リキデンタルオフィス 医療関係者向けブログ

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カンチレバーブリッジ

2021-11-24 07:10:38 | Weblog

皆さんの医院に受診された患者さんで、
口腔内にカンチレバーブジッジが装着されている症例があり、
それが古い補綴物であった場合、どのようにされているかな。

提示している症例は2009年から当院を受診された患者さんの口腔内で、
この写真は2021年11月の時に撮影した所見である。
この左下臼歯部のブリッジは当院を受診するもっと前、
患者の記憶では10年くらい前に補綴を行っているものらしい。
つまり、2021年から考えるとおよそ22年間の予後がある症例である。
私は2009年の当時、他の部位に対する歯科治療を行っていたが、当時から
骨格的にブラーキタイプであり、上顎との咬合関係はしっかり篏合しているため
力学的に不利では?と、この左下のブリッジは気にはなっていたが、
患者は何も問題がないし、噛めるし、ということで介入はしないままであった。
毎メンテナンスごとに介入しようかどうか悩んでいたのだが、
近年は興味深く同部の経過を見ることが楽しみになっている。

成書などでは、ブリッジ補綴においてカンチレバータイプは力学的な欠点が述べられ
特に臼歯部遊離端形態は好ましくないという考えが定着し、
インプラント補綴による治療を提案する歯科医が多いのではないだろうか。
しかも昨今では審美や咬合の安定などが治療の醍醐味とされ、古いものはダメ、
メタル補綴物は体に悪いなどの理由で、最新の治療を患者に勧めるが、
コンサルテーションを行う時、我々は学術で一般的に言われていることを掲げて説明する。
学術を一生懸命やってる歯科医は、介入や再介入を行う場合、
予知性を掲げて高価な補綴治療を行っているが
それが何十年も安定するといった根拠は実のところ何もない。

理論や適応症がどうこうだからと、自分都合の治療や最新の治療法を行うことが
本当に良い事なのか、このような症例は我々に疑問を投げかけてくる。
理論は臨床から離れた所で教育と議論がされるが、生体は時として
理論と合わない事実を実際の臨床所見で我々に教えてくれる。

今回はカンチレバーブリッジを題材にしているが、何十年前に施された
1本の前装冠やFMC、インレーといった修復補綴物や根治されている歯などの
治療における再介入するべき明確な要件がない限り、そのままの状態にて
予後を観察するべき事例も臨床では多いと思う。
大切にしなければならないものは何かを我々は考えるべきであろう。
これらの点については、PGI名古屋の月例会にて説明したいと思う。


2021年11月16日 PGI名古屋月例会

2021-11-17 08:18:03 | Weblog

今月の月例会のパネラーは浦田先生
浦田先生からは論文とエビデンスについての内容であった。
例えば自分達が引用文献を行う時、どのように信頼性のある文献や
参考になる文献を手早く選ぶ勘所のお話や
臨床も科学する姿勢という内容をお話されていた。
中々時間をかけてまとめ上げていた内容なので
参加者も分かりやすく勉強になったであろう。
最後に総評として私からは、論文に対する見方と捉え方について
少し解説を行ったが、浦田先生とは違った側面の考え方の話をした。

当会の月例会は、日々の臨床に刺激を与える
直結した内容ばかりであることに確信を持てる。
そんな本年度の月例会は11月で終了したが、
本年の月例会は全て濃い内容であった。
来年の年間予定は決まっているが、来年は本年度以上に
月例会の内容を充実させているであろう。


私の日常臨床 Vol,54

2021-11-09 08:17:58 | Weblog

気が付けばもう11月 
今回はいつものように当院の臨床症例を提示しよう。

症例は初診時22歳女性 
主訴は、他院で歯冠崩壊した左上7とその後ろの智歯を抜歯して
7部にインプラント治療を提案されたが、何か納得ができなく、
当院ならどうしますか、ということ。

口腔内を観察したところ、カリエスによるダメージを受けた歯が多くみられ
ハイジーンも悪い。確かに左上7の保存は厳しい。
抜歯してインプラントという治療も選択肢として有りと考えるが
その前に必要な最も重要な課題があると思う。
その課題をクリアーし基本治療を行い、欠損補綴を行うことを考えた場合、
私は年齢的にインプラント治療はあまり勧めたくない。
本人がインプラント治療を希望したとしても同じである。
せっかく智歯が残っているなら、これを活用する術を行うべきである。
この症例の場合、移植ではなくMTM(LOT)が良い。
この術式によって保険診療で審美的に行える補綴(CADCAM)の箇所が広がるメリットもある。

私のこの治療方針を話したところ、患者は当院での治療を希望したため処置を行った。
術前、術後の口腔内所見とレントゲンから、どこに何をやったかは分かると思う。

私はいつも言っていることだが、
欠損があればなんでもかんでもインプラントという考えは好きではない。
出来る限り患者に経済的負担をかけさせないで、快適な環境にすることが
我々の当たり前の責務と思っている。
また、欠損補綴を行う場合、患者の年代を考える必要はあり
伊藤雄策先生の提唱される「デンタルタイムライン」のことも考察すれば、
インプラント治療の適応性は慎重に判断するべきである。