博士:レインボー・コンサートって聞いた事あるかのう?
助手:えー、それって私に聞いているのですか? 最近ほとんど出番が無くなったので、忘れられたのかと思っていました。
一般的には1973年1月にロンドンのレインボー・シアターで開かれた、エリック・クラプトン・カムバック・コンサートですよね。
博士:その通りじゃ。1970年、デレク・アンド・ドミノス名義で出したレイラのアルバム以降、ドラッグやアルコールそしてその他もろもろの問題で、エリックが引きこもっていたのを元気付けるため、彼の友人達が、また表舞台に立てるよう引っ張りだしたのじゃ。
フーのピート・タウンシェンドが音頭をとり、トラフィックのメンバーのスティーブ・ウィンウッドとジム・キャパルディ、フェイセスのロン・ウッド、ブラインド・フェイスでベースを弾いていたリック・グレッチなどらの、オール・スター・バンドによる競演だったのじゃ。
助手:エリックはどちらかと言えば、スタジオ録音よりはステージでギターを弾いて観客からの反応を貰う方が好きみたいだったから、ライブに引っ張りだして、まだまだやれるって自信を出させるの良い考えだったと思いますね。
博士:エリックの通常のライブの出来からしたらこれはベストの演奏ではないとか、客演のスティーブ・ウィンウッドがエリックより目立っていたとか色々といちゃもんが当時ついたみたいじゃったが、わしが思うにはそこそこの出来じゃった。
ただ残念じゃったのは、当時LP1枚で出されて、サイドー1とサイドー2それぞれ3曲収録、計6曲の少々地味な編集じゃった。
助手:そうですね。コンサートで演奏された、メインのレイラとかクロスロードなどこのメンバーの演奏で聴いてみたいと言う曲は割愛されましたからね。やっぱり2枚組みでないと。
博士:1995年に音源がリマスターされ14曲入りのCDが出たのじゃが、これも地味じゃったのう。
助手:ああー、CDのジャケットのことですね。レインボー・コンサートなのに、ジャケの背景が黄土色の単色で印刷されていたことですね。
博士:やはり持つべきは友達と言う事で、エリックも心機一転、翌年の1974年には、461 オーシャン・ブルバードのアルバムで見事カムバック。アイ・ショット・シェリフでシングルも大ヒット。
助手:そう言えば、エリックも友達思いで、特にビートルズのジョージとは非常に仲良しでしたね。
博士:ジョージのカーちゃんと三角関係になり、外から見れば相当う雰囲気悪いと感じたものじゃが、当人らはそうでもなく、ずっと仲良しじゃったのう。
助手:本当に不思議な関係。
それから、ジョージはちょろちょろとゲストなんかでステージに立ったものの、ソロ・コンサートはやろうとしなかったのですが、エリックの申し出で、突然のごとく日本でソロ・コンサートツアーを1991年12月に行いましね。
博士:1971年にジョージ主催、エリックやその他有名ミュージシャンの客演で開催されたバングラデシュのコンサートは大成功したものの、1974年のダーク・ホース・アメリカツアーは大こけした。
それがトラウマになって、その後は大々的なソロはしないと決めたのかも?
だからワシも驚いた。しかも何で日本だけで。
助手:1974年の時は、ジョージの声の調子がおかしくまともに歌えなかったみたいですね。
それから、バック・バンドがトム・スコット率いるLAエキスプレスと言う少しジャズやフュージョンがかった演奏が売りのバンドだったから、曲のアレンジが当時の観客が期待したバングラデシュ・コンサートの演奏のようなオリジナルに近いものではなかった。
と言う状況で、コンサートを見に行った人たちはさらにガクッときたのではないかと…
博士:まあそれと比べると、1991年のジョージのライブ・イン・ジャパンでは、相変わらずのへっぽこボーカルだったが、エリック率いるバンドの演奏がしっかりとバックをサポートしていて、ビートルズからソロにおけるヒット曲を網羅したのには非常に好感が持てたのう。
たまに勘違いして、スタジオ録音と違ったアレンジでどうだこの新アレンジはとさすがだろうと言わんばかりにライブをするミュージシャンがいるが、ディランを除いて普通観客が求めているのは、スタジオ録音にある程度忠実で、その上にライブの迫力加えた演奏を望んでおる。
助手:なんでエリックは、ジョージにソロ・コンサートを薦めたのでしょうかね?
博士:昔から、ジョージは自身にスポット・ライトが当たるのを好まなかったのだろう、だからビートルズ時代も目立ちたがり屋が二人もいたおかげで当時は気が楽だったと述べている。
トラベリング・ウィルベリーズでも、全員がリーダーの役回りを分け合っていたし、それまでも、ライブはゲストとしての参加だけだったからのう。
エリックとしては、ソロでのコンサートは確かにプレッシャーはあるが、もっとソロ・コンサートを自身で執り行い、エリックと同様にジョージにもその楽しさを味わって欲しいと思ったのじゃないかのう?
助手:エリックの薦めで、ツアーの開催を日本にしたのは正解でしたね。アメリカ国内のツアーと比べて、移動距離も少なく短期間で終了しますから、それ程疲れない。
そして一番の理由としては、日本には世界に誇る沢山のビー・ファンがサポートしますからね。成功間違いなし。
やはり持つべきものは友達ですね?
博士:いや~、ワシの場合は、持つべきものはお金じゃのう~