皇帝の政務に精励していたが、ヤンは「有給休暇は必ず全部消化」し、「定時になれば残業のそぶりも見せず」にさっさと帰り、しないですむなら呼吸もしたくない、というほどである。

容貌もぱっとせず、フレデリカとの結婚では「姫と従者」と言われ、メルカッツといると、「メルカッツがヤンの上官に見える」といわれ、ラインハルトとの会見にユリアンを同行させないと、「ユリアンの随員と相手に見られる」からと言われる。

このように、個人的な部分では欠点ばかりが目に付いてしまうが、チュン・ウー・チェンが言ったように「民主国家の軍隊は民間人の生命を守るために存在する、という建前を本気で信じ、しかもそれを一度ならず実行している」という誰にも非難できない美点がある。

戦争の愚劣さを誰よりも知っているという点で、ヤンは自分が軍人であることに疑問を感じ、ユリアンにも軍人になって欲しくはなかった。ただ用兵家としての本能で、作戦を練るときにはつい心の中に躍動感みたいなものが湧いて来てしまい、ユリアンに資質を見出すと自分の用兵論などを教え込んでしまう。

民主共和制の存続のために戦い続けたが、これは専制政治を嫌っているというよりは、人類の普遍的な利益を考えた場合に、民主主義の灯火を残さないと後の世代が苦労すると考えたからだ。政治的個人の忠誠の対象を見つけることができず、制度そのものを忠誠の対象とするしかなかったと原作に書かれている。
といっても、もし帝国に生まれていれば喜んでラインハルトのもとへ馳せ参じただろうと本人も言っている。ラインハルト自身は専制君主としても戦略家としても高く評価しているからだ。そして、ラインハルトを打倒することが、果たして歴史の前進になるのだろうかと疑問を抱く。歴史上まれに見る名君を倒してしまうことは、歴史上の罪人になるのではないかと恐れ、バーミリオンではとどめを刺さなかったと言える。無論、政府の命令もあったが。

ラインハルトと違い、性格は安定していて包容力がある。ユリアンには親として、常識的な意見を述べることが常だが、保護者としてはユリアンをまっすぐ成長させるのに成功したと思う。また、ユリアンもヤンを見て「ポプランやシェーンコップの上官としてふさわしい」と感じる時もあった。

最初に怠惰な面を上げたが、自分の責任を放棄することは一度もなく、特にエル・ファシル独立政府に参加して以降は、強大な帝国相手にひたすら活路を開くための思考をする場面が多い。そして何度もそれを自分で確認し、ユリアンにも語っている。思想家としても、この時代に比類ない存在だったのではないだろうか。

ヤンの用兵の真髄は、相手の思惑道理に行くと見せかけて、そこに罠を張っておくというもので、原作では「落とし穴の上に金貨を置く」と例えられている。戦場心理学とでもいうべきものだろう。
もう一歩深くみると、ヤンの用兵は孫子の兵法そのものであることもわかる。孫子では自軍の実を見せず、敵に虚を撃たすという思想があり、ようするに敵をひっかけて裏をかいたり、自軍の存在を隠して敵の目標を誤らせろといってるのだ。戦闘とは違うがエル・ファシルの脱出口などはまさにそれで、敵の狙いであるべき民間人を、先に脱出したアーサー・リンチ少将らの艦隊に見せかけて、敵艦隊がそっちに食いついた隙に隕石群に偽装して脱出してしまう、まさに孫子の兵法の実践といっていい。ヤンは戦史研究科に在籍したから、あるいはその時に兵法を体得したのかも。

ただ、外伝でトリューニヒトに必勝の用兵策を訪ねられたとき、敵の6倍の兵力と完璧な補給と、命令を過たずに伝達できること、と答えたように、しごく正道の用兵こそを最上としている。この思想は中国の春秋時代の晋の宰相だった士会と同じなんだけど、これはヤンに限らず、この作品に登場する凄腕の用兵家全員に共通する考え。にも関わらず、邪道を極めてしまうところに、ヤンの恐ろしさはあると思う。

銀英伝人物評100<ヤン・ウェンリーその1>

2004年09月07日 17時44分16秒 | 銀英伝人物評
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まずは経歴・実績編

同盟軍最高の智将。
商人ヤン・タイロンの長男。母を早くに亡くしたのはラインハルトに似ている。ちなみにヤンの生母はヤン・タイロンの再婚相手で、生母の方も最初の夫(軍人)を亡くしていた。つまり再婚同士のカップルだった。
歴史家を志したが、15歳の時に父が死に、無一文になってしまったため、タダで歴史を勉強するために同盟軍士官学校戦史研究科に進学。ちなみに本来の志望校はハイネセン記念大学の歴史学科。だが戦史研究科が途中で廃止されたため、戦略研究科に転入。この科はエリートしか入れないそうだが、ヤンにとっては少しも嬉しくなかった。しかし才能はこの時からあったらしく、戦略シミュレーションの授業では学年主席の秀才マルコム・ワイドボーンを破った。射撃などの実技はまったくだめで落第スレスレの成績。

士官学校卒業後、統合作戦本部記録統計室に配属されたがまったく働かないため前線勤務に行かされた。そして、エル・ファシルで300万人の民間人を救うという偉業をなした。これにより「エル・ファシルの英雄」と呼ばれ、一気に少佐まで昇進。その後、ブルース・アッシュビーの謀殺説の調査を命じられる。だが中途半端に打ち切られてしまい、惑星エコニアの捕虜収容所の参事官となる。そこで陰謀に巻き込まれるが、無事帰還。

第5次イゼルローン要塞攻防戦ではシトレの下で作戦参謀、第6次イゼルローン要塞攻防戦でも作戦参謀。この時に中将だったラインハルトを撃退した。これで准将に昇進。
その頃12歳のユリアン・ミンツを養子に迎える。

第2艦隊次席幕僚としてレグニツァ遭遇戦、第4次ティアマト星域会戦に参加。
それからアスターテ星域会戦に参加。ここから本伝が始まる。
アスターテでは負傷したパエッタ中将に代わって艦隊の指揮をとり、帝国軍と引き分ける。帰還した後はアスターテの英雄と呼ばれる。
その後辞表を提出するが却下され、第13艦隊司令官に任官。イゼルローン要塞を無血占領し、中将に昇進。この頃から帝国でも無視できない存在と目された。
そして帝国領侵攻作戦に参加。この戦いは初めから戦略的意義に疑問を抱いており、ラインハルトが焦土作戦をしたことに気づくと撤退。途中でケンプ艦隊、キルヒアイス艦隊と交戦するも、アムリッツァ星域まで撤退し、そこで同盟軍の殿を務めて無事、残存兵力の撤退に成功、大将に昇進。
同時にイゼルローン要塞司令官・同駐留艦隊司令官・同盟軍最高幕僚会議議員につく。ちなみにヤンの指揮下におかれた艦隊は”ヤン艦隊”という通称を公式に認められている。
イゼルローンでは最高権力者といえる立場につくが、元々欲の薄い性格なので、デスクワークはキャゼルヌに押し付けてのんびりしている。ユリアンは後にこの頃を振り返って黄金時代と呼んだ。

イゼルローンでの捕虜交換式に出席し、ハイネセンに戻ってからビュコックにクーデターの発生について注意を促し、同時にクーデター発生時の艦隊指揮の許可証をもらう。

救国軍事会議のクーデターが発生すると各地の暴動を静めつつハイネセンに向かう。途中、ドーリア星域において同盟軍第11艦隊を破る。
ハイネセンを守るアルテミスの首飾りを破壊し、救国軍事会議は降伏。ハイネセンの解放に成功した。

それから1年後、査問会に呼び出される。その間に帝国軍がイゼルローン要塞に攻め込んできたため、査問会は中断、ヤンはイゼルローンに向かい、帝国軍を撃破。
その後養子であるユリアンをフェザーンに行かせることになる。

ラグナロック作戦が発動し、ロイエンタールらがイゼルローン要塞に攻め込んでくると、これに応戦するも、総司令部からの訓示により要塞を放棄。ランテマリオ星域で戦っていたビュコックらを救出し、ハイネセンに帰還。そこで元帥に昇進。

この時点で戦略的な不利は覆し様もなく、唯一の勝機をラインハルトの打倒に賭ける。そのためには、他の帝国軍の将帥を倒す必要があり、同盟領内部でのゲリラ戦を展開。シュタインメッツ、レンネンカンプ、ワーレンを破る。
そしてガンダルヴァ星系の惑星ウルヴァシーに駐留していたラインハルトを狙うが、ラインハルト自身も出撃したため、バーミリオン星域で戦う。この戦いでは途中から完全にヤンのペースで戦いが進み、ブリュンヒルトにとどめを刺すところまでいったが、同盟政府が無条件降伏をしてしまったため、政府の停戦命令にしたがった。ただし密かにメルカッツらに60隻ほどの艦艇を預けて隠れさせる。
ラインハルトと会見した際、部下にならないかと誘われるが、断る。これはあらかじめ答えを準備しておかなかったら誘惑に耐えられただろうか、と後に振り返っている。

その後退役し、フレデリカと結婚。しばらくはのんびり退役生活を送る予定だったが、レンネンカンプのプレッシャーによって、レベロ議長はヤンを逮捕。秘密裏に殺そうとした。だが、これは間一髪でシェーンコップらに救われる。そして拉致したレンネンカンプを盾にハイネセンを脱出。メルカッツと合流し、紆余曲折した後にエル・ファシル独立政府に参加。
この後の戦略展開は非常に困難な選択肢しか残っていなかったが、結局イゼルローン要塞を占拠してエル・ファシル星系との間に解放回廊を成立させる。

そして回廊に攻め込んできた帝国軍と回廊の戦いを行う。ファーレンハイト、シュタインメッツを撃破し、どうにか引き分けに終わったが、ラインハルトから停戦と講和を申し込んできたため、実質的にヤンの目的は達成された。だが、会談に向かう途中で地球教徒により殺される。
原作では、この直後に駆けつけたユリアンとマシュンゴがヤンの遺体を持って帰る場面にこう書いている。

「比類ない戦争の芸術家でありながら戦争をきらいぬいていた黒髪の青年は、もう戦わずにすむ場所へ去ってしまった」

死んだ後、ヤンは民主共和制の守護神的な偶像として祭りあげられ、その遺志はユリアンらに継がれた。歴史に対する深い造詣と、頭の良さによって戦争の愚劣さを誰よりも知り、戦争を嫌っていたが、その頭の良さゆえに、戦えば絶対負けない。ただし、シェーンコップに何度もけしかけられながらも、性格的にNO.1になりたがらず、かといってNO.2になるには才能も名声もあり過ぎたのは悲劇か。本質的に戦略家であったことを考えると十全に才能を活かせる機会には恵まれなかった。だからこそ戦略家として人間の限界を極めていたラインハルトを誰よりも高く評価していた。

とりあえずここまで。

銀英伝人物評99<グエン・バン・ヒュー>

2004年09月07日 16時34分32秒 | 銀英伝人物評
同盟軍イゼルローン要塞分艦隊司令官。ヤンの指揮下でドーリア星域会戦を戦ったのが初登場か?
後に要塞対要塞戦を戦う。敗走したミュラー艦隊を追撃したが、ミッターマイヤー、ロイエンタール軍に粉砕されて戦死。ほんとにしょうもない奴だ。ビッテンフェルトのような猪突猛進タイプ。
OVAでは座乗旗艦マウリアは虎縞模様。これだけが特徴か。

これだけしか書くことなかったなぁ。
もうほとんど書く奴が残っていない…

銀英伝人物評98<オフレッサー>

2004年09月07日 15時59分17秒 | 銀英伝人物評
帝国軍上級大将。装甲擲弾兵総監。下級貴族の出身だが、主に陸戦での武勲で出世した。
白兵戦の能力はおそらく宇宙一だと思われる。通常は2時間が限度とされる装甲服の着用を、薬物使用によって長時間着つづけることができ、トマホークも特注サイズを操る。双璧ですら、この男との白兵戦は敵わないらしい。ラインハルトには原始時代の勇者と言われる。

外伝「千億の星、千億の光」では、装甲擲弾兵総監の座を狙うリューネブルクが、少将昇進の挨拶に訪れるが、やりこめられる。
反ラインハルト派であり、リップシュタット戦役では貴族側についてレンテンベルク要塞で帝国軍と戦う。その陸戦能力は、双璧が指揮した帝国軍の数度にわたる攻勢にもびくともしなかったが、落とし穴にはまって捕らえられた。

しかし処刑はされず、逆にガイエスブルク要塞への帰還を認められたが、これはオーベルシュタインの辛辣な策謀。要塞に戻ったオフレッサーは、ラインハルトとの間に密約を結んできたと誤解され(他の捕虜はみんな殺されたのに一人だけ戻ってきたから)、アンスバッハに射殺された。

銀英伝人物評97<ドロテーア・フォン・シャフハウゼン>

2004年09月07日 15時33分28秒 | 銀英伝人物評
シャフハウゼン子爵夫人。平民出身だが、子爵が彼女を妻に迎えるために莫大な工作費を宮内省と典礼省につぎこんだそうだ。
善良で親切、という貴族には珍しい性格を持ち、アンネローゼの数少ない友人でもある。
ラインハルトはこの子爵夫人に対しては感謝のような気持ちを持っており、OVA外伝「決闘者」で、ヘルクスハイマーから決闘を申し込まれて困っていた子爵の代理人として、決闘を行った。
あとはアンネローゼの住む館に、この子爵夫人から贈られたワインがあったりもした。

ついでに彼女の家族も書いておくか。

夫のシャフハウゼン子爵は、あまり宮廷に出入りせず、薬用植物の栽培と旅行記を読むだけが楽しみの男。
子爵夫人の義弟(子爵の実弟か?)はウェンツェル・フォン・ハッセルバックといい、ハッセルバック男爵家の後を継いだ。後にラインハルトの侍従長となり、ラインハルトが新領土に行幸に行く際、ロイエンタール謀反の噂を耳に入れる。