DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

北原白秋(1885-1942)「蛍」『思ひ出』(1911)所収:詩人の気持ちが分裂する!一方で、蛍のしおらしさへの共感!他方で、蛍は真夏の情事の官能の象徴だ!

2019-10-10 21:11:18 | 日記
 「蛍」

夏の日なかのヂキタリス、
釣鐘状(ツリガネガタ)に汗つけて
光るこころもいとほしや。
またその陰影(カゲ)にひそみゆく
蛍のむしのしおらしや。

《感想1》ヂキタリスは劇薬を持つ草、毒草。夏の陽射しが死を招く。
《感想1-2》詩人は性的にギラギラした20代の男。釣鐘状(ツリガネガタ)の花芯に汗つけて光る官能が手招きする。その妖しさがいとおしい。
《感想1-3》しおらしく蛍がヂキタリスの釣鐘状の花の奥に秘かに入り込む。性的暗喩。

そなたの首は骨牌(トランプ)の
赤いジャックの帽子かな。
光るともなきその尻は
感冒(カゼ)のここちにほの青し、
しおれはてたる幽霊か。

《感想2》蛍の胴の黒と、首の赤の妖艶な対比。骨牌(トランプ)の南蛮趣味。
《感想2-2》夏の真昼のまぶしい明るさのもとで、蛍の尻の青い光はしおれはてた幽霊。弱弱しく光っているのかいないのか。感冒(カゼ)のここちにほの青い。

ほんに内気な蛍むし、
嗅(カ)げば不思議にむしあつく、
甘い薬液(クスリ)の香も湿る、
昼のつかれのしをらしや。
白い日なかのヂキタリス。

《感想3》詩人は蛍の内気に同情する。
《感想3-2》だが不思議にむしあつい香りは官能の香りだ。蛍は内密な恋人同士の性愛のしるし。
《感想3-3》昼の情事。「むしあつく」、ヂキタリスの毒の「甘い薬液(クスリ)」の香りが湿る。「昼のつかれ」。だが蛍が、しをらしい。
《感想3-4》真夏の「白い日なかのヂキタリス」、その毒草の秘密を蛍が告げる。
《感想3-5》詩人の気持ちが分裂する。一方で、蛍のしおらしさへの共感。他方で、蛍は真夏の情事の官能の象徴だ。
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①水と豆と塩で成仏したい! ②餓死は無理だ!火葬してもらえば、白い骨で清潔だ! ③生き続ける!大変だ! 

2019-10-10 19:54:37 | 日記
(1)水と豆と塩で成仏したい!
孤独だ。友人がいない。餓死を目指す。水と豆と塩で成仏したい。清める。身体が腐敗するのがいやだ。腐敗を最小限にしたい。ミイラがいい。消え去るのもいい。ただし葬式は生きている者が行うから死後は彼らに任せる。生きるのが面倒くさい。
(2)餓死は無理だ!火葬してもらえば、白い骨で清潔だ!
菓子類が好きだ。色々食べている。平和だ。餓死は無理だ。水と豆で成仏できない。身体は高温で火葬してもらえば腐敗しない。白い骨で清潔だ。ミイラでなくて大丈夫。意識も消え去る。
(3)生き続ける!大変だ!
だが今、まだ生きてる。シンプルに生きよう。とは言え、たくさんの荷物あり。少しずつ片づけたい。生き続ける。大変だ。
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「世界の中での人間の時間的過渡をくまなく支配している」のは「関心」(憂い)だ! ハイデガー『存在と時間』(1927)「第42節」

2019-10-10 11:15:23 | 日記
※「第1部 現存在を時間性へむかって解釈し、存在への問いの超越的地平として時間を究明する」「第1編 現存在の準備的な基礎分析」「第6章 現存在の存在としての関心」「第42節 関心としての現存在の実存論的解釈を、現存在の前存在論的な自己解意によって検証する」

(1)
A 「現存在の存在」は「関心」である。(196頁)(第41節参照)
(2)
B ある古い寓話が、現存在の「関心」としての前存在論的な自己解意を、記す。(ヒュギヌスの寓話220番)(198頁)
Bー2 「憂い」(cura)が「地」(土)を「はじめて形どった」つまりある形(※人間の形)に作った。そこへ「ユピテル」がやってきてその形に精神を与えた。
Bー3 サトゥルヌスが裁いて言った。「ユピテル」はこの者が死する時、精神をとり、「地」は身体を与えたのだから、身体をとれ。「憂い」(関心)が「はじめて」形どったのだからその者が生きている間は、汝の手もとにそれを取りおくがよい。「名」については人と呼ぶがいい。(198頁)
C この寓話は、「人間を身体(地)と精神の複合体とみなす周知の人間観」を前提する。
Cー2 その上で、人間を「憂いがはじめて形どった」と述べる。すなわち「この存在者(※人間、現存在)は、関心(※憂い)のうちにおのれの存在の『根源』をもっている」と述べる。(198頁)
Cー3 なお「人間(homo)」という「名」はその素材の「地(humusu)」からとられた。
D また「この形像の『根源的な』存在をどこにみるべきか、ということについて裁決を下すものは、サトゥルヌス、すなわち『時間』である。」(198頁)
Dー2 要するにこの寓話は、人間についての前存在論的本質規定として、「世界の中での人間の時間的過渡をくまなく支配している」のは「関心」(憂い)だと述べる。(199頁)
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映画『パリに見出されたピアニスト』(2018年、フランス・ベルギー合作):成功するとわかっているので、観客は安心だ!ハッピーな映画だ!

2019-10-10 09:21:29 | 日記
(1)
祖父からピアノを子供の頃、教えてもらったマチュー。
今は夢のない不良青年。彼は母子家庭に育ち貧しい。ピアノを弾くことだけが彼の楽しみ。駅に置かれたピアノをマチューは弾く。
(2)
通りかかった音楽院のディレクター、ピエールがマチューの才能に惹かれ、「ピアニストとして育てたい」と声を掛ける。だがマチューは信じない。
(3)
窃盗容疑でマチューは捕まり公益奉仕6か月を命じられる。彼はピエールの音楽院で掃除係として公益奉仕する。再び、ピエールに説得されマチューは、「ピアニストになる」そして「国際コンクールで優勝する」と決意する。
(4)
しかしマチューが克服すべき困難は大きい。①音楽院の生徒たちとの格差、②仲間だった不良青年たちとの確執、③母子家庭であるマチューの苦しい経済環境、④音楽院のピエールの言葉を信じきれない迷い、⑤ピアノ教師エリザベスの厳しい訓練への反感、⑥自分が挫折すると院長に思われコンクールに代役を準備されていることの屈辱、⑦急激な訓練のための腱鞘炎の発症、⑧ピエールの妻に「あなたは天才だとおだてられているだけよ」と言われたマチューの精神的打撃等々。
(5)
これらを克服して、マチューはついに国際コンクールで優勝する。

《感想》成功者の半生をさかのぼると、こうした物語(映画)が可能となる。初めから成功するとわかっている。観客は安心だ。どんな困難も克服されると、約束されている。ハッピーな映画だ。だが現実の人生は残酷だ。未来は不定だ。成功しないのが普通だ。
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「獅子と百姓」(197)『イソップ寓話集』岩波文庫:君子危うきに近寄らず!

2019-10-10 08:41:58 | 日記
 「獅子と百姓」 A lion and a farmer

獅子が百姓の家畜小屋に入って来た。 A lion came into a farmer's shed for animals.
百姓は小屋の扉を閉めた。 The farmer shut its door.
ライオンはすべての羊を食べ、また牛を襲い始めた。 The lion ate all sheep, and began to attack cows.
百姓は怖くなり、扉を開けた。 The farmer became scared, and opened the door.
ライオンは出て行った。 The lion went out.
教訓:獰猛で力を持った人間に不注意に近づいてはならない。 Lesson: You never carelessly come near to a fierce and powerful person.

《感想》獰猛で権力ある者に不注意に近づき、挑発してはいけない。「君子危うきに近寄らず」だ。
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