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私の日常臨床 35

2018-04-27 13:16:35 | Weblog
もうすぐGWである。 が、私は人混みがきらいなので
普通にGW中も診療をする。(毎年、遊びに行く人が多く、診療は結構ヒマだが…)
さて、今回は臨床例を提示しよう。

症例は30代の女性。 
左上6の補綴物脱離が主訴であるが、支台は残根状態で
根が分離された状態になっていた。
さすがに保存することは無理だったため、抜歯処置となるが
この部の欠損補綴治療をどのように行うかである。

通法ならブリッジ補綴もしくはインプラント補綴であろう。
しかし以前にも述べたように、私はインプラント治療は積極的にやらない。
かといって、隣在の天然歯をフルカバレッジで削ってブリッジ補綴もしたくない。
そこで親知らずに目をつけた。
このような事例の場合は、移植で欠損補綴することを第一選択とする。
しかし、レントゲンでも分かるように、左上6部の歯槽骨の骨量は2~3mm程度しかない。
ゆえ、この様な場合は、サイナスリフトを併用した方法で移植すればよい。
生着確認後、補綴した。まだ一年の予後であるが経過は極めて良好である。

通常、サイナスリフトはインプラント治療に用いる処置とされているが、
アドバンテージな外科手技は、インプラント治療だけのものではない。
骨がないから移植ができないということはあまり関係ないと考える。
インプラント治療において、骨がないから造骨する手技があるなら
移植においても、その手技は全然使えると考える。

私の臨床では、通法の移植処置以外に、
インプラント治療に用いられる造骨術式である、サイナスリフトや
スプリットクレストを併用して移植を行っている症例は数症例ある。
(最長今のところ5年経過←蒲郡の上田先生が矯正をやっている症例)
どれも予後経過は今のところすべて良好である。

ちなみに、もうすぐサイナスリフトを併用した歯の移植オペの予定がある。
私の独特のオペの行い方を、直に見てみたい先生はメールください。
日程はまだ決まっていないですが、オペは基本木曜日に行うことが多いので、
数日以内に連絡してもらえればと思います。(PGI名古屋会員限定)

2018年4月21日 PGI定例勉強会 in相模大野

2018-04-23 08:07:52 | Weblog
週末はPGI本会の4月勉強会に参加してきた。
今回、私と以前から親交がある札幌の池田雅彦先生を
本会の講師として、私は推薦した。
現在、池田先生は力に対するコントロールについてを
歯科評論で12回連載で執筆されていることもあり、
この内容について焦点をしぼって今回は
お話いただけたので、本会の先生方は非常に
興味をもたれてお話を拝聴していた。

池田先生の30年近くに渡る臨床研究で得た
1600症例ほどになるデーターからなる
力に対する評価とその対応については
我々臨床家は知るべき概念ではないかと考える。

私は池田先生のお話は何回か拝聴しているが
今回もアップデートされた内容を興味深く拝聴できた。


2018年4月11、12日 BADS

2018-04-16 07:43:57 | Weblog
先週末はバド 審美治療セッションと総義歯治療セッション
分野が違うのに日程の関係上、このような振り分けになってしまった。

11日の審美セッションは、
私からは審美治療における問題提起と審美治療において考えなければならない
大切な観点とそれを考察した治療法を解説した。私の審美の考え方は
全く切り口が違うので、かなり皆が興味深々できいてくれるのがうれしい。
後半はコンポジットレジン修復について須崎先生から解説いただいた。
コンポジットレジンの講義において、私は事前に須崎先生に
よくCRセミナーで行われている内容などより、もっと皆にとって
参考になる内容で構成してほしいと色々詳細をお願いをした。
その指示内容は明記はしないが、私がリクエストした内容は須崎先生にとって
斬新的であったみたいで
「ぜひその観点の考え方でスライドを全く新しく作ります」とのことで、
CRで全国各地を講演している講演内容とは別物の内容で解説してもらえた。
さすがの臨床キャリアだけあり、見事に私のリクエストに応えてくれた内容であり、
若手が講演するような内容とまったくもって次元が違う。
他の先生も同感に思っていたらしく、私のリクエスト内容が間違っていなかったことを
ここからでも確信できた。
須崎先生も西川洋二先生同様、かっこよく見せるスライド構成でなく
非常にシンプルなスライドだが、内容と構成が見事な分、皆は集中してきけたと思う。
そして、参加された先生方にとっては、本当にかゆいところまで届く内容であり
非常に参考になったと思う。質疑も非常に多かった。
須崎先生、よそで当会専用に作ってくれたスライド、使わないでね。。。

12日は藤井先生の総義歯治療
スライドによる解説と実習。実習においては印象と模型からの
診査するポイントについてが行われた。
藤井先生は河原英雄先生のもとでずっと研鑽しているので
講義で河原英雄先生のリマウントテクニックを参加者に紹介していた。
さすが総義歯マニアだけあって、こだわりと臨床は相変わらず
質の高い治療を行っていると思う。
彼の研鑽と技術はスライドを拝見しててひしひしと伝わってくる。

2日間 非常に充実した内容であった。

私の日常臨床 34-2

2018-04-11 08:13:57 | Weblog
前回紹介した症例についてだが、
私の行った治療の紹介は、やはりこのウェブ上で紹介するのはやめておく。
提示した以上、非常に悩んだが、不特定多数の人がこのウェブ上でみているため、
誰かがこの治療方法をヒントに真似して、あたかも『自分がずっと前からやっていた』的に
どこかの学会や勉強会に症例を作って(開始日付けや予後年数を偽り)出す人がいそうだから。。。
インプラントの分野においては、私が行ったような治療法による症例は、学会などで報告するとするなら、
予後が最低でも7年以上は必要だと考える。
5年未満の良好な経過くらいでは、有意な治療法とは言い切れない。これにも理由はある。

私の行ったこと、、せめて文面だけで、説明すると、
この症例はインプラント治療を上顎にだけ行っている。
患者の費用的な面を考え、インプラントは4本使用した。
ポイントはそのインプラントをどのように用いたかであるが
このフィニッシュを見せるのに躊躇した次第である。
治療後、患者は快適に食事ができるようになり、ステーキやアワビなども食べれるように
なったと喜んでおられた。しかし、今度は食べ過ぎで2年目のメインテナンスくらいから
内科で太りぎみを指摘されるようになったとのことであった。『健口』についてある意味悩んでしまう。
今年の3月で予後8年目を迎えたが、特に問題はない経過である。

この症例、私は予後10年目くらいで、学会などで症例を紹介するつもりでいるため
現在までのところ、症例の内容や用いるツールについての考察点などはBADSでしか提示と解説をしていない。
ちなみに私のブログで紹介している症例は、だいたいすべてをバドで内容は詳細に説明しているので
この症例もメンバーの方は思い出してもらえればと思う。

私の日常臨床 34 (問題提起編)

2018-04-06 16:59:29 | Weblog
ここ最近 いろいろやることやたら多くて更新さぼっていた。。。
ではさっそく、今回は症例から問題提起などを提示しよう。

添付する写真、患者は初診時65歳の女性。主訴は義歯で食事ができないとのこと。
上顎の総義歯をいくつかの医院を受診して、義歯を作るもまったく
安定が得られず、食事がとりにくいとのこと。
主訴を裏付けるように、やせ細った状態であった。
患者はとにかく食事をしっかりとりたいという機能面の要求が強かった。

現義歯は、診査したところ静的な状態では吸着はあるものの
機能的運動ではまったく使い物にならなかった。
しかし、上下顎の状態を観察したところ、シビアな骨格性の3級の状態であり
難易度の高い義歯治療であることがわかる。

当院でも、他院と同様に総義歯作成を試みたが
印象、咬合採得まではそれなりにうまく行えるが
TFの段階ですでに安定は得られず、
義歯に精通した技工士さん立ち会いのもと試行錯誤(リンガライズや、3級配列など)を
行っても、全然機能的問題は改善されなかった。今までの先生たちの苦労が理解できる。

このような症例の場合、インプラントを用いた欠損補綴が第一選択になるであろう。
しかし、この症例、レントゲンからみても分かるように
左右の臼歯部の骨量が少なく、骨造成が必要である。
そしてボーンアンカーフルブリッジを計画した場合、確かに
非常に強固な安定を得られるが、費用面でかなり高額な治療になってしまう。
(実際、以前他院でインプラント治療で総額300万円以上と言われ
 捻出できる金額をはるかに超えていたため断った経緯があるとのこと)

そこで、
患者がインプラント治療を取り入れてもよいとして、ただ
経済的な余裕があまりなく、費用面も加味しなければならない場合、
どのような補綴計画がよいのか?
・ALLon 4
・IOD 
 (ロケーター/磁性タイプ/ドルダーバータイプ)
が、選択肢にあげられると思う。

しかし、これらのプランをあげた時でも、この症例の場合は
特に顎口腔の状態を考えなければならない。
all on 4またはIODのいづれかのタイプにしても、
この口腔内に対してこれらの補綴物は、まず維持安定はあまり期待できないことは
予測できるし、患者の期待度を踏まえて考えても治療にはリスクが高い。
この点についての理由はここでは明記はしないが、
これはちょっと考えれば分かることである。(模型やレントゲンを参考にしてもらいたい)

となると、どのような治療を行うかが、
患者の求める結果(予後)となりえるか考えてもらいたい。
皆さんならどうします?