ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 088“デマ” レポーターは否定したが、その言葉はまたたくまに拡がってゆき、人々の心に恐怖を植えつけた。 そしてプラットホームに現われた避難民と患者の列にむかって駅前の群衆から石が飛び始めた。 銃まで用意しだした。 「あいつらを町に入れるな!」 騒いでいる人たち。 軍事アナリスト鬼頭が語る。 「昔のアメリカ陸軍は、CBR兵器を正式兵器としていました。CBRとは、ガス(CHEMICAL)、細菌(BIOLOGICAL)、放射線(RADIOLOGICAL)の頭文字です。そしてB兵器ですが、一グラムで七百万人を殺すポツリヌス菌、一グラムで二千万人もが発病するというオウム病菌など、実に恐るべきものであり、その種類は多いのです。これらも、使われそうですね。まだ廃棄処理をしていませんからね……」 「えっ、細菌兵器ですか……」 マイクは驚き 「本当かよー!」 と叫んだ。 「そう、それに、科学兵器です。ロシアは批准していないですから、日本にこれらの爆弾を撃ち込むという可能性がないとはいえません」 勇気は地下鉄サリン事件を思い出して、恐怖していた。 バーバラはどうしたのだろう。 もう、通信はできなかった。 当然のような気がするが、なんと酷いことだろう。 こんなことがあっても、よいのだろうかと、マイクは悲しむことさえ、忘れてボーとしていた。 マイクは外に出た。 まわりは、海ばかりで何も見えない。 「マイク、大丈夫かい?」 「ああ!」 「勇気、お前の家は大丈夫かい?」 「ここの局のインターネットニュースでかなり大きな水爆と伝えていたよ。もう駄目だろうなあ! こんなことになるなんて、僕には信じられないよ」 ニュースをきいて、勇気もショックを受けていたのだ。 「多くのインターネットも通じなくなっているし……。まったく世界は変ったんだろうなあー。ほんの一晩で……」 博士はドイツのことが気になってしょうがなかった。 マイクはバーバラの悲鳴をきいた。 そして画面は砂嵐にかわった。 何も映っていなかった。 それは深夜、放送終了したときのようだった。 だが、それが同時にバーバラの死亡をあらわしていた。 それだからこそ、悲しみがあるだろうが……。 勇気には何もかもが嘘のように思えた。 そんな、他人に、ただ、核兵器で家族は消滅したと伝えられたって、信じられるわけがないじゃないか……。 いずれ、東京に帰る。 家族の骨を拾うことになるのか……。 でも、その骨さえも蒸発しているかもしれない……。 横須賀に落とされたとしても東京の西部も全滅に近いだろうと、博士は計算したのである……。 「勇気、核兵器は何と愚かしいことじゃないか? 人間はどうして、こんなものをつくったのだろう」 「戦争が好きなやつがいたのだろう。戦争で大儲けしたやつもいる……」 「そうだろうなあ!」 「確実に原爆でデュポンなどの大会社は儲けた……」 「ヒロシマなんて、もう誰もいわなくなるな! 世界がヒロシマだから……」 「生き残ったやつらは、略奪を始めたそうだ。パニックだよ。まったく……、あんな兵器で本当に平和が訪れたとアメリカ人は思ったなんて、なんておめでたいやつら!」 マイクはまるで、アメリカ人でないような感じだ。
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