ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 210マスコミ 「あの新聞社は、学歴社会はいけないと非難しておいて、コマーシャルでは入試で一番出題されていると放送していた。自己矛盾さえも感じない良心のない新聞社です。いいえ、僕のように短気でなく、A新聞社を愛する良心ある新聞記者は、A新聞社の戦争中に報道したことを非難しました。その本は他社から出版されたことに、悲しい気持ちになりましたが。それをA新聞社は著作権の侵害と出版停止を訴えました。そして、出版停止されました。何が言論の自由なのか? 著作権で言論を封じ込めたのです。しかし、A新聞社を愛する記者たちは、著作権侵害にならないように書き直しました。戦争責任と他者には偉そうにいうA新聞社ですが、A新聞社のその当時の社長は戦争責任で一度は辞めた男でした。ほとぼりが冷めたころに社長になるなんて、何が戦争責任なのか? その戦争責任を追及しようとした人たちを、阻止しようとする、話にならない……。それが、A新聞社です。大学との癒着、政治家との癒着、官僚との癒着、企業との癒着、そんなことで、まともな報道ができるわけがありません」 「勉、話がそれているよ」エリックは笑った。 「では、話題を元に戻します。驚いたことは、いくつもあります。原発の電気が高いことは、その一つです。日本が世界一の電力料金なのも、理解できます。それを誤魔化すためにも、宣伝費を莫大にかけていることも、ますます電力料金を上げているのだと理解できます。一九六〇年代でさえ、原発は割高なものだとわかっていたのに、安くてクリーンなんて出鱈目を宣伝していたなんて、それを報道していたマスコミにも責任の一端はあると思います」 「まあ、いろいろな嘘があるわけだ、日本はいろいろと……。これからも報道できるね」 エリックは皮肉をこめていた。 「CMにしても、反原発は許可されません。それにたいして、マスコミは「国論を二分するようなことは放送できない」と主張するのですが、その一方の推進派である電力会社はまるで原発が安全であるかのようにコマーシャルを放送するのです。有名なタレントを使って、コマーシャルを流すのです。あれでは、みんな原発の危険性がなくなったように勘違いするじゃありませんか? 反対派の市民は、あれほどのコマーシャルをする莫大な費用もないのです」 「これからは、新しいエネルギーが活躍するだろう。ソーラー・エネルギーは皆も知っているだろうし、自動車も電気に代わるだろう。LPGがそのエネルギーが使われることもあるだろうし。ハイブリッドカーは、止まっているとき、電池に充電することができて、日本のように交通渋滞が日常茶飯事のところには、大いに節約となるだろう。空気もきれいだし、二十年先の新車のすべてが電気自動車だろうという予想をたてる学者さえもいる」 「コジェネについて、説明します」 勉は、後ろのテレビ画面が映っているか確認した。 「これは、小さな発電所が工場内や、インテリジェント・ビルの中にあるというものです。原子力発電にしても火力発電にしても、蒸気でタービンを動かして電気をつくっているわけですが、そのお湯は海に捨てています。コジェネでは、暖房や冷房にそのお湯を使うことができます」 その見取り図が映っている。 「お風呂などの給湯にそのお湯は使われます。これでエネルギーの節約になるのです。今の電気料金の半分以下の安さになるという学者もいます」 「もっと、安いかもしれないね。原子力というのは、問題を抱えたままで、まだいくらかかるか、わからない。核廃棄物もそうだが、その処理のためにいくらお金がかかるか、わからない」 「そうです。企業家たちも、今、コジェネに目を向けています。ナショナルは、特に力を入れています。ちょっと昔には、こんなことは法律でできなかったのですけど、規制緩和の流れで、電気会社以外でも電気を売ることができるようになったのです。風力発電、潮汐発電などの研究も進められています。これらのエネルギーが原子力にとって代わることを願います」 お辞儀をして、勉は席についた。 「だが原爆を炉で爆発させるような、“もんじゅ”の計画を進めようとしている人たちがまだいる。まったく困ったものだよ。日本はどうかしているよ」 勇気は一番、悔しそうだ。 「それで、儲けようと思っているのだろう。この狭い日本で、核廃棄物の問題だって、大変だし、チェルノブイリ原発大惨事も、地震だっていうじゃないか。日本がチェルノブイリのようなことになる可能性は世界一高いというわけじゃないか!いったい、どうしたら、いいのだろう。本当、死ぬときは、彼らもいっしょなのに」 あきれるのも、ここまで来たら、怒りよりも、貧血気味って感じだ。
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