
最近、美容師の患者さんとふとした会話の中で、
知らなかったことを知る機会を得た。
医師・歯科医師、弁護士、教師、政治家といった者が
「先生」とよばれる、と考えていた私であったが、
美容師や理容師の世界でも、互いのことを
○○先生という言い方をするらしい。
このことに少し驚いた私。なぜなら
理美容師のことを「職人・プロフェッション」と認識していたからである。
しかし、よくよく考えてみれば、国家資格を得た者は国が認めた専門職者である。
専門職は数多く存在するが、その資格をもつものに「先生」の呼称をつけることは
なんら不思議ではない。
「職人」という言葉も「貴賤」の仕事で考えた場合、
“貴”の方に属する貴い業であり、私は理美容や建築関係、自動車関係などの
仕事に従事する方々を「職人」としてとても尊敬している。
一般的に認識されている「先生」といわれる類は
専門とする学問を究めた者をさすように思われがちだが、
中世~近世の学問は、文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽といった
自由7科であり、肉体労働でないものが対象とされていた。
それゆえ医師や歯科医師は、元来、西洋では「学」ではなく「技術」であった。
それが後に科学の一分野として扱われた背景がある。
つまり医師や歯科医師も元来、職人である。
それゆえ、我々歯科医師は儲けにこだわる賤業ではなく、
職人気質で臨床に臨まなければならない。それゆえ、
美容師の患者さんとのふとしたこの会話からも、
心の帯の締め具合を再確認することができた。
ちなみに私は大学生の頃からいきつけの理髪店(岐阜市)がある。
30年以上その店にしか行っていないが、ここの70歳くらいの店主も生粋の職人である。
この店主、朝9時開店なのに、いつも6時には店にいるらしい。
もう何年も前から私は店に行くときは、電話予約してだいたい7時過ぎに行っている。
開店前の半分くらい開けたシャッターからかがんで入り、
数少ない会話後、静かな空間で髪を切る時間が心地よい。
先だって髪を切ってもらっている間、“この店主も先生なんだ…”と考えていたが
会話中に見える歯が3本しかない店主の口元をみて、
「、、…先生、歯科行きなよ…」と心の中でつぶやく私がいるww
(この店主は私が歯科医師であることは未だに知らない)
写真は先だって行った時の店の外観(朝7時)