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私の日常臨床Vol.77

2025-03-17 07:31:06 | Weblog

今回提示する症例は、77歳女性。
患者は転倒によって前歯部を強打。受診した歯科医院で診察を受けたところ
応急処置を受けた後、左上1は歯冠破折を起こしているため保存ができないとのことで
抜歯即時インプラント治療を勧められたとのこと。
その後、コンサルテーションルームに案内され、今後の治療計画の話を受けたらしい。
患者の話によると、コンサル担当のスタッフから、
最終的に前歯部4本を抜歯してインプラント治療で総額200万円以上の費用の見積もりを受け、
いきなりの話により回答を保留したが、不安になったため家族が当院に患者をつれてきた経緯。

口腔内診察を行ったところ、確かに左上1は口蓋側歯質は縁下2㎜以上の所まで
歯質が破折していたが、完全に保存ができない状態ではないことと
年齢的なことを考えると、インプラント治療を第一選択とするべきではないと考えた。
ちなみにコンサルテーションルームで受けた治療計画において
前歯部4本を抜歯して4本のインプラントの話は、他の前歯部の状態からありえないため、
他部位の必要補綴部の費用を含めた金額と推察する。おそらく患者の誤解であろう。
しかし、誤解されるような説明ではコンサルテーションルームで
対面しながら時間をかけて話す意味はあるのか疑問が残る。
ただ、もしも本当に前歯部を4本抜歯してインプラントを勧めていたのであれば
私はその歯科を心底に軽蔑する。

さて、私は左上1を保存することを考え挺出処置を行った。その間も他部位に対して
基本治療を行い、問題部が良い具合に挺出が行えたので、他部位の暫間補綴部と同様に
暫間補綴にて咬合の安定を確認後、最終補綴を行った。
上顎両犬歯の補綴も再介入はするべきでだが、患者が希望されなかったため
説明だけはしておいたが、何よりも抜歯対象とされていた歯は十分に保存でき、
患者からは高い満足を得ることができた。

当院はコンサルテーションルームはないが、そのようなスペースを置くことを考えたこともない。
そんなことに時間をさくなら、じっくり処置に時間をかけてあげる方がよいというのが
私の考え方であるからだ。また、個人的にはコンサルルームで行うべきことは、治療計画からの
見積もりの合意を交わすとこではなく、患者さんへの口腔衛生の啓発を主に行うべきと思うのだが…、
我々の使命は「できる限りの歯の保存」と「それに対する努力」である。
個々の患者の経済的背景あるいは価値観から費用をかけた治療を患者が希望した時に、
その費用をいただけばよいだけである。
本症例は、当院の処置の流れからの最終段階で、患者が保険外の補綴を希望されたので
補綴は自由診療で行った。補綴費の総額は税込み110万円ほどである。



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