磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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D063.官僚主義

2005年11月20日 | 【小説】 レインボー...
V.あい色の部屋(虹の世界)

D063.官僚主義





 ビルから出てきた青年は、
「あのなー、ここの頭取、食い方、きたないから、口髭にトマト・ソースをよくつけているんだ。気をつけて見てたらわかるよ。乞食のおっさんの方が、きれいに食べるから世の中へんだよな」

 それも、そのはず、この乞食はむらさき色の部屋では王様だった。テーブル・マナーはしつけられている。

「あのー、僕たち困っているんだよ。あのー、どうしたらいいんだろうねえー」
 カールはピザ屋の青年にきいた。

「それなら、政府にきいたらいいんだよ。国民に困ったことがあったら、何でも相談にのってくれるのが政府ってもんだよ」

「そうなの、それなら、助かったわあー」
「でも、当てには成らないかもなー」

「当たってくだけろよ」
 ユリカはいつもなら、こんな言葉遣いはしないと思った。
 お礼を言おうと思ったけれど、青年はすばやくバイクをころがして行った。

 後ろ姿に
「ありがとう!」
 と話すと、前をむいたまま、青年は左手をふっていた。

「王様、政府というのはどこにあるんですか。私たちの困りごとを助けてくれる人たちのことですけど」
「そんな人がいるのかい!」
 王様はそんな人がいるなら、ここに乞食はいないと思ったのである。

「あら、王様、知らないの?」
「知っているが、その期待に応えてくれるとは思わないよ」
「そうなの、でも行くだけは行ってみようよ」

 カールとユリカは王様に連れられて、立派な超高層ビルに来た。
「あの、立派な建物ね。これなら、私たちの願いもかなえてくれるわね」
 その建物に入ると、イライラしている女の人がいた。和服を着ていた。

「どうしたんですか?」
 カールはきいてみた。

「あのね、ここは官僚主義で困るのよ」
「官僚主義って何ですか」

「それは、お金のことはお金省で、健康のことは健康省なのよ。心のことは、真心省という省庁があるんだけど、どこも私たちのことを真剣になんか考えてくれないのよねえー」

「そらそうじゃろう……」
 王様は豊かな髭をこすっていた。

「健康のことは健康省だけど、お金は出さないよ。お金のことはお金省でしょう。健康のためにお金は出せません。真心省は真心という大切なことをみんなに教えてくれるけれど、例えば飢えている人にパンをあげようと思っても、お金のことはお金省だというのよ。それだから飢えている人はなくならないわ」

「そうじゃろ、そうじゃろ……」
 王様は不満足きわまりないけど、思っていた通りだったので、満足している。





閑話休題

ジョン・レノンのファンになって、
ISMISMっていうのが、いかにくだらないか、
馬鹿げているか、よく思います。

僕も理屈好きですが、
彼らとちがって、こだわってはいません。

まあ、知らないうちに主義にひっぱられて、
人間性を失ってしまう。
それがまさに恐ろしいことだと思います。

『ジョン・レノンは人間だ!』
これはすごい褒め言葉だと今でも
思います。






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