磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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D054.知った名前の女の子

2005年11月11日 | 【小説】 レインボー...
IV.むらさき色の部屋(虹の世界)

D054.知った名前の女の子





 後ろから、
「なにを泣いているの」
 女の子の声がした。

 ユリカは、手を顔から離した。ユリカと同じ歳くらいの女の子が自転車に乗っていた。見知らぬ女の子は冷静に、
「泣いていても何も解決しないわよ」
 親切そうな笑顔が愛くるしかった。

「わたし、……」
「何も言わなくっていいわよ。あなたも家出をしてきたのでしょう。わたしもそうよ。辛かったら、別に言わなくてもいいのよ」
 見知らぬ女の子はさわやかだった。

「あなたも、そうなの」
 ユリカは一人でなくなったので、ほっとした。

「わたし、風間ユリカって言うの」
 と自己紹介した。

「風間?」
 女の子は一瞬、驚いた。でも、すぐに、うつむいて、にたにたと笑った。

 ユリカは
「あなたの名前は?」
 ときいた。

「そんなこと、どうだって、いいじゃないの。そんなこと、大人が勝手に決めただけじゃないの」
 けんもほろろにはなして、ユリカから視線をはなした。

「そうよね……。わたしが、別に他の名前だって、いいわけよね」
 ユリカは楽しくなった。女の子もユリカの顔を見て笑った。

「これ、食べなよ」
 女の子はピーナツのまじったチョコレートをユリカにくれた。

 ユリカと女の子は岩の上に坐って話した。
「ここは、かわったところね。むらさき色ばかりじゃ。目がいたいわよね」

「そうよね。わたしも迷いこんでよくわからないのよ。ねぇ、あなたは、どうして、家出なんかしたの」

「わたしのママ、きゅうに塾に行けっていうのよ」
「いいな! わたしの親なんか、ケチだから、塾に行きたくっても、行かせてくれないわ。わたしが、大人になったら、わたしの子どもは塾に行かせてあげるわ」

 ユリカは
「塾なんかに行きたいの?」
 と首をかしげていた。

「わたしね、スチュワーデスになりたいの。いいでしょう。世界の空を行くのよ。虹の架け橋を渡って、世界を行くのよ。世界にはいろんな国があるのよ。素敵だと思わない」

「そうなの。夢があるのね」
 とユリカは同じくらいの歳だけど、しっかりした子だなあーと思った。

 今ではスチュワーデスのことをキャビン・アテンダントなどと呼ぶ人たちもいる。
 女の子は首をたてにふってにこりとした。

 それから、表情をくもらせて、
「大人なんて、自分勝手で、ちっとも、子どものことなんて考えてくれないんでしょう。わたしも結局はあなたと同じよ。わたしの父さんなんか、女の子に学問なんか必要ないなんて言う、古くさい考え方をする親なのよ」
 女の子はユリカ以上に怒っていた。

 ユリカは仲間ができたと思ってほっとした。それで
「あなたも、家を飛び出したの」
 と女の子にわかっていることをたずねた。

 でも、女の子は、ユリカのことを仲間だなんて、思っていなくって
「そんなこと、どうだっていいじゃない。わたしね、サメの歯をさがしているのよ」
 と言い、立ち上がった。

「サメの歯?」
「そうよ。なかなか見つからないのよ。そうかー、あなた言い伝え知らないのね。サメの歯をもっていると幸せになるって言い伝えがあるのよ。ここは昔海だったから、サメの歯の化石が見つかるのよ」

 日焼けした元気そうな顔はユリカと違って都会の子どもではないと思った。
「どうして? サメの歯を持っていると幸せになるの」
「悪霊がサメの歯を恐れるからよ」
 女の子はすました顔で自慢しているようだった。

「ほんとう?」とユリカは首をひねった。
「それじゃね。わたしは、サメの歯をさがしに行くんだ。あなたも何か目標を見つけた方がいいわよ。ぐちゃぐちゃ、泣いていても何もかわりはしないのよ」

 籐のかごのついいた古ぼけた自転車に乗った。
 ユリカはそのとき、女の子の名札が目に入いた。ユリカのとってもよく知っている名前が書いてあるので、ちょっと驚いた。

 でも、よく知っている人とは、見かけが全くちがていた。共通点といったら、女ということくらいだった。

 ユリカは女の子に、わたしも、連れて行ってと言おうかどうしょうかと、迷っているうちに、女の子はすばやく自転車を走らせて行った。
 一人でいると、またユリカは寂しくなった。





閑話休題

昨日は
『一色(※白と黒は除く)だけで書いたとしても、
他の色を感じさせることもできると、
教えてもらいました。』

と書きましたが、まったく逆のことも教えてもらいました。

いろいろな色をつかって、一色にみせるということです。

簡単にいえば、山を見てください。緑だけじゃないはずです。
いろいろな色がまざって、緑と感じさせるのです。

白いセーターにも赤や緑をつかって、
より白いセーターがえがけると習いました。
自然とはいろいろな色があるのですが、
喧嘩していないのが不思議です。

美術は物の見方を学ぶのに、大切だと強く思います。
ピカソは子供の絵などではありません。
ゲルニカという作品は有名ですね。





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小火(ぼや)

2005年11月11日 | 短編など
小火(ぼや)

シュワー!
マッチをつける音。

シー!
見つかっちゃうよ。

昼間外で花火をしてもきれいじゃない。
それで納屋で花火。

学校でおそわった戦争の話だって、
戦争はいけない、いけない、
大人はそればっかり。
大人が戦争したんだろう。

花火はとてもきれいだ。

少年は花火に夢中になっていると、
納屋は火だらけになっていた。

「うわー!」
少年は逃げ出した。

少年の母は少年をみるなり、頬をびっしゃと叩いた。
少年はこわい夢からさめたように泣き出し、母にだきついた。

「ごめんよ、花火していたんだよ」
「あれほど、しちゃダメといったでしょう」
少年の母も涙をうかべていました。
消防署のおじさんが注意をして帰った。
少年は何をおじさんが言っていたか、
さっぱり覚えていない。

昼ごはんのおかずは真っ黒でした。

父親が帰ってくると、
「命があってよかった」
と話した。

少年は思いました。
母は泣いていました。
命があったからよかったといいました。
少年は学校の先生も
戦争の話をそのように話してくれたのかと思いました。







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