ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 216希望を持とう! 環境エンジニアリングという技術も輸出されるようになっているという。この分野では日本は世界のトップレベルの水準にあるという。 それに比べて原子力の分野がこの短い期間に発達・発展したということを何も聴かなかったといってもいいのではないか。戦中・戦後から巨費を投じて、多くのエリートたちが心血を注いできたが、解決できなかったのである。今は斜陽化して優秀な研究者が集まりにくくなっているという。 だが、いいことは少なく、毎日マスコミで伝えられることは悲観するものが多い。もし、こんなひどい世界になっているということを、輝代やソーシアに何と言い訳することができるだろうか? アメリカ軍はイラク戦争でも、劣化ウラン弾を使用して、多くの被害者がいるという。それに対して米軍は何の問題もないという。目の前に被害者がいても、因果関係はみられないというという、いつもの手を使っている。 放射能に強い人もいれば弱い人もいる。だから、かかる人とかからない場合もある。これを『宝くじ理論』と呼ぶ人がいた。このくじはできるだけ、もらわない方がいい。一度当たれば、あなたは苦痛の中に住むことになるだろう。 あのチェルノブイリでも、被害はないとした学者たちが今も、この世に生きているのだろうか。そして、人が苦しんでいても、平気でいるのだろうか。 すべての地球に住む人が、チェルノブイリの放射能を多かれ少なかれ、浴びたのである。 ちょっと前、国防総省主催でロボットカーのレースをドキュメンタリーで放送していた。このレースはクウェートからバクダットまでの距離を「ロボット自動車」が人の手を借りずに走りきるというレースである。 ソーラーカー・レースは平和目的でかつ人類の文化を考えおこなわれているが、それと対照的にこの「ロボット自動車」レースは、いずれは人間の兵士のかわりに、戦場で働くロボットをつくろうとしているのだ。優勝賞金も一億円という破格なものである。このロボットたちがいずれは人を殺すのだと思うと、気持ちが暗くなる。 日本では手塚治虫の鉄腕アトムの影響が強く、夢のある世界を、人間に友好的なロボットを思い描いているのに、殺人ロボットをアメリカは官民あげて研究して巨費を投じているという。そして、この「ロボット自動車」レースには、チェルノブイリでも使用され、結局、役立たずのロボットをつくった人たちも参加していたという。 勉は「フーッ!」溜め息を一つ大きくついた。 でも、悪いことばかりじゃないさ。 努力は無駄にはならないと自分自身に言い聞かせる。 一九九九年度にはじめられた募金活動で、幟町学校の敷地内に「折り鶴の碑」を建立する計画があった。原爆関連の碑に供えられた千羽鶴は、一定期間が過ぎると市が焼却処分する。広島に住む者として、せめて鶴を折った世界中の人々の気持ちを確かに受け取ったという証を形にしたい。 生徒たちのそんな思いで、この碑は作られた。「折り鶴の碑」の除幕式は二○○○年の三月二十五日に行われ、禎子の父・繁夫さんやかつての同級生たちも列席したという。 こんなニュースもある。二〇〇四年五月二十一日の新聞では「スローガンは環境革命二〇〇四年度版白書強調」と見出しが踊っている。環境改革、もしこれを行わないと、大変なことになるだろう。産業革命、IT革命そして環境革命へというスローガンは興味深いものがある。この革命のうちで一番大切なのは、環境革命だろう、そういう歴史の分岐点にたっているといってもよいだろう。 新聞を置き、「消費者も環境にやさしい物を可能な限り買ってもらいたいし、クリーンなエネルギーといわれる風力や太陽光発電の研究開発に力をそそいで欲しいものである。そして、投資家も環境保全を考えている企業に投資してもらいたいと思う。いや、このことは多くの教養あるやさしい心のある人たちには、常識となっていることだろうなあー」と、勉は独り言をいい、冷えた麦茶を飲んだ。 携帯電話の着メロが音をたてている。 「はい……」勉は電話にでる。 パソコン画面には輝代と、ソーシアが映っている。 そして文字が書き込まれていく。 『未来はあなたたちにかかっている……』
ありがとうございます。 Index[Ra.] |
最新の画像[もっと見る]
- いい音ってなんだろう-あるピアノ調律師、出会いと体験の人生- 12年前
- 音楽演奏の社会史-よみがえる過去の音楽- 12年前
- AERA ’12.7.16 12年前
- 週刊現代 2012-8-11 12年前
- AERA ’12.7.9 12年前
- 必ず来る!大震災を生き抜くための食事学-3・11東日本大震災あのとき、ほんとうに食べたかったもの- 12年前
- 僕のお父さんは東電の社員です-小中学生たちの白熱議論!3・11と働くことの意味- 12年前
- 日本の原爆-その開発と挫折の道程- 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/13 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/6 12年前