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歯科評論3月号

2024-02-21 08:03:40 | Weblog

去年秋にヒョーロンパブリッシャーズに寄稿した論考が、
順番待ちでようやく今月20日に発刊された歯科評論3月号に掲載された。
(この号には私と懇意にある須崎明先生の論文も掲載されている)

スピーについて掘り下げた内容の論文は、おそらく国内ではなかったと考える。
それゆえスピーカーブについてのレビューを行った。

元々、古ドイツ語で書かれた原著は、国内で保有している人は私を含め数人しかおらず、ネットでもまず入手できない。
そして、この原著を1980年に英語で忠実にリプリントしたヒッチコックらの論文も、国内で入手することはできない。
この英語版のスピーの原著を、日本語に全文が翻訳されたものは、
とある歯科医師がされたものだけであり、これは歯科界に出ていない。
そして、この原著の内容は、我々の知るスピーカーブとは大きく違っていた。つまり、
学会等で講演者が、スピーについて引用するときに「G,Spee.1890」と記していることが散見されるが、
そもそもの我々の知るスピーの概念で、「G,Spee.1890」を引用しているため、これは大きな間違いである。
付け加えて、内容を知らないで引用していることが容易に分かる。
「引用」という言葉を使用する場合、その内容に目を通して理解してから使用するものである。

2年ほど前に私は、自分自身でもこのスピー英語訳論文の全文和訳と私見をまとめていた。その結果、
日本で最初にこの論文を翻訳されたある歯科医師の方と、須崎明先生から歯科界に提示すべき論考であると推され、
スピーの論文に対して私の考察も記述した論考が今回の掲載内容である。

よって参考までに、今後もスピーの原著に関して参考文献として引用している場合
「G,Spee.1890 や G,Spee(Hitchcock)1980」というような表記をしている者がいれば
原著や英訳文は手に入らないはずなので、内容を閲覧してないで引用していることになる。
つまりスピーに関する概念を参考文献として引用する場合、私のこの論考を引用することになる。

近年の私は、歯学史を見つめ直すことに多くの時間を費やし、多くの事柄において、自分の知識の整理を行っている。
それゆえ例えば今回のように、一般的に周知されていたスピー彎曲の概念を学生時代から素直に学んでいたが
G,Speeの本来述べたかった内容が我々の知るものとは違っていたことに気づかされた。
他の事柄でも同様のことが多い。

因みに私は学術の世界に煩悶としている事柄も多い。
公に提言することが好ましくないため、あえて多くは語らないでおくが…
ただ、今回の内容にからめて一つ例を挙げるのであれば
論文や講演において、引用する文献が何のための引用であるか、という本質を我々は考えなければならないであろう。
我説を補強するためだけの都合に合わせた引用でよいものか。
引用文献の本質とはどうあるべきか、私の見解はここでは述べないが、
今回掲載されたレビューを通して、皆も慎重に考えてもらいたい。

追伸:このブログを閲覧されてる方で、Speeの日本語訳全文を閲覧希望がある場合はメールください。
   匿名などでの連絡はご遠慮ください
(本来、全文は学術誌に載せるつもりだったが、紙幅の関係上できなかった)


2024年2月13日 PGI名古屋zoom月例会

2024-02-14 08:14:03 | Weblog

昨日の夜は当会の月例会
今月は鳥居先生からの症例検討会として、外科関連の症例が提示された。
前半は、インプラント外科での麻痺について症例が提示され
麻痺に関する知見と考察が提示された。
後半は、癌への放射線治療が及ぼす顎骨への影響について
症例を交えて、その考察が提示された。
前半も後半も注目すべきことは、彼の卓越した外科手技であるが
それにあわせて原因の考察のすばらしい着目点であろう。
インプラント治療ありきの治療計画に、警鐘を与えるよい症例提示であった。
内容が実際の臨床で遭遇したときに悩みそうなものであるため
ディスカッションも非常に盛りあがった。


働き方改革の展望

2024-02-06 08:15:17 | Weblog

ここ最近、個人的には仰天する歯科界事情をきいた。
厳格に決められた労働時間と休日の話は以前から知っていたものの、
近年は、歯科助手や歯科衛生士などのコ・デンタルスタッフを雇用する場合、
スタッフらのスキルアップや知識向上のために講習会や学会に参加させるなら
その参加登録費が必要な場合、それを医院側が負担するのは当たり前だが、なんと別途で
当人に日当や交通費を(もれなく代休を与える場合も)支給する必要があるらしい。
これは勤務する歯科医師に対しても同様らしい。
なんてこったな時代になったものである。

とある歯科医院の院長が私にこぼした愚痴
その医院に就職して間もない若い歯科医に対して
「〇×講習会、費用全部だしてあげるからこの日曜日に行く?」ときいたら、
返ってきた最初の返答が
「翌日は仕事休んでいいですか?」、、だったらしい…
最初に出る返答はこれじゃないでしょ!っと、ツッコむ気も失せる思考である。
この類の思考回路をもつ者は、ほんのごく少数しかいないと信じたい。

労働時間や給与、休日、有給休暇などの労働者にとって
悪い言い方をすればユルユルになってしまった雇用待遇条件…
つくづく思うこと、
自戒や苦境なくして、プロ意識や自己啓発という意識が本当に発展するのであろうか…
自身にとって壁が立ちふさがるとき、容易に根をあげてしまう要因となるだろう。
今風にいえば「めんどくさいことはイヤ」である。

そして当たり前となっているこの歯科医院事情、
必然的に起こる現象、、、これらの費用を含めるため、売上を伸ばす医院経営である。

大きい規模の医院で働く勤務医の何人かが、私に悩みを相談してくることが多いが
その殆どの理由が、「売り上げをあげろ」「保険より自費をすすめろ」と
経営者から強く要請されるらしい。そもそも、勤務医に配当されるような症例では
無理があるし、良心が痛むという嘆きも多い。この様な類の相談、なんて答えればよいか、、
経営者の気持ちもわかるので、患者ともよく話合い、
患者と経営者、双方の妥協点をみつけた方がよい、としか助言しようがない。
ただ勤務医は、自由診療を行う場合、自信と患者に高い満足を得てもらうために
高い水準の学識とスキルを身につけるための相応の努力が必要である。また自分を追い込む必要もある。
ユルユルの雇用環境では、ユルユルな(安易な)思考のもとでしか医療は提供できないと思うが…

そもそも大きな規模の医院を構えるということ自体が、増収増患のために、広告費やグーグルなどの口コミ評価をあげてくれる会社への出費等
本来不必要なことや、スタッフ教育のための出資などなどをしなければならない事態を引き起こすのだが…
私は医療にマーケティングなどは必要ないと思うため、どうしてもこのことが理解できない。
こじんまりとした規模の医院で、来院する患者の口腔内に医院の利益を求めたの眼でみることなく
じっくりと向き合うことを最優先するという考えを何故もてないのだろうか、、

器材や材料がいくら技術革新され、先進医療が患者に提供できるようになったとしても
皮相浅薄な歯科医が先進医療を掲げ、それを増収に利用した結果、治療後の予後において
トラブルが多くなっている事実は否定できない。

昨今浸透してしまった医業に対する向き合い方(働き方)では、医療の本質に回帰することは困難であろう。
便利な世の中というものは、大切な精神を封殺しまうことを我々は注意しなければならない。