風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

新緑の津軽ひとり旅 3-2(蔦温泉、青森)

2019-07-29 | 東北

その1からの続きです。


● 蔦温泉

帰りのバスに乗りましたが、途中の蔦温泉で下りました。
長い歴史を持ち、日本百名湯にも選ばれている蔦温泉には、古めかしくどっしりした構えの旅館があります。


大正時代の重厚な建物


温泉は、十和田樹海と呼ばれるブナの原生林に囲まれており、「蔦の七沼」と言われる沼が点在しています。
その中の蔦沼を見に行きました。
散策路にはチップが埋め込まれており、3年前に訪れた時よりもきちんと整備されていました。


● 一面のブナ林

ブナ林の中へ。辺りは美しく、静か。
ところで、石川啄木の「はてしなき議論の後」という詩の一節に  

われらは何を為すべきかを議論す。
されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、
‘V NAROD!’と叫び出づるものなし。

とあります。
小学生の時に読んだ私は、この‘V NAROD!(ブナロード)’を「ブナロード(=ブナの道)」だと思って、「なぜ叫ぶの?意味不明」と思っていました。
正確には、ロシア語で「人民の中へ!」という意味だそう。
中学の歴史の授業を受けるまで、「ナロードニキ運動」のことも知りませんでした。

豊かな自然の中にいると、そうした忘れていたことも、ふっと記憶の淵に浮かんでくるものです。

 

奥入瀬渓流が「動」なら、この辺りは「静」です。
静謐な空気がたちこめています。


まだ山道は、積雪のため閉鎖中


● 蔦沼ひとりじめ

蔦沼を囲む山々の奥に、雪が残る頂が見えました。
標高1298mの赤倉岳でした。

 
動くのは、ゆっくり流れる雲と、時折そよぐ木々の枝だけ。


私一人きりの、贅沢な時間です。



ああ、こんな時、自分が詩人だったら…もしくは絵心があったら…と思います。
この感動を、きれいな形にすることができるのに。
私はただ観ているだけ…あああ…。

 

旅館を挟んで、蔦沼とは反対側のひょうたん池も訪ねます。
静かな水面をのぞくと、時間をかけて水中に堆積していった木の葉がきれいに見えました。
透明のカプセルの中に閉じ込めたかのようでした。

● 春は一度に


旅館の方が手をかけているだろう、さまざまな花が咲き乱れる敷地内。
その場にいるだけで、ほのぼのと幸せな気持ちになります。
タンポポや八重桜が咲いている横で、水芭蕉も咲いていました。
春が一気にここにやってきた感じ。

 
太宰治が、小説『津軽』の中で
「津軽では、梅、桃、桜、林檎、梨、すもも、一度にこの頃、花が咲くのである。」
と語っていたことを思い出しました。


● 野犬に注意

ところで、「熊や野犬に注意」の看板を見かけました。
熊はまあわかりますが(!)、野犬ってー!
この令和の時代に、野生の犬っているんでしょうか?


時代が進んで、野良犬はもういないと思っていましたが、最近では飼い主に棄てられたペットの犬が野生化して、山犬になるパターンがあるとのこと。
そういう意味だったとは。
人間の起こした行いが、人間に帰ってきたというわけですね。

● 八甲田を横に

2時間ほどブナ林の中でゆっくり過ごし、存分に森林浴を満喫して、青森行きのバスに乗り込みます。
帰りは、茅野茶屋ではなく、酸ヶ湯温泉で10分休憩。
それにしてもいい天気です。



帰り道、再び急勾配のカーブ坂を上り、八甲田のそばを通ります。
みずうみ号のルートは、なかなかアップダウンの大きなワイルドコース。
運転手は、市内の整った道路を走る路線バスよりもはるかに運転技術を必要とするでしょうね。
運転時間も長く、疲れてしまうので、ところどころに休憩をはさんでいるというわけです。


その分、乗客はバスの中からダイナミックな光景を楽しむことができます。


5月後半にして、まだこんなに雪が残っているとは。
かなり標高が高い場所まで来ました。
日が照っていても、少し肌寒くなっています。



● 青森駅ソング

18時に青森駅前に到着。
駅のホーム連絡通路で流れている、爽やかな「なごり雪」風青春ソングのことを思い出します。
駅の人に尋ねると、マニ☆ラバというバンドの歌だと教えてくれました。
タイトルは、その名も「青森駅」。
もう解散した地元のミュージシャンなのに、この歌のために集まってくれたのだそう。

別れの季節の3月、東京は少しずつ花が咲いてくる頃ですが、青森はまだ雪の中。
歌詞に「3月の解けぬ雪のよう」と出てきます。つまりまだ根雪状態!
いっそう寂しさが募るのでしょう。

● 北の中華

19時に、イトコのマキちゃんと待ち合わせ。
国際ホテルに連れて行ってもらいました。
小学校の頃、従兄の結婚式に参列した時以来です。
なつかしいなあ。


ここの中華レストラン「吉慶(きっちゅん)」で、彼女お勧めの五目焼きそばと片焼きそばをオーダー。
おいしかったし、なにより量の多さにびっくり。


大皿からあふれそう!

うーん、これが青森クオリティ?
海鮮も野菜も、地元産のものでしょうか。
日々、横浜中華街に鍛えられた舌を持つ(かは別にして)私も、満足のお店でした。


素材のうまみ!

● 青森の弁慶

おなかがいっぱいになっていて、もうなにも食べられませんが、まだまだ話足りません。
そこで、場所を変えて近くの居酒屋へ。
八戸を中心に青森展開している、弁慶というお店です。
お通しをおつまみに、乾杯しました。


青森、東北の銘酒

青森で弁慶とはこれいかに?
と思いますが、青森には三厩(みんまや)から竜の馬に乗って北に渡ったという「義経北行伝説」があるため、弁慶が青森に来たといっても、おかしいことはありません。
イトコとヘベレケにならない程度に楽しくおしゃべりをして、お別れしました。

● ご当地フード

この日買った、ご当地フード。
昨日食べた、クドウパンの「太宰生誕110年コラボパン」がおいしかったので、売っているのを見つけて再び購入。
相変わらずのインパクトの強さです。

そして、安定の「スタミナ源たれ」。
かくみつ食品の「玉子とうふ」が、具がいろいろ入っていて茶碗蒸し風だと聞いて、さっそく食べてみました。
たしかに具だくさんで、リピートしたくなるやさしい味でした。



● 決め手くん

イトコからは、シャモロック入りの「せんべい汁」。
青森地鶏のシャモロック、おいしいです~。
パッケージに乗っている相撲の行司風の「決め手くん」は、青森のゆるキャラの中でもお気に入りです。
農林水産部総合販売戦略課に所属し、県産品のイメージアップに努めているそう。


● おにぎりとパン

ご当地味の、「十和田バラ焼きおにぎりサンド」。
厚みがあって持つとずっしりと重く、砲丸投げ選手になった気分。(食べものなので投げませんよ)
食べがいがありました。

青森のご当地パンはクドウパン、盛岡はシライシパンです。
どちらも東京では売っていません。
クドウパンは「イギリスフレンチトースト(ピザ風)」など、どこの国なのかわからない攻めた商品を出していますが、シライシパンの「いぶりがっこ」パンや「スタミナ源たれ」パンにも、ネットがざわついています。
今回入手したのは、おとなしめの「抹茶&黒豆パン」でした。


明日はいよいよ青森最終日。
別行動中の母と落ち合ってプチ法事に行くはずですが、いつまでたっても母から連絡がきません。
いろいろな人と忙しく会っているからだと思いますが、まさに糸の切れた凧状態。
こちらのプランを立てる必要があるため、私から催促して集合時間を決めました。
女学校時代の友達と再会して、すっかり独身気分に戻っようです。
娘がいることも忘れちゃったのかも~。

4日目に続きます。



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