風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

夏休みには庄内の風(羽黒山) 1-(1)

2015-10-09 | 東北
○ prologue

夏休みに、山形に出かけました。
友人のアコリンとマリエさんが、ヨガと瞑想のワークショップを開催したのです。
予定が合わずに参加できなかったものの、その翌日からジョインしました。

場所は鶴岡。羽黒山の近くです。
数年前に、アコリンと出羽三山めぐりをした時以来の山形。
その時は山の中にばかりいたので、山形の町と位置が全く頭に入っていませんでした。
「山形・ミステリアス出羽三山」(2012.7)

○ 土地勘全くなし

朝一番に着くために、深夜バスに乗っていきます。
何も考えずに酒田行きのバスの終点までチケット購入したところ、
「鶴岡はもっと山の方。酒田まで行っちゃうともう日本海だから、途中で降りてね」とアコリンに言われました。

地図を見ると、確かに位置が違います。
山形市はもっとずっと南の方なんですね。ふむふむ、へえー。地理のお勉強。

思えば、山形市街に降りたこともないような気がします。
蔵王には登山やスキーでよく訪れたし、山寺にも行ったことがあります。
天童の町の巨大な将棋の駒も、車窓から見た覚えがありますが、町よりも山ばっかり。

酒田に親戚がいるというアコリンに、いろいろと教えてもらいます。
今回の私のリクエストは、大物忌神社とクラネタリウム。
そのほかに訪れる場所は、彼女にお任せしています。

○ 早朝の鶴岡

バスではちゃんと起きて途中の停車場で降りられるか不安でしたが、眠りが浅かったのか、しっかり目覚めて鶴岡駅で降りることができました。
続けて6時発の羽黒山行きバスに乗ろうとしましたが、バスターミナルを探すのにてまどってしまい、ちょうど走り出した姿を見送ります。
次のバスが来る1時間後まで、駅で待つことにしました。



バスターミナルから駅に移動する間には、車一台通らず、人っ子一人いません。
およそ生きて動いているものがないようです。
町で一番賑わっていそうな駅前の通りもシーンとして、まだ眠りの中といった感じ。
駅員さんも奥に引っ込んでいるのか、姿は見えません。

6時になったばかりでも日差しはかなりきつく、暑い日中になりそうだなと思います。
見知らぬ場所、人のいないところ。音もなく、静かに照り返す日光。SFの世界にいるみたい。

○ 真夏も芋煮



収穫した稲穂を担ぐ農民の像が、駅前ロータリーの中央上部に立っていました。
お米どころですねー。

駅に併設されたレストランも、まだ開いていません。
ショウウィンドウの中には、大鍋の食品サンプルがありました。



わあ~、これ芋煮だわー。山形に来たんだなあと実感します。
しかしひまわりとコラボするなんて、どこかシュール。
夏と冬で、かなり季節感が飛んでいますね。
というよりも、真夏の8月にして、芋煮がメニューにあるということが信じられません!
つまり、注文して食べる人がいるわけですよね。びっくり。

○ 白いハチ公像

駅構内に、なんだか見慣れた銅像が。
ハチ公じゃないですか~。
でも、渋谷の銅像よりも小ぶりで、真っ白です。



いったいなぜ、東京から離れた鶴岡駅にいるんでしょう?
これは、渋谷のハチ公像の作者の安藤士さんが試作品として1947年に制作した石こう像だそう。
所有者が何度も変わり、素性がわからぬまま保管されていたものが、近年になって試作品と判明し、公開保存されるようになったとのこと。
作者ゆかりの土地ではないながらも、不思議な縁でハチ公像のプロトタイプがここにあり、それをきちんと人々が保存してくれているなんて、嬉しいことです。

○ 北の言葉

早朝ですが、今は夏休み期間。
そのうちに駅の待合室に、家族連れがちらほらとやってきました。
音響がいいので、地元の会話が聞こえてきます。
青森の親戚の話し方に似ているなあと思い、東北に来たんだなあと、改めて感じます。

○ 羽黒山行きバス

待合室で1時間ほど待ち、7時発の羽黒山行きバスに乗り込みました。
早朝なので誰も乗っていないかな、と思いましたが、すでに数人の乗客がおり、さらに途中のバス停からも人が乗ってきて、乗客は10名ほどになりました。



チェック柄の座席のレトロなバス。
田園の向こうには山が見えます。なに山だろう?
よく見ると、周りは山だらけ。
名前を探すのは無理だろうと、あっさりあきらめました。



バスの行く先に、大きな鳥居が見えてきました。
ここからいよいよ、羽黒山の神域に入っていきます。



30分ほどいったところで降りました。

○ 友ではなく山伏

100mほど先の宿坊の前に、白い服の人影が見えました。
バスの中からそろそろ着くとメールをしておいたアコリンが待ってくれているのかと思い、下り坂だったので、スキップ混じりで駆け寄って行きました。
でも、近づいていくと、その人は白装束姿の山伏だとわかったのです。
(えっ、山伏?はー?)と驚きますが、このままだと下り坂加速で、山伏の胸に飛び込んでしまいそう。
(なんとか止めなきゃ)とムリヤリ急ブレーキをかけ、ドタバタしながら走るのをやめます。
それからは、何事もなかったかのように、すまし顔で歩いていきました。(かなり無理がありましたが・・・)
山伏の立っていた手前の建物が、目指す宿坊、大進坊でした。



中にいるアコリンに電話しようと、ケータイをごそごそ探していたら、「リカさん!」と澄んだ声がします。
それは、宿坊の中にいるマリエさんでした。
マリエさんとは久しぶりの再会。
さらに、日差しが強いため、サングラスをかけていた私。
顔が隠れているのに、遠くからわかるなんて、すごいなあと驚きます。
私なんて、よく会っているアコリンを山伏と見間違えたくらいなのにー。(それもどうかと思うが)

マリエさんには、真実を見極める、なにか特別な力があるのかもしれません。
非日常的な山伏を見たばかりなので、そんなことを考えます。

○ 古めかしい五重塔

通してもらった宿坊の部屋で、アコリンに会いました。
ちょうど朝食が終わったところで、前日のワークショップの参加者10数名と一緒に、荷物を持って出発ー。
アコリンと私は、マリエさんの車に乗せてもらいました。

少し走って、五重塔への入り口に着きます。
ここ、覚えています。数年前にツアーで来た場所です。

石段をどんどん下りて、樹齢千年の爺杉にご挨拶。
その近くに五重塔があります。



暑い日ですが、それを忘れさせてくれるほど、森の木立の中にいつも涼やかにたたずんでいる木製の塔。
古めかしさが素敵で、五重塔好きの私にとって、一番好きな塔です。



○ キュートな石灯籠

五重塔の前には、石灯籠。
前に訪れた時にも、この灯篭がすごく気に入りました。
「エヘッ」と笑っているようで、かわいいんですもの。



前回も(目を書き加えたら、もっとラブリーになるだろうな~)と思いながらも、そこはぐっと我慢してこらえましたが、それから数年、まだ誰も目を書きこんではいませんでした。
きっと同じようにグッと我慢した人は多いでしょう。

○ 重力との戦い

お地蔵さんの上には、祈りを込めた石が乗っています。
・・・いえ、これは乗りすぎです!
なんというアクロバティックなバランス!
毛虫が乗ってもくずれてしまいそうです。



○ ここから石段行脚

前回来たときには、五重塔を見て、Uターンして駐車場に戻りましたが、今回はここからがメイン。
ずっと先に続く長い石段を上って、一番上まで行くのです。
先が見えない段々を見上げただけで、フラフラと気が遠くなりそう。
でも歩き始めなくては。



夜行バスで来たので、眠りが浅く寝不足の私。
そのままみんなと合流してすぐに山登りとなったため、体力が持つか心配です。

「一の坂から三の坂まであるんだって」
「ギャー、まだ一じゃないー」

あまりにたくさん石段があるため、前を向いて、終わりの見えない先を知るのが嫌になってしまいます。
でも、足腰の強い人たちはさくさくと先に行ってしまったので、私たちも遅れながら後に続きます。

○ 二ノ坂茶屋

ようやく一ノ坂が終わると、次には二ノ坂。その途中に、茶屋がありました。
ここで少し休憩します。



ここからの庄内平野の見晴らしが、すばらしく美しかったです。
とても天気がよく、遠く海の方まで見渡せました。



山伏修行の人たちが、時々上から降りてきて、すれ違います。
この時間に戻ってくるなんて、みんなよっぽど朝早くから山に入っていたんでしょうね。

さらに上り続けます。辺りはミシュラン・グリーン・ガイドジャポンで三つ星に選ばれた、立派な杉並木ですが、もはや周りを見まわす余裕はなくなっています。



暑くて全身汗だくだく。朦朧としながら、一段一段、黙々と足を運びます。
体力のない人はすでに音をあげはじめましたが、励まし合って上りました。

アブがよくよくやってきて、身体に止まるので、そのたびに悲鳴を上げて追い払いました。
でも、森のなかの虫はタフで、払っても払ってもなかなか飛んで行きません。
手の甲に止まったのを見て強く払ったら、強く止まっていたのか、怒ったのか、飛んで行くときに皮膚にチリッと痛みが走りました。
そこから血が出たので(アブの呪い?)と慌てましたが、幸いなことに腫れ上がらずにすみました。
ただ、それで安心していたら、翌日になって少し腫れたので、再びあせりました。
でも、かゆみも痛みもありません。単に血を出したので、腫れたのかもしれませんが、アブにここまで追いつめられたのは初めてでした。
自然は好きですが、アブはごめんだわ~。

○ とうとう登り切る

みんなで励まし合い、自分をなだめたりすかしたりしながら、なんとかようやく上り終えたところには、出羽三山合社が見えました。
ああ、ここに着くんですねー。
前にツアーで来たときには、五重塔と出羽三山合社の間をバスでさーっと移動しましたが、歩くとこんなに大変だったなんて。
その分、達成感も全然違いますが。お祈りも効きそう。

○ 蜂子神社の神事



この日は開祖の蜂子皇子を祀っている蜂子神社が開いており、小さなお社の中には人々がぎっしりと座っていました。
神主さんが出て行きましたが、中から聴こえてきたのは、般若心経。
もともとは開山堂だった蜂子神社。
神仏集合なんですね。



立派な装飾に見とれます。
田楽のような装束の人も登場し、読経が終わるのを外で静かに待ち構えます。



ほどなくして、お社の中から、参拝者たちが外に出てきました。
田楽風の人の舞が行われた後に、山伏たちが法螺貝を吹きならします。

     


山伏が歩き出すと、みんなが後に続き、一団が列になってぞろぞろと石段を下りて行きました。
それはまるで、日本版「ハーメルンの笛吹き」のようでした。
「羽黒山の法螺貝吹き」。

不思議な光景に見とれていたら、これはこの日に行われた、大震災の復興を願う平和のイベントだったそうです。

○ 出羽三山合社

鏡池越しに見る合社。隠しきれない存在感。
月山・羽黒山・湯殿山の三神が合祀されています。



社殿は国の重要文化財に指定されています。
萱葺きの屋根は7尺(2.1m)の厚さ。私がすっぽり中に隠れてしまうほどの分厚さなんですねー。



こちらの装飾も、見れば見るほどすごいものです。
屋根を支えている黒い人がいました。まさに黒子。がんばって~。
メンバーの一人が、背中のリュックから分厚い納経の束を取り出して、一枚奉納していました。



境内の東照社では、徳川家康公没後400年記念のご開帳をしていました。
中では徳川公の像やゆかりの物があり、宮司の解説も聞くことができました。



○ 昇り龍と下り龍

先ほどの蜂子神社の隣にある厳島神社。
かつては弁天堂と呼ばれていました。
御祭神は市杵島姫命(弁財天)。
今にも動き出しそうな、昇り龍と下り龍のダイナミックな彫刻に目を奪われました。



○ 下りもハラハラ

参拝を終えたのちに、先ほど上ってきた石段を再び下っていきます。
幟よりもはるかに楽~!というわけにはいきません。
これはこれで大変な道。一段一段が低く、段差が見えづらい石段を、気を付けながら進みます。
自分がボールだったら、ポンポンと弾んで降りていくんですけどね。



修行中の山伏たちが、一列になって後ろから降りてきました。
絵になりますね~。
サッサッとスピーディに降りてくる彼らの速度に合わせて、私たちも少し急ぎめに歩くことにします。



ようやく五重塔のところまで降りました。
ほっとしながら、今度は急な上り階段を上って、出口の門へ。



ここで、メンバーが全員集合。脱落者も出ず、みんな頑張りました~。
夜行バス直後の私は、みんなに「疲れてるでしょう。体力大丈夫?」と心配してもらいながら、なんとか行って帰ってこれました。
山登りをして、おなかが空いたわ。さあ、次は楽しいランチの時間です。

○ 漬け物天国

車に乗って、昼食のそば屋、福湊庵に移動します。
行列のできるとても人気のお店で、山田洋次監督初め有名人のサインがずらりと並んでいました。
映画のロケに来た時のようです。

ここは漬け物屋が経営する蕎麦屋さん。
工場直営のいろいろな漬け物が乗った大皿がずらりと並び、どれでも好きなだけとれます。
まさに漬け物バイキング。
ポリポリとかじりながら、お蕎麦が出来上がるのを待ちます。
やっぱり山形の漬物といったら、長小茄子ですよね。きゅうりもいいわ~。
どれも素材の色がきれいに出ていて、見るからにおいしそう。もちろん、とてもおいしい味でした。



みて、こーんなに取っちゃった!
さすがに一人分には多すぎですね。アコリンと一緒に頂きました。
オレンジ色のは柿です。山菜漬けもよかったし、どれもベリグー!
体力を消耗して失った塩分を補給できたので、力がみなぎってきました。



○ おろし麦そば

めいめいが注文をした板蕎麦や冷麦などが、ほどなくしてテーブルに運ばれてきます。
私はおろし麦そばにしました。
月山の状流水で作られた、風味豊かな蕎麦。
サクラエビなどが乗っていて、カラフル。
おいしーいです!



みんなでわきあいあいと食事を済ませて、お店の前で記念写真。
ここで解散となりました。元気でね~。



県内の人はみんなマイカーに乗り込み、運転席から手を降って、次々に去って行きました。
関東とは違う、新鮮なさよならでした。

その2に続きます。


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