ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 090被爆したメディア王 「まるで、地獄だ!ここが、アメリカとは思えないのだ。だがここはアメリカであり、私はメディア王・エリックである。諸君は、何も恐れることはない。恐怖からは何も学べない。恐怖を乗り越えて学ばなければならない。それが人生である」 カメラはひいた。 上半身裸のエリックの体は服がなく……。 それは広島の記念館でみたような恰好であった。 そして、腹から紐が出ていた。 「あれは?」 ミス・ホームズは指さした。 「大腸ね!」 女医の桜田は冷静に答えた。 「大腸! エリックさん、テレビで会話するより、治療をしたほうがいいのでは?」 「治療?……、ドクターも今ごろは、自分自身の姿を見て、恐怖していることだろう。いや、灰か煙になっていることだろう。何せ、私は三億ドル以上したシェルターにいてさえ、こうだったのだ……。しかし、特殊な箱に入れられた機材は無事でこうやって放送できている……。さすが、三億ドルというべきか……」 核戦争があるかどうかはわからない。 それなのに、真摯に核シェルターをつくる人間がいるのだろうか? 「すぐにでも、安全な地帯にいる医者を送ってくれたまえ!」 「大統領は?」 「大統領は生きているだろう。世界一のシェルターの中で過ごしたことだろう。が、今は地上には出ないだろう。食料、その他も、そろっているはずだ……」 「ちっ!」 マイクは舌打ちをした。 それだからこそ、戦争を拡大させることができたのだと思った。 なんて卑怯な奴と怒った。 「どうしたのです?」 「ここらは、立ち入り禁止地区にされる。自由に出入りできないだろう」 「どうしてですか?」 「放射能が危険だからだ……」 「あの、広島の五百倍の水爆が使われたとコンピューターで計算した。見てくれ、衛星で、見る今のワシントンの現状だ」 衛星からの画像は見事にぶち壊された、いや、皆目なにもない……、ここは、もしかしたら、火星ではないだろうか?と、マイク思った。 「エリック、私がそちらに行きましょうか?」 女医の桜田は提案した。 「無理だろう。ここには入れないだろう」 「核兵器をどうして、廃絶しなかったの?」 とソフィー。 「私は廃絶したかったよ。しかし……。世の中の流れというものには勝てなかった。メディア王などと呼ばれていい気になっていたが、実に愚かだった。もっと、核兵器廃絶に力を入れていればよかった」 「そうですか……」 ガガガー……。 テレビは変な音をだした。 そして、画面は白黒になった。
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