ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 089エリックが生きていた…… ![]() 「偉大なるアメリカか……」 「そう、あれで偉大なるアメリカだった……」 「そんなに、めげるなよ!」 勇気はうつむくマイクの肩を叩いた。 マイクは一瞥して、 「これ以上にめげることがあるか!」 と怒った。 しかし冷静であった。いや興奮する力もなくなっていた。 「当然だな! でも、最初に核兵器をつくったのは、アメリカだ。核兵器なんて、どうして作った……」 マイクは涙を流した。夏八木は気の毒そうにマイクたちを見ていた。 今にも海に飛びこみそうなマイク。 「マイク! エリックが生きていたよ」 勉はうれしそうに夏八木の顔を見た。 「えっ!」 夏八木は驚いてみせた。 「どうしたっていうのだ!」 マイクは情報が欲しかった。 それは、できるだけ、自分を幸福にしてくれることを……。 いや、贅沢など望まない。現状維持でいいのだ……。 そんなことが、とてもラッキーに思ってしまうのだ。 人は巻き込まれた状況によって、ころころ感情が変わるものだと、マイクは自分が人間でいることが、もろくって弱くて、寂しがりやで、どうしようもない、ちっぽけで、惨めな奴に思えた。 とても、偉大なるアメリカ合衆国の市民とは思えなかった。 だが、もしかしたら、それが本当の人間の姿なのかもしれないと今のマイクには思えた。 「マイク! エリックが生きていたのよ」 「エリックが……」 「そうよ、エリックはワシントンにいたのよ。でも……」 「ワシントンなら、大統領はどうしている?」 マイクは大統領を尊敬していたのに、何とこんな状況になれば、やつは無力ではないかと思ったのである。しかし、核戦争を拡大させた張本人は大統領である。 「さあ、早く、エリックと会話ができるわよ」 「そう、よし!」 知ることを知り、できることはやる。 それがアメリカン・スピリッツだ!とマイクは胸をはった。 これこそが、偉大なるアメリカ合衆国の市民である。 そう、どんなに困難な状況であっても、夢見たキング牧師の演説のように、マイクは希望を見いだそうとしていた。 「アイ・ハブ・ア・ドリーム!」 マイクは涙を右手で振り払い、部屋に入った。 「こんにちは……」 椅子にすわっていたエリックは、苦しそうだった。 「どうも、建築士の設計にミスがあったのか!それとも、手抜き工事だったのか、わからないが、私のシェルターは完璧ではなかった。あれでも、三億ドルはかけたものだったのだが……」 発音も聞き取りにくい。 それも、そのはずである。顔は真っ赤なトマトのようになっていた。 声を聞かなければ、エリックかどうかもわからなかった。
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